レジェンド・ちばてつやの驚くべき描き込み……森川ジョージ感嘆「何気ないコマに高度な技術がギッチリ」
レジェンド漫画家・ちばてつや氏のデジタル化作品に関連する情報発信を行うXアカウント「ちばてつや電子書籍」(@chiba_ebooks)にて、大賑わいの学生食堂を俯瞰した一コマが投稿された。このポストに添えられた「一つ一つの食器や食べ物を細かく書き込むのが、ちばてつやの真骨頂です」という言葉の通り、驚くべき細やかさだ。
公開されたコマは、70年代の大ヒット作『おれは鉄兵』の1シーン。大勢の学生が食事をとってい食堂を俯瞰したもので、30人以上が席についているが、それぞれにメニューや食べ進んでいる度合いが違い、週刊連載というハイペースで制作されていた作品とは思えない情報量だ。
「ちばてつや電子書籍」はこれまでもたびたび、『あした天気になあれ』や『おれは鉄兵』など、デジタル化されたちばてつや作品の名場面を切り取り、ポストしている。その影響を受けていない漫画家がいるのかーーと思わされる作画/作劇の妙が感じられるもので、以前、鉄兵と水泳部の争いのシーンが投稿された際には、『はじめの一歩』で知られる森川ジョージ氏がそのポストを引用する形で「状況を伝えるのがうますぎる」と感嘆していた。
こちらは鉄兵を追いかける水泳部が、氷の張ったプールに一斉の飛び乗ってしまい……という、コメディ感と緊張感が共存した名シーン。プールがどういう状況にあるのか、その変化がつぶさに伝わってくるほか、やはり俯瞰的な構図の中で多人数の水泳部メンバーがそれぞれに描き分けられており、臨場感たっぷりだ。森川氏は「何気ないコマに高度な技術がギッチリ詰まっている。これぞ『ちばてつや』の典型例の一つ」とも語っており、特に若いクリエイターにとっては「教材」と言えるような一コマだ。
直近では、『ろくでなしBLUES』や『ROOKIES』、『べしゃり暮らし』などのヒット作で知られる森田まさのり氏が自身のXで、ページ内に余白を作らない、いわゆる「断(裁)ち切り/断(裁)ち落とし」という処理の影響でカットされた背景を含む原画を公開して話題になっている。こちらは報われなかったアシスタントの仕事を“供養”するような企画だが、使われない部分まで細やかに描かれた背景がファンを驚かせており、名作と言われる漫画にはどれほど労力が割かれているか、ということを知るいい機会になっているようだ。人気作家関連のSNSをフォローしておくと、漫画をより深く楽しめるようになりそうだ。