『俺だけレベルアップな件』漫画家死去の衝撃 ウェブトゥーンは今後どこへ向かう?

7月23日、ウェブコミック界を代表する漫画家であり、『俺だけレベルアップな件』の作画に関わった漫画家のチャン・ソンラク(DUBU)が死去した。37歳という若さであった。チャンが代表を務めるの製作会社REDICE STUDIOは、死因は持病に伴う脳出血であると発表した。

 ウェブコミックの代表的なスタイルである「ウェブトゥーン」は韓国発祥である。縦にスクロールさせながら読む形式がスマートフォンと相性がよかったことや、漫画アプリの配信サイトの盛り上がりと、人気漫画家が多数輩出されたことで急速に市場が拡大。大手出版社である小学館は2021年に「TOON GATE」というコンテストを開催、本格的な制作に乗り出すなど、漫画事情を語るうえで欠かせないコンテンツとなっている。

 こうしたウェブトゥーンの人気と普及を牽引した漫画家が、ほかならぬチャンである。2018年から『俺だけレベルアップな件』の連載が始まると、全世界での累計閲覧回数が約142億ビューという歴史的なヒットとなった。ピッコマを代表する漫画として存在感を発揮し、2019年には「ピッコマ BEST OF 2019」のマンガ部門で第1位を獲得。2023年には、日本のアニメ制作会社A-1 Picturesでアニメ化も決定していた。

 勢いが止まらない中で突然訪れたチャンの死去とあって、業界全体に大きな衝撃を与えている。

 そして、気になるのが今後のウェブトゥーン業界の動向だ。2021年には約4,951億円もの市場規模となり、2028年には約3兆円に達するという予測まである。現在は海外勢が牽引している状態だが、日本の漫画家から爆発的なヒットが生まれるかどうか、目が離せないところである。

 ウェブトゥーンの漫画はカラーで描かれることが多く、チャンが在籍したREDICE STUDIOのようなスタジオで、複数人を雇用して分業制で制作されている。どちらかといえば、アニメーションの制作に近いかもしれない。人件費のほか、世界を視野に入れたシナリオや作画のクオリティの向上、配信に当たってピッコマに支払う手数料なども考慮すれば、プラットフォームが存在する従来の漫画よりも制作費が嵩むといわれる。

 オンラインゲームは中国のmiHoYoが開発した『原神』が世界を席巻した。オンラインゲームも海外勢は日本を遥かに超える金額が投じられている例が少なくない。さらに、海外への配信を意識すれば、日本が得意とする自由な表現に一定の制約がかかるおそれがある。日本勢が海外とどう戦うのか。今後の動向に注目していきたい。

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