土井善晴推薦! 平野レミの51の食材にまつわるお料理エッセイ『エプロン手帖』の魅力

 いつも笑顔を届けてくれる人気料理家の平野レミ。料理本だけではなく、これまでにもエッセイを出版しており、どれも魅力的な内容だ。

 今回登場するのは子ども時代の味覚の記憶から、両親や夫・和田誠さんとの料理にまつわるおいしい思い出までまとめてあり、食材への敬意があふれるエッセイ集となっている。自らスタイリング&撮影した写真とともに、53品のオリジナルレシピも収録されているのも嬉しい。

 平野氏は「私の料理の原点はやっぱり母の味でした」と言う。母親が料理する姿を見てしぜんと料理が好きになり、父親の影響を受けてさまざまな食べ物に出会ってきた。

 いまでは「料理愛好家」として大活躍の平野氏だが、もともとはシャンソン歌手。
料理の世界に飛び込むきっかけは、夫・和田誠さんのご友人の一言だったーー。

 本の「おわりに」では「いつの間にか料理の仕事が増えたけれど、私はいつまでもアマチュアのつもり。台所にいることが好きな主婦です。専門用語もあまり知らないし、お料理はたいてい自己流です」と書いており、いつまでも初心を忘れない心構えがうかがえる。

 そして、こう続ける。

「自己流でデタラメのようでも、これとこれを組み合わせるとこんな味になる、ということは慣れてくるとなんとなくわかるようになります」

 一見、自由すぎるように思えるレシピにも、レミさんなりの根拠がある。

 『エプロン手帖』には、そんなレミさんの発想の根源と、食材への敬意や愛情がぎゅっと詰まっている。

■料理研究家・土井善晴氏も推薦
「恐るべし平野レミ。真っ直ぐ素直にたがを外してものを観る。世間に媚びず昂ぶらず超純粋な情動は、すでに不敵なアイデアなのである」

■本文より抜粋
「17歳のときに、はじめて大勢の人の前に出て歌った。どうしようどうしようと緊張していたら、『客席にいるのはみんなじゃがいもだと思えばいいのよ』と先生が安心させてくれた。でも、それはお客さんに失礼だし、じゃがいもにも失礼なような気がする。じゃがいもは主食にもおやつにもなるし、ビタミンBとCがいっぱいあっておいしくて、立派な人なのである」(「じゃがいもは立派な人なのです」より)

「初夢で縁起がいい『一富士・二鷹・三なすび』という言葉を子どものころから知っていたけど、最後のなすびというのがよくわからなかった。富士山は美しい山だからわかる。鷹は強くてかっこいい鳥だからわかる。なすになると急に調子が狂うような気がした。実は今でもよくわからない。三トマトじゃいけないのかしら」(「一富士・二鷹・三なすび」より)

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