『ルックバック』や『さよなら絵梨』にハマった人へ……魅力的な読み切り&短編漫画を紹介

『ひきだしにテラリウム』

 『ダンジョン飯』などで知られる九井諒子氏の短編集『ひきだしにテラリウム』もすごい。作品のクオリティはもちろんのこと、200ページ程の1冊に33本の読み切りが収録されているのである。

 短いものだと2ページのみで構成される数々の作品は、その世界観もさまざま。『ダンジョン飯』を彷彿とさせるファンタジー作品だけでなく、現実的な世界を舞台とした作品やSFチックなものなどーー。まさしく色とりどりのテラリウムが並べられた引き出しを覗き込んでいるかのような気分になる1冊である。

 収録作品のなかに『ショートショートの主人公』というタイトルの読み切りが存在する。『あしたのジョー』を思い起こすような画風で描かれた父と、まるで少女漫画のキャラクターのような容姿をした母。お仕事系漫画に登場しそうな姉と、千年に一度の「対魔師」としての才能をもつ兄。そんな家族として生まれたのは“ショートショートの主人公”である少女。彼女がひょんなオチで死んでしまうことを不安に思う家族が、少女の結末を考えるという物語だ。

 可笑しさも感じてしまうこの作品には、以下の台詞が描かれる。

ショートショートって難しいな

 上記は『ひきだしにテラリウム』だけでなく、多くの漫画家の声を代弁したものではないだろうか。

 限られたページ数のなかで起承転結を組み立てる作業は、連載作品とは異なるむずかしさがあるのだろう。連載作品とは異なる苦労のなか、作家から絞り出されるからこそ、連載作品とはひと味違った濃厚さや味わいを感じるのかもしれない。

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