社会から疎外された人と猫を包み込むーー動物愛護施設「LOVE&PEACE Pray」の熱意

 先天性心疾患を持って生まれてきた筆者にとって、まだまだ障がい者がありのままに生きることが難しい今の社会は窮屈だ。周囲から向けられる偏見の眼差しはどれだけ歳を重ねても痛く、いつ悪化するか分からない持病はまるで時限爆弾のように思える。いわゆる「普通」には決してなれない事実が悲しくて、悔しくて死にたくなった日など何度もあった。

 それでも死に踏み出さなかったのは、猫と生きたかったから。『優しい手としっぽ 捨て猫と施設で働く人々のあたたかい奇跡』(咲セリ:著/カジ:写真/オークラ出版)は、これまで歩んできた人生を思い起こさせる一冊だった。

「すべての命は平等」就労施設に込めた尊い祈り

 滋賀県大津市にある「LOVE&PEACE Pray」は、障がい者の就労支援施設でもある動物愛護施設。様々な障がいを持つ人々が一般職に就くまでの間、トレーニング(仕事)として給金を貰いながら保護猫たちのお世話をしている。本書にはそんな人々の生い立ちや猫との交流が描かれており、設立者の藏田和美氏の想いも知れる。

 長年、猫の命を救い続けてきた藏田氏がこうした形態の就労支援施設を作ろうと考えたのは、自身が機能不全家庭に苦しんで居場所を求めてきたことや、命はすべて平等だという考えを持っていることが大きく関係している。

 藏田氏は一般的には敬遠されやすいハンディキャップを持つ猫の保護も躊躇しない。それは、彼女が保護活動を通して、自分を卑下せず、できることを思いっきり楽しむ障がい猫たちの姿に尊敬の念を抱き、そしてこの社会の在り方に疑問を持ったからだ。

 私たちが生きている社会は不平等で、障がいを持つ人や動物には偏見の眼差しが向けられることも少なくない。だが、藏田氏は自身の活動を通して、猫たちだけでなく、障がいを抱える人たちからも大切なことをたくさん学んだそう。だからこそ、著者にこんな思いを語った。

“「何もできない人なんて、ひとりもいない」もし、本人が「何もできない」と思っているのなら、それは周りがそう思わせてしまっているのだと。”

 障がいに限らず、今の世の中では個人が必死に抱えてきた生きづらさに冷たい視線が向けられることがまだまだ多い。だが、こうした取り組みや想いが広く伝われば、少しずつではあるが、人も動物も生きやすい社会に近づいていくのではないだろうか。

 そのためには自分に何ができるか。藏田氏の熱意を知ると、そんなことも考えたくなる。

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