『ONE PIECE』ドレスローザ編には尾田栄一郎のすべてが詰まっている 複雑なストーリーの中にある作家性

 『週刊少年ジャンプ』で連載されている尾田栄一郎の漫画『ONE PIECE』(集英社)は「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」をめぐって海賊たちが戦いを繰り広げる大海賊時代を舞台に、海賊王を目指すルフィ率いる麦わらの一味が大冒険を繰り広げる姿を描いた物語である。

 70~80巻にかけて展開されるドレスローザ編は100話を費やした長編エピソード。今回は前半について解説する。

※以下ネタバレあり。

 パンクハザード島での戦いを終えたルフィたちは共に戦った王下七武海のトラファルガー・ローと、海賊同盟を組むことになる。目的は新世界の海を牛耳る「四皇」の一角である「百獣のカイドウ」を倒すこと。

 そのためには、カイドウと繋がりのある王下七武海の一人でドレスローザ国の王であるドンキホーテ・ドフラミンゴをまずは倒さなければならない。ドフラミンゴには武器商人・ジョーカーとしての顔もあり、科学者のシーザー・クラウンが作った人造悪魔の実(SMILE)を使ってカイドウと取引していた。

 パンクハザード島で捕獲したシーザーを人質に、ローはドフラミンゴと交渉。まず彼を七武海から脱退させると同時に、ドレスローザ国王の座を放棄させる。そしてドレスローザの北にある孤島「グリーンビット」で人質交換の約束を交わすのだが、実はこれは囮で、ローの目的はドレスローザ国のどこかにあるSMILE製造工場の破壊だった。

 ドレスローザ国に到着したルフィたちは、グリーンビットに向かうロー、ロビン、ウソップのシーザー引き渡しチーム。船を守るナミ、チョッパー、ブルック、モモの助の、サニー号安全確保チーム。そして、ドレスローザに潜入した、ルフィ、ゾロ、サンジ、フランキーと錦えもんの工場破壊&侍救出チームの三手に別れて行動する。

 ドレスローザは、人間と命を持ったオモチャが共存する「愛と情熱とオモチャの国」。表向きはスペインとイタリアを思わせる賑やかで料理がおいしい国なのだが、実は隠された裏の顔があることが次第にわかってくる。

 その後、ルフィたちは別行動を取るようになり、物語は更に枝分かれしていき、ルフィとフランキーは工場の場所を探るために国の幹部が集まるという「コリーダコロシアム」へと向かう。

 そこは新世界の猛者たちが報酬を求めて戦う闘技場。今回の報酬は命を落としたルフィの義兄・エースの保有していたメラメラの実(悪魔の実は能力者が死ぬと世界のどこかで復活する)だった。ルフィはエースの形見と言えるメラメラの実を手に入れるため、“ルーシー”として戦いに参加する。

 前半部ではコロシアムで戦うルーシー(ルフィ)のバトル・ロワイアルと、ローとドフラミンゴの人質交換をめぐる攻防が描かれるのだが、やがて、ドフラミンゴが支配する“ドレスローザ王国の闇”をめぐって、バラバラだった物語が一つにまとまっていく。

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