#MeToo運動はいかにして広がったか? “ハリウッドの絶対権力者”の大罪を暴く『その名を暴け』邦訳版発売
ニューヨーク・タイムズが「ハーヴェイ・ワインスタインは、何十年ものあいだ性的嫌がらせの告発者に口止め料を払っていた」という記事を掲載(2017年10月5日)。この記事をきっかけに、全世界に#MeToo運動が広まることになった……。世界を変えた調査報道の軌跡と舞台裏を、取材にあたった記者が自ら明かした話題書の邦訳版が、7月20日に新潮社より刊行される。
ワインスタインは、『イングリッシュ・ペイシェント』や『恋におちたシェイクスピア』、『世界にひとつのプレイブック』などを手掛け、ハリウッドの絶対権力者として君臨した有名プロデューサーだった。
本書は、有名女優や元従業員が、彼から苛烈な性的嫌がらせを受けながら、自分の未来を人質にされ、秘密保持契約と巨額の示談金で沈黙を強いられていた実態を、記者たちが炙り出し、記事にするまでの過程を克明に描いたノンフィクション。
スパイを使ってまで取材を妨害しようとしたり、新聞社に乗り込んで記事を差し止めようとするワインスタインと記者らの攻防には思わず息を呑む。そして記事掲載によって火が付いた#MeToo運動をはじめ、その後の社会の変化も丁寧に描かれている。
・権力と地位を持つ人物が、どのようにその立場を悪用しているのか?
・性的嫌がらせや性的虐待を許す社会や企業の体質とは?
・被害にあった女性たちの苦しみとは?
……など、世界共通の問題点を多く取り上げている。
ピュリッツァー賞も受賞した報道の裏側を明かす本作には、各界の識者から、推薦コメントが寄せられている。
■石戸諭(ノンフィクションライター)
事実は、いかなるオピニオンよりも社会を動かす。
■荻上チキ(評論家)
権力と金によって、隠蔽されてきた性暴力たち――。ハリウッドだけではなく、世界中の性差別を問い直した、執念のルポがようやく読めた。
■長野智子(キャスター)
権力者との死闘に立ち上がった女性たちの慟哭と勇気に身震いがした。
■浜田敬子(Business Insider Japan統括編集長)
女性たちの信念と連帯が、世界に勇気を与えた。
■書誌情報
『その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い』
著者名:ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー
翻訳:古屋美登里
発売日:2020年7月30日
定価:2,365円(税込み)
https://www.shinchosha.co.jp/book/507171/
■著者・ジョディ・カンター(左)ミーガン・トゥーイーついて
ともに「ニューヨーク・タイムズ」紙の調査報道記者。カンターは職場問題、その中でも特に女性の待遇について重点をおくとともに、2度の大統領選挙の取材に従事。著書に『The Obamas』がある。
トゥーイーは女性や子供の問題に焦点をあて、ロイターニュース記者時代の2014年にピュリッツァー賞調査報道部門の最終候補者になる。カンターとトゥーイーは本作の基となったハーヴェイ・ワインスタインについての調査報道で多くの賞を受賞し、ジャーナリズムの分野で最高の名誉とされるジョージ・ポルク賞や、「ニューヨーク・タイムズ」としてピュリッツァー賞公益部門を受賞している。
■翻訳者・古屋美登里について
翻訳家。著書に、『雑な読書』『楽な読書』(シンコーミュージック)。訳書に、ノンフィクションではデイヴィッド・マイケリス『スヌーピーの父 チャールズ・シュルツ伝』、カール・ホフマン『人喰い ロックフェラー失踪事件』、デイヴィッド・フィンケル『帰還兵はなぜ自殺するのか』『兵士は戦場で何を見たのか』(以上亜紀書房)、ダニエル・タメット『ぼくには数字が風景に見える』(講談社文庫)、フィクションではイーディス・パールマン『蜜のように甘く』(亜紀書房)『双眼鏡からの眺め』(早川書房)、 M・L・ ステッドマン『海を照らす光』(早川epi文庫)、エドワード・ケアリー『おちび』、〈アイアマンガー三部作〉『堆塵館』『穢れの町』『肺都』(以上東京創元社)など多数。