『ルリドラゴン』『サンダー3』『漫身創痍』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 10月のおすすめ新刊漫画
今月発売された新刊の中から、おすすめの作品を紹介する本企画。漫画ライター・ちゃんめいが厳選した、いま読んでおくべき5作品とは?
『ルリドラゴン』眞藤雅興
今年の6月に「週刊少年ジャンプ」で連載開始するやいなや、ジャンプらしからぬ"ゆるさ"そして"可愛らしい絵"で話題を呼んだ『ルリドラゴン』。
ある日突然、女子高生・ルリの頭に2本のツノが生えてくる。その出来事をきっかけに彼女は自分の父親がドラゴンであることを知るが、別にドラゴンの血を引く娘だからといって、何か宿命を背負わされるわけでも、冒険に出るわけでもなく……その後もただただいつもの日常が続いていく。次第にツノ以外にもドラゴンらしく(?)口から炎が出ててくるなど、半ドラゴンであるがゆえの第二次性徴、それによって周囲へ及ぼす影響に悩むルリだが、そんな彼女を変わらずに受け入れる、教師や友人達の相互理解の姿勢が読み手の胸を打つ。そして、彼女が変わらずに学校生活を送れるようにと、見えないところで支援している母親の隠れた愛。きっと自分の日常にも溢れているのかもしれない、周囲の優しさや愛情について考えたくなる一冊だ。
『サンダー3』池田祐輝
「漫画ってこんなことができるんだ!?」と、間違いなく今年イチの衝撃と驚きを与えてくれた怪作。
ひょんなことから異世界に転移してしまった中学生3人組とその妹。そこで何者かによって連れ去られてしまった妹を取り戻すべく、異世界で奮闘する3人組の姿を描く……という物語だが、あらすじだけ聞くと正直そこまで驚きや斬新さはない。だが、この作品はとにかく絵とストーリーの総合芸術っぷりがすごいのだ。中学生3人組とその妹が迷い込んでしまった異世界、でも本当はどちらか異世界なのか、そして異界の生物はどちらなのか。シンプルなストーリーに対して絵が更なるブーストをかけ、読んでいると思わず脳がバグるような読書体験へと読者を誘う。ちなみにこの絵というのは、とんでもなくうまいとか個性的な絵柄とか、そういった類のことではないのだが、気になる真相は読んでからのお楽しみ。ぜひ、この『サンダー3』の唯一無二の世界を体感してみてほしい。
『漫身創痍』野良おばけ
もはや“満身創痍”。それでもなお漫画を生み出すことをやめず、足掻き、ペンと紙で殴り合う2人の漫画家の物語『漫身創痍』。
主な登場人物は、売れない新人漫画家・西風時生と表舞台から消えた天才漫画家・星衛明日馬。ひょんなことから、自分たちの作品で漫画業界を引っ繰り返そうとタッグを組んだ2人は、まずは漫画賞受賞を目指して創作に没頭するが、実はこの2人は何もかもが正反対。例えば、時生が漫画は読者のためにあるのだと説けば、明日馬は作者のためにあると叫び、自分の描きたいもの、表現したいものを貫く。とにかく真反対な2人は幾度となく衝突するが、互いの才能、そして創作におけるある種の狂気性が共鳴して、命を燃やすように作品を生み出していく姿から目が離せない。努力、友情みたいな綺麗ごとは一切なし、どこまでも泥臭くて真摯なクリエイター群像劇をお見逃しなく。