『アンデッドアンラック』ハイテンションな展開で物語は未知の領域へ 否定の力の“可能性”とは?

 『アンデッドアンラック』(以下、『アンデラ』)の魅力は、とにかく展開が早いということに尽きる。まだ4巻だが、15巻分くらいの物語が圧縮されているように感じる。

 戸塚慶文が「週刊少年ジャンプ」で連載している本作は、皮膚が接触した相手に不運をもたらす「不運」(アンラック)の出雲風子と、死なない身体を持った「不死」(アンデッド)のアンディの物語。

 2人は否定者と呼ばれる存在で、否定者10人の特殊チームを頂点とするユニオン(対未確認現象統制組織)に追われていた。しかし、ユニオンの否定者2人を倒したことで、逆にユニオンの特殊チームにスカウトされ、様々な課題(クエスト)に挑戦することになる。

以下、ネタバレあり。

 マフィアが主催するUMAや否定者の黒競売(ブラックオーディション)に潜入するため、リオデジャネイロ港に到着した豪華客船に潜入したアンディと風子。2人の目的は「不治」(アンリペア)の否定者との接触だったが、マフィアに捕まっていたのは「不動」(アンムーブ)の否定者・重野力だった。

 やがてアンディと風子は、重野をめぐってユニオンと敵対する謎の集団「UNDER」(アンダー)の否定者たちと衝突。能力者の1人はアンディたちが探していた「不治」の否定者・リップ。どんな攻撃をうけても再生するアンディの身体もリップのメスで切りつけられると再生できない。風子も負傷しマフィアに囲まれ、絶体絶命のアンディ、しかし怯えていた重野が参戦し「不動」の力を発動することで形勢は逆転する。

 そして第4巻は、ユニオンの否定者・タチアナの過去から物語がはじまる。彼女の能力は「不可触」(アンタッチャブル)。「U・Tエリア」と呼ばれる(自分の身体を中心とした)球体状の不可触の空間を作り出し、触れたものを破壊する巨大な力だ。力を制御するため、彼女は常に球体状のメカに入って行動する。

 タチアナはロシア出身の幼女で、5歳の誕生日に「不可触」の力に覚醒め、その影響で両親を圧死させてしまう。わけもわからず逃げているところをマフィアに捕まりオークションで競売にかけられたが、円卓の否定者のビリーに助けられてユニオンに加わる。風子も重野もタチアナも、否定者の力に覚醒めた影響で、両親を亡くしている。その描写は実にシビアで、否定者たちの力が他者との接触に障害をもたらす理不尽な呪いだということが、繰り返し強調されている。

 同時に描かれるのは、否定の力は「大切な人を守る」武器にもなり得るという可能性だ。風子たちを助けるためにタチアナが「不可触」の力を開放して船を破壊する場面はカタルシスのある名場面となっている。

 UNDERを撃退した重野力は「一緒に神サマぶっ殺そうぜ」とアンディと風子にスカウトされ、特殊チームの仲間に加わる。11人目の否定者として重野力が加わったことで、新しい課題に挑むことが可能になったアンディたち。

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