大反響となった『妻、小学生になる。』創作のルーツとは? 漫画家・村田椰融の作家性を紐解く
2022年1月から放送が開始されたドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)。家族に関する様々な出来事を題材としたエピソードの数々、そして小学生となった妻という役を演じる毎田暖乃の姿など、放送後には様々な反響を呼んでいる作品だ。
原作は『週刊漫画TIMES』(芳文社)で連載している同名の漫画作品である。単行本に収録された「第1話」が掲載されたTwitterの投稿で22.7万以上のいいね数を記録するなど、こちらも大きな反響を呼んでいる(2022年2月7日現在)。
話題を生み出し続けている本作を象徴するのは、やはり“妻が小学生になった”という設定であろう。独創的な作品にはどのような背景があるのか。本稿では作者の人物像から作品の裏側にあるものを紐解いていきたい。
本作のルーツとなる「ふたつの作品」
会社員として働く「新島圭介」と、家で仕事をする娘「麻衣」。コンビニで購入したお弁当を黙々と食べるふたりの前に現れたのは、10年前に事故で死去した妻「貴恵」と名乗る、ランドセルを背負った女子小学生。ふたりの住むマンションの近所を通った際に、彼女は前世である貴恵の記憶を思い出したという。
思いがけない再開を果たした圭介と麻衣は、小学生の姿をした貴恵と再び同じ時を共にする。貴恵の存在によって喪失感を覚えていた圭介と麻衣、そして貴恵自身も少しずつ変化しながら物語は進んでいく。
この世を去った貴恵が小学生として甦(よみがえ)ったという設定は、本作の根幹を成しているギミックであろう。作者である村田椰融氏(以下、村田氏)は本作のほかに『一〇〇一回目の命日』という漫画作品を発表している。
この作品は自殺により命を絶った中学3年生の少年が何度も甦り、“自殺した今日”を乗り越えた先にある、充実した人生を目指す様子を描いた漫画だ。この世を去った者が同じ世界に甦るといった点や、再び人生を歩むことで気づきを得る点など、『妻、小学生になる。』に通じる部分の多い作品である。
村田氏は『一〇〇一回目の命日』と同様に『わたしはおにのこ』という漫画作品も世に出している。こちらはランドセルを背負った女の子が、まるで鬼が憑いているかのような、様々なことで怒る母親の過去を少しずつ知っていく様子を描いた作品だ。
『妻、小学生になる。』の2巻「第9話」をはじめ、生まれ変わった貴恵の暮らす家庭が描かれるシーンでは、母親が小学生の貴恵につよく当たる様子が多く描かれる。『妻、小学生になる。』は村田氏が発表した『一〇〇一回目の命日』と『わたしはおにのこ』の異なる主題が交錯する、精巧な作品と言えるだろう。