【連載】『ガンダムZZ』は“見なくていい”作品なのか?

『ガンダムZZ』が描くべきはコメディタッチの活劇か、それとも生々しい戦争かーー見どころはその“葛藤”

 コメディ的な雰囲気が全編に漂っていた16話の中でも、この射撃をためらうシーンだけは別格の生々しさで描写されており、ジュドーの葛藤が生々しく伝わってくる。このシーンは『ZZ』という作品が地に足をつけて戦争を描くのか、それとも次世代の子供達を中心とした痛快なコメディとしてやっていくのか、逡巡しながらバランスを取ろうとしていることの現れである。完全にコメディにしてしまっては戦争を扱った作品としては不誠実だが、現実的な殺し合いを描いてしまっては次世代の子供達がダメな大人を出し抜く痛快さは消え失せてしまう。

 初期の『ZZ』は、兵士ではない少年を主人公としたコメディタッチの活劇か、それとも生々しい戦争かというふたつの方針の間で揺れ動き続けている作品であり、どうにも座りが悪い。その煮え切らなさが濃縮されたのが、今回のジュドーが射撃をためらうシーンなのである。『ZZ』初期のギャグっぽさは確かにガンダムシリーズとしては異例のものだが、反面今回のように「戦争を扱った作品としてこれくらいはやらなくては」という迷いを感じさせるシーンもある。新機軸の作品を作りたいが、そちらに振りすぎると不誠実になる……という葛藤こそが、初期『ZZ』ならではの見どころなのかもしれない。

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