『北斗の拳』『DEATH NOTE』『【推しの子】』……原作・作画の“分業漫画”はヒット作の宝庫?

 漫画ジャンルのひとつとして捉えられている「原作付き漫画」。原作と作画を分業して制作する漫画のことを指すが、その歴史は意外に古い。

 代表的な作品でいうと『北斗の拳』や『アイシールド21』、『DEATH NOTE』などが挙げられるだろう。また最近の漫画でいえば『【推しの子】』も人気漫画家同士の分業で制作されている。

分業漫画はバランスの良さも魅力のひとつ?

 『【推しの子】』は『かぐや様は告らせたい』の作者である赤坂アカ先生が原作・原案、『クズの本懐』作者の横槍メンゴ先生が作画を担当している作品だ。それぞれがヒット作を生み出している漫画家同士のタッグ作品、面白くないわけがない。

 お互いを「友達」と呼び合う赤坂先生と横槍先生だが、2人のインタビューを読むと双方をリスペクトする気持ちが伝わってくる。赤坂先生は“千年に一度のアイドル・星野アイ”を描けるのは横槍先生しかいない、とオファーしたという。「ビジュアルに関してはメンゴ先生に任せっきりだよね。もう全幅の信頼を置いているので」といった発言も。

 また「お互いが無理しない範囲ですり寄せて作品を作り上げている」といった趣旨の言葉も印象的だ。横槍先生は「アカピー(赤坂先生の愛称)のネームはめっちゃ上手い」、「コメディシーンは『かぐや様~』を研究して寄せるようにしている」と話している。実はアイドルにはそんなに詳しくないという赤坂先生と、アイドル好きな横槍先生。分業漫画の良さは一方に偏りすぎない“バランスの良さ”も挙げられるのではないか。

『北斗の拳』や『アイシールド21』は元祖分業漫画!?

 漫画の分業は昭和時代から脈々と続いている。たとえば『北斗の拳』の原作は武論尊先生で作画は原哲夫先生。『アイシールド21』は原作が稲垣理一郎先生、作画が村田雄介先生のタッグで制作された。『アイシールド21』の原作者・稲垣先生は、作画担当の池上遼一先生とともに現在「ビッグスペリオール」で『トリリオンゲーム』を連載中。2023年7月からは原作をもとにドラマ化されるほどの人気ぶりだ。

 ほかにも『釣りバカ日誌』や『金田一少年の事件簿R』、少女漫画でいうと『キャンディ・キャンディ』も分業漫画である。

 『DEATH NOTE』の大場つぐみ先生(原作)と小畑健先生(作画)のタッグは『バクマン。』も共同制作。どちらも映画化されるほどの大ヒットとなった。『花のズボラ飯』原作の久住昌之先生は『孤独のグルメ』でも原作を担当。やはり分業漫画はヒットしやすい印象だ。

 改めて分業漫画について考えてみると、自身の中で「漫画はすべて1人で制作するもの」といった固定観念のようなものがあることに気づく。キャラ・ストーリー設定から毎号のネーム、作画まで気の遠くなるような工程の数々を、たった1人でこなす漫画家の負担は計り知れない。例えるなら映画を一人で制作している感覚に近いのではないか?

 いくら漫画を描くことが好きでも、長期連載であれば途中で行き詰まったり、疲弊してしまったりしそうだ。分業漫画とは作品がより良くなるためだけではなく、作者同士が助け合えて心強いというメリットも大きいのだろう。もし人気漫画家が別の脚本家とタッグを組んだらどんな作品が生まれるのか――? 漫画の面白さは無限大かもしれない。

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