注目アニメ『とんでもスキルで異世界放浪メシ』ヒットの理由は『ジョブチューン』や「リュウジのバズレシピ」との親和性?

※本稿は『とんでもスキルで異世界放浪メシ』のネタバレを含みます。

 異世界を舞台にした“飯テロ”アニメとして人気拡大中の『とんでもスキルで異世界放浪メシ』(原作:江口連)の第5話が2月7日、24時から放送される。本稿では、同作がなぜ時流に合っているのかを考察したい。

 原作のライトノベル&コミックも人気の『とんスキ』は、異世界に転生したごく普通のサラリーマン・向田(ムコーダ)が「ネットスーパー」というスキル(※ネットショッピングの要領で現実世界の商品を取り寄せられる能力)を駆使して、主に「食品」の力でサバイブしていく物語。アニメ版では大手企業の協賛を受け、現実に存在する商品が登場し、話題になってきた。

 第5話のタイトルは「風の女神は甘味がお好き」。これまでは主にネットスーパーで取り寄せた調味料と異世界の食材の組み合わせで魅惑の料理を作ってきたムコーダだが、異世界のスイーツに興味津々の女神・ニンリルから“お供え”を要求されるようになり、ドタバタ劇が加速していく。

 既製品を使った時短レシピがダイレクトに食欲をそそる『とんスキ』だが、菓子パンや簡易なスイーツ、出来合いのお惣菜など、庶民の味方的食品も大活躍する。これが時流に合っている、という感覚がある人も多いのではないか。

 何かと「コスパ」「タイパ」と言われる時代、「安く手早く美味しいものが食べたい」というニーズは高まっており、同時に、そうした商品を提供するメーカーやコンビニエンスストアへのリスペクトも広がっている。この状況を捉え、あるいは加速させている人気番組が、『ジョブチューン ~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』(TBS系)だ。

 名物コーナー「VS超一流料理人」では、コンビニやスーパーの商品が厳しくジャッジされて話題に。同時に安価に質のいいものを提供するためにどれだけ工夫が凝らされているかが広く共有され、取り上げられたコンビニスイーツは売り切れ必至という状況だ。女神ニンリルでなくても、つい食べたくなってしまう。

 あるいは、時短レシピを得意とする料理系インフルエンサーのトップランナー・リュウジ氏の「バズレシピ」。市販のめんつゆや化学調味料をよく使うことに一定数、否定的な声が上がっているが、「手間暇かけるのは手段であり目的ではない」という姿勢に共感する人が多い。食を探求・追求するグルメブーム/『美味しんぼ』的な世界観も重要に思える一方で、「リュウジのバズレシピ」や『とんスキ』が伝える今日的な価値観も、それぞれに生活の豊かさに寄与するものだろう。

 『とんスキ』は日々大量に生まれている「異世界転生系作品」の中でも目を引く物語だが、そうした創作ジャンルの中での比較より、「時短レシピ」や「コンビニスイーツ」など、社会的なトレンドの文脈のなかで捉えた方がヒットの要因がわかりやすそうだ。

トップ画像:©江口連・オーバーラップ/MAPPA/とんでもスキル

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