一人負けの日本は再び立ち上がれるのか? 月間ビジネス書ランキング『シン・ニホン』に注目

 日本は、内外からよく言われるように、仏教からコンビニまで文化や技術を輸入し、改良しては発展してきた国なのだ。そしてこれこそが、世界経済の新たな波に乗るための強みなのである。AI×データの産業構造の変化は、今まさにサービスのスマート化が求められている。業界ごとに、顧客のニーズに合わせて技術を応用することは、日本が得意とするフェーズなのだ。もちろんそのためには、未来を担う人材の育成も必須だ。産官学、全てに携わる安宅氏からは、教育への提言も続く。 

 さて、書名の『シン・ニホン』とは、映画『シン・ゴジラ』に着想を得たネーミングだ。AIとデータによって、社会はいかに変化し、私たちはどう対応していくのか、日本の現状と、残すべき未来像を描いている。確かな現状把握から、課題解決の糸口を探し、望む道を行く、『イシューからはじめよ』(英治出版)の著者らしいタイトルだ。

 そして本書の最後には、ビジョンから未来をつくる取り組みとして、「風の谷を創る」という運動についても述べられている。人類と環境との共存を目指す取り組みで、「風の谷」も宮崎駿監督の映画『風の谷のナウシカ』からつけられている。今さらダーウィンの進化論を持ち出さなくとも、変化の重要性は多くの人の知るところだろう。ポストコロナの時代にどのような未来を残したいか、わたしたちは変化を求められている。

(文=MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店・社会書担当 中田英志郎)

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