『BLUE GIANT』で一番面白いシリーズは? 新章突入を機に見どころと登場キャラクターを振り返る

 7月25日発売の「ビッグコミック」(小学館)2023年15号より、人気ジャズ漫画『BLUE GIANT』(ブルージャイアント)の最新シリーズ『BLUE GIANT MOMENTUM』がスタートした。世界一のジャズプレイヤーを目指す宮本大の奮闘を描く『BLUE GIANT』。2月の映画化で新たなファンも獲得しており、累計1100万部を超える大ヒットとなっている。

 これまでのシリーズには『BLUE GIANT』(全10巻)、『BLUE GIANT SUPREME』(全11巻)、『BLUE GIANT EXPLORER』(既刊8巻。連載は完結)がある。当然、最初から順に読み進めるのがおすすめだが、各シリーズで異なった見どころがあり、ファンの間でも好みが分かれるところだ。新シリーズの開始を機に原作を読み進めようという人も多そうなタイミングで、時系列と見どころを振り返っておきたい。

瑞々しい青春ドラマが楽しめる『BLUE GIANT』

 2013年5月にスタートしたシリーズ第1作の『BLUE GIANT』は、宮本大の学生生活から、ジャズマンとしての第一歩を踏み出す青春の物語だ。生い立ち、家族との関係性や故郷・仙台での生活、そして仲間との出会いと別れなど、後に世界を席巻するサックスプレイヤーとなる宮本大のバックグラウンドが描かれており、音楽を通じたダイナミックな展開は続くシリーズに軍配が上がるが、ドラマに瑞々しさがある。

 『BLUE GIANT MOMENTUM』開始時点から振り返ると、宮本大が驚くほど遠くまで歩みを進めていることに気づかされるが、明るく強く、しかし常にシリアスなキャラクターは、当初から出来上がっている。その原点に家族や地元の友人との関係性があり、師匠に当たる音楽講師・由井との出会いがあり、大にとって初のバンドとなる「THE JASS」(ジャス)を組んだ二人ーー上京後も生活をともにしたよき友人で、ドラマーとして急成長を見せた玉田俊二、卓越したピアニストで、その後の物語でも存在感を示す沢辺雪祈との熱い日々がある。単行本の最後に、未来視点での関係者インタビューが挿入されるのが恒例になっているが、これに近い目線で、プロミュージシャンとして成功しつつある宮本大の“前日譚”として読むのも楽しいだろう。

 THE JASSを巡っては、終盤にあまりに残酷で悲しい問題が起こるが、若さと情熱でそれを乗り越えようとする姿が読後感を爽やかにしている。この10巻で終わっていたとしても満足度が高い青春ドラマだ。

見どころ満載、カタルシス大の『BLUE GIANT SUPREME』

 2016年9月、続編としてスタートしたのが『BLUE GIANT SUPREME』。日本を飛び出し、単身ドイツ・ミュンヘンに渡った大が、人々に衝撃を与えながらバンドメンバーを集め、サクセスしていくダイナミックな物語だ。言語や習慣をはじめとする障壁が多く、それだけにカタルシスも最も大きいシリーズと言えるかもしれない。

 大が集めたバンド「NUMBER FIVE」のメンバーは、小柄で強い芯のあるドイツの女性ベーシスト=ハンナ・ペーターズ、一見傍若無人だが繊細で美しい旋律を奏でるポーランド出身のピアニスト=ブルーノ・カミンスキ、楽しむこと第一のスタイルから力強い成長を見せるフランス出身のドラマー=ラファエル・ボヌーと、それぞれに個性的で国籍もバラバラの3人。「音楽は国境を越える」という耳に馴染んだ言葉に甘えない、摩擦と緊張感にあふれたドラマが『BLUE GIANT』らしい。だからこそ、メンバーとも観客とも、通じ合った瞬間に大きなカタルシスがある。

 多くの問題にぶちあたり、成長を重ねるなかで、大のプレイヤーとしてのレベルは飛躍的に上がり、視界が広がっていく。アーネスト・ハーグリーブスというライバルとの出会い、ロックフェスでの伝説的なアクトなど見どころが多く、既読のファンも繰り返し楽しみたくなるシリーズだ。

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