『キングダム』李信はなぜ覚醒した? 馬陽から朱海平原まで、進化につながった名勝負3選

朱海平原の戦い

 最後に取り上げるのは朱海平原の戦い。この戦いでは右翼として飛信隊が前線を押し上げる活躍を見せたが、古参の松左、去亥というふたりの兵を失ってしまう。さらには兵糧が無くなり精神的にも肉体的にも苦しい中で、信は大きな成長を遂げた。

 特筆すべきは、同じ本能型の尭雲と互角の采配を振るったことと、王騎の矛を扱えるようになったことだ。信はこれまでも本能型として、独創的な行動から節々で大きな活躍を見せていたが、この戦いでは、尭雲の策に次々と対応してみせたことから、本能型としての采配を確固たるものにしたと言えるだろう。

 また、信は王騎の矛を自在に扱えず序盤には苦戦している描写が多かった。しかし、王騎が矛を振るったイメージを再現したことで名刀を我がものとし、岳嬰、趙峩龍、龐煖を討ち取る活躍をみせる。この戦いで信は、個として圧倒的な武と将として六大将軍に大きく近づく成長を見せた。

 このように信は、一つひとつの戦いで確実に成長を遂げている。59巻642話での論功行賞でついに将軍の地位も得た。信の夢は誰よりも強い、天下に轟く大将軍であり、その夢は着実に実現へ向かっている。第1話では多くの武将が「李信将軍」とその名を呼び、立派な甲冑と兜を身にまとった信が描かれている。大きな戦いや昇格を機に信は甲冑を新調しており、甲冑が再び描かれる時にはどれほどの成長を見せているのか、楽しみでならない。

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