『東京リベンジャーズ』黒川イザナはなぜ歪んでしまったのかーーアニメ最終回を前に“孤独の王”を深掘り

イザナは決して“救われない人間”ではない

 イザナは天涯孤独と思いがちだが、広い視野で周囲を見渡すと決して1人ではない。なぜなら真一郎という大きな存在があったほか、何だかんだでS62世代の憧れの的だからだ。

 ムーチョやモッチーや獅音は王を「尊敬する人」に挙げており、灰谷蘭も精一杯の弔いの気持ちを伝えている。竜胆だって口には出さずとも、彼の最期の時は非常に複雑な表情を浮かべたのだ。そして何より、傍には鶴蝶がいる。下僕と言いつつも右腕的な存在がいるため、決して黒川イザナは全く救われない人間ではないのだ。

 彼は本当の“救い”に気づかなかったのか、はたまた気づかないようにしていただけなのか……。真一郎の二の舞を恐れて誰も信じないようにしていた、なんて考え方もある。孤独の道を歩むうちに、自然と誰も受け止めない、信じないクセがついてしまったのかもしれない。死の淵に立たされてようやく素直になれたイザナは、そっと息を引き取った。生まれながらの悪ではなく、失いかけていた綺麗な心を最後に見せてくれたのである。

 不良としての活躍と多くの人間に与えた影響は大きく、失くすに惜しい極悪(きわ)めたダークヒーロー。たくさんの人々に見守られ、チームに慕われ、親友の優しさに包まれながら逝けたことが、唯一の幸福と言えようか……。

関連記事