『ONE PIECE』エース、なぜ“メラメラの実”の能力者に? 公式スピンオフで明かされる、知られざる過去
この第1話では、タイトルどおり、二人の男による海賊団の結成までしか描かれていない。この中で注目すべきは、『ONE PIECE』本編以上にフォーカスされている、男気あふれるエースのキャラクター性はもちろんのこと、やはり“メラメラの実の能力者”の誕生秘話である。ここで、エースが偶然にも能力者になったことが判明。突如として現れた怪鳥に襲われているマスクド・デュースを救った際、その怪鳥がメラメラの実の果実が入った宝箱を吐き出したのだ。それを単なる果実だと考えたエースは、自分よりも瀕死状態であり、宝箱を見つけた当人であるマスクド・デュースに一人で食べるように勧めるが、二人で分け合うことに。両者ともが何日も何も食べていない空腹の身。怪鳥を撃退したのはエースだが、このあたりの言動に彼の“男気”が感じられる。エースとは常に、“仲間のため”に生きる男であった。
こうして二人はこの果実を食すのだが、先に口にしたのはエースの方。悪魔の実の能力とは、その一口目を食した物に宿る。彼らは“同時に食べる”約束を交わすが、マスクド・デュースの中にあるのはすでに、食欲以上に後悔の念。彼は自分よりも体力のあるエースに対し、「どこかで食料を調達しているのでは?」との疑いを持っていたのだ。エースがメラメラの実の能力者となったのは偶然だと先に記したが、やはり彼の人柄、そしてそんな彼を支える存在となるマスクド・デュースという男があってこそのものだと訂正した方がいいかもしれない。
第2話へと続く本作『ONE PIECE episode A』が、“死してなお、私たち読者の心に残り続けるエースとは何だったのか”、“エースが『ONE PIECE』の世界に遺したものは何だったのか”、それを知り、考える機会を与えてくれるものとなりそうだ。
■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter