「2023年8月期の書店売上」好調に推移する学習参考書、 なぜ“学参”は“紙”が強いのか

  9月8日、日本出版販売株式会社(日販)は、2023年8月期の店頭売上前年比調査を発表した。ビジネス書と学習参考書(学参)が前年超えとなったが、全体の売上前年比は 92.1%で、減少したと報告があった。コロナ禍の間に電子書籍が急速に普及したことや、リアル書店の減少に伴い、依然として紙の本の売上減は続いていることが背景にあるだろう。

  調査対象軒数は全国1363 店の書店。そのうち、売上が増加したビジネス書は、『頭のいい人が話す前に考えていること』、『とにかく仕組み化』などがヒットし、売上前年比は102.6%となった。また、学参は『小学生がたった 1 日で 19×19 までかんぺきに暗算できる本』などが売上を牽引し、110.7%と、大幅な前年超えとなった。また、8月は多くの学校が夏休みであり、受験シーズンが迫りつつあることも学参の売上に貢献したのかもしれない。

  一方、漫画単行本(コミック)は、前年好調だった『ONE PIECE』103巻、『呪術廻戦』20巻などのヒット作が出なかった影響で前年を大きく下回り、コミック全体でも前年割れの84.7%となった。漫画が依然として書店業界の売上に寄与する存在であることは間違いないが、『ONE PIECE』などのメガヒット作頼みという状況が浮き彫りになっている。

  さて、以前に当サイトで学参について紹介したが、少子化が進む中でありながら、学参は安定した売上を見せている手堅い分野なのである。老舗の『チャート式』などが強いかと思いきや、今年の学参の売上を牽引した『小学生がたった 1 日で 19×19 までかんぺきに暗算できる本』、そして近年の出版界有数のベストセラー『うんこ漢字ドリル』シリーズなど、話題作が連発している。

『ガクサン』第4巻。佐原実波/著、講談社/刊。

  学参をテーマにした異色の漫画『ガクサン』の作者・佐原実波によれば、学参は実は毎月のように新刊が出ているのだという。実際に書店を訪問すると、学参が占めるスペースは大きいし、いわゆる『赤本』はドヤ顔で本棚を占拠している状態だ。なぜ、学参は紙の本がこれほど強いのか。

  結局のところ、学参は紙の強みが最大限に発揮される書籍であることに尽きるだろう。学校の現場ではすでにタブレットの導入が進み、黒板も電子黒板になるなどデジタル化が進んでいる。しかし、家庭学習はというと、確かにタブレットを使用した教材はあるが、紙が圧倒的に強いのである。紙に書いて覚える、書きながら問題を解く、これは学習の基本であるためだ。

  そして、佐原が指摘したように、要点を書き込んだり、蛍光ペンでラインを引いたり、付箋を貼ったりできるのは紙ならではである。すなわち、自分好みにカスタマイズできるということである。紙の感覚で自由に書き込めるタブレットが登場するなどの技術革新が起きない限りは、学参は今後も安定した出版の分野であり続けそうである。

『ガクサン』作者・佐原実波に聞く、学習参考書の奥深い世界「大人になると、もっと多様な目的で使えます」

 出版不況が叫ばれる中でも、紙の本の売上が堅調とされるのが学習参考書である。少子化が進む中でありながら、書店を訪問すると、学…

 

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