『名探偵コナン』怪盗キッド/黒羽快斗の魅せる華麗なるショータイム

 怪盗1412号――人呼んで怪盗キッド。変幻自在にして神出鬼没。白いタキシードに身を包む"月下の奇術師"で、鮮やかに獲物を盗み出す創造的な芸術家。彼を称する形容詞には事欠かない。

 怪盗キッドは世間を騒がす大怪盗でありながら、作中世界には彼のファンが多い。ひとたび予告状が届けばニュースに取り上げられ、犯行現場には熱烈なファンが詰めかける。そして、彼を「キッド様」と呼んで慕うファンは、こちらの世界でも増え続けている。昨年公開された劇場版シリーズ第23作『名探偵コナン 紺青の拳』でも、シンガポールを舞台に大活躍し、また新たなファンを獲得した。

『まじっく快斗』1巻

 さて、獲物も人の心も盗んでしまう困った怪盗の正体の話をしよう。工藤新一とそっくりな容姿で、マジックが得意な男子高校生・黒羽快斗。彼こそは、青山剛昌の初連載作品『まじっく快斗』の主人公である。『名探偵コナン』の怪盗キッド=黒羽快斗は、主人公・江戸川コナンのライバルであると同時に、彼自身が一つの物語を背負った存在なのだ。

 25年以上連載している原作漫画『名探偵コナン』で、怪盗キッドが登場した事件は、実は20にも満たない。しかし、これらの"キッド回"と呼ばれるエピソードは、その名の通り"主役級"のキャラクターが客演として参戦している、超豪華な特別回なのである。

絶対外せない"キッド回"といえば?

 『名探偵コナン』の"キッド回"と呼ばれるエピソードから、特にチェックしておきたいものを紹介しよう。

 まずは、コミックス16巻収録の「コナンvs.怪盗キッド」のエピソード。「漆黒の星(ブラックスター)」を狙う予告状の解き明かしたコナンは、月に照らされた屋上で、怪盗キッドと出会う。相容れない存在である探偵と怪盗の初邂逅。この場面は一度見たら忘れられない。

 次に、コミックス30巻収録の「集められた名探偵! 工藤新一vs.怪盗キッド」。毛利小五郎を始めとする名探偵たちに届いた「黄昏の館」への招待状、その差出人は怪盗キッド……? 館で起こる事件にハラハラしていると、キッドにアッと言わされること間違いなし。

 64巻、65巻収録の「怪盗キッドvs.最強金庫」は、人間味あふれるキッドを楽しめるエピソード。難攻不落の金庫『鉄狸』に挑もうとするキッドが、コナンに正体を見破られるのだが、実はその目的は……。鈴木次郎吉との友情(?)にも注目だ。

 82巻収録の「怪盗キッドVS京極真」は、劇場版『紺青の拳』からキッドの魅力に目覚めた人にぴったり。空手家・京極真が恋人の園子を虜にするキッドに敵対心を燃やし、"世界最強の防犯システム"としてキッドの前に立ちはだかる。キザなキッドと、京極と園子の強い絆、どちらもグッと来る人は多いはず。

『まじっく快斗』4巻

 さて、ここまで『名探偵コナン』のキッド回を紹介してきたが、「怪盗キッドの全てを知りたい!」という人におすすめなのは、実はコミックス『まじっく快斗』1~5巻だ。こちらでは、作中世界のファンが憧れる「キッド様」ではない、男子高校生・黒羽快斗の素顔を楽しむことができる。

 ちなみに、もし『名探偵コナン』一筋のファンであっても、『まじっく快斗』4巻は必読だろう。なんと、怪盗キッドが主役の物語に、あの工藤新一が"客演"するエピソードが収録されているからだ。『名探偵コナン』の"キッド回"を反転させたような構図で、工藤新一が「強敵」として描かれる。キッドは予告現場にコナンが現れるたびに、こんな「強敵」を相手にしているのだと思うと、少し見え方が変わるかもしれない。

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