【漫画】深夜のファミレスで出会った、同じ本を好きだった男女ーー“大人になること”の意味を問う創作漫画が面白い

深夜のファミレスは大人の空間

――『深夜のファミレスで同じ本を好きだった同士と出会った話』制作の経緯をお聞かせください。

㐂積みちる(以下、㐂積):コロナ禍が始まって間もない時期、持病で少し心が疲れていたのですが、その時にポルノグラフィティの「ラビュー・ラビュー」をよく聞きました。この曲の<君は本当いっしょうけんめい生きているね><この世界の憂うつを消してくれ>という歌詞がとても好きなので、私なりにそういう気持ちを作品として表現しようと思い、制作を始めました。

――なぜ深夜のファミレスを舞台にしたのですか?

㐂積:私は幼少期や学生時代にファミレスに行ったことがあまりなく、マンガやアニメの風景で見かける憧れの場所でした。加えて、深夜にあまり出歩くこともなく、ファミレスも、深夜も、私の中では“成人した大人に許された場所と時間”という認識があります。ですので、「成人だけど大人になりきれてない人たちが面白そう」と思い、舞台に選びました。

――大人になった苦労を描くことは、作り手にしてみれば精神的に結構しんどそうですが、制作中はどのような心境でしたか?

㐂積:正直、しんどいことの連続ではありましたし、何度も「投げ出したい……」と思いました。ただ、前向きなラストを描く予定でしたので、「私も耐えるから、お前ら(登場人物)も耐えろ!」とか腹の中で叫びながら描き上げました。(笑)

――なんとか描き終えた時の心境はいかがでしたか?

㐂積:ネームが完成した時は「この表現しかない!」と思っていました。ただ、描き終わって時間が経って読み返すと「もうちょっとやり方あったんじゃないかな……」と悶々としています。その時はその表現がベストだと頭では分かっていますが、ついつい後悔することも少なくないんですよね…。

大人とは? 言動の前に他人を思いやれる人

――「大人になることのしんどさ」「何歳でもときめいて良い」など、様々なメッセージを感じる作品でした。

㐂積:描きたかったことが伝わって本当に嬉しいです。登場人物が経験したことは、ケースが違っても誰もが身に覚えがあることではないでしょうか。「読み手が共感して少しでも癒されたり、スッとしたりしたらなによりだな」と思って描きました。

 また、「子供の時の“好き”を忘れず、ドキドキすることは素敵」と考えていますので、「そこを含めて歳をとって大人になるのは心躍る感覚じゃないか」と勝手に思っています。大人だからこそのドキドキワクワク感も楽しんでもらえると嬉しいです。

――ちなみに㐂積さんが考える“大人”とは何ですか?

㐂積:“言葉を発する時や、行動をする前に他人を思える人”ですかね。そこで生じるリスクもデメリットもちゃんと正面から受け止め、それらを糧にする人はカッコいい大人だと思います。私もそうなりたいです。

――今後の活動についてお聞かせください。

㐂積:自分が描いたマンガでお金をいただける一人前の漫画家になりたいです。関心を持っていただける商業の方々、仕事をいただければ、全力で取り組みます。何卒よろしくお願いします!

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