『FACTFULNESS』から『メモの魔力』まで 2019年ヒットのビジネス書、キーワードは“現実”

 年の瀬ということで今年のビジネス書の話題作を振り返ってみたいが、上半期についてはすでにいくつもランキングが発表しているのでまずはそちらを参照しよう。

 新刊ビジネス書情報月刊誌「TOPPOINT」の読者が選定した、ビジネスパーソン1万人が選ぶ2019年上半期のベストビジネス書ベスト10は

1位『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング著/日経BP)
2位『サブスクリプション』(ティエン・ツォ/ゲイブ・ワイザート共著/ダイヤモンド社)
3位『国家と教養』(藤原正彦著/新潮社)
4位『ビッグ・クエスチョン』(スティーヴン・ホーキング著/NHK出版
5位『平成はなぜ失敗したのか』(野口悠紀雄著/幻冬舎)
6位『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー他著/東洋経済新報社)
7位『右脳思考』(内田和成著/東洋経済新報社)
8位『イースタニゼーション』(ギデオン・ラックマン著/日本経済新聞出版社)
9位『OODA LOOP』(チェット・リチャーズ著/東洋経済新報社)
10位『FEAR 恐怖の男』(ボブ・ウッドワード著/日本経済新聞出版社)

だった。

 ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」会員が2~7月の6カ月間に閲覧した数の多かったビジネス書ランキングトップ10は

1位『FACTFULNESS』
2位『メモの魔力』(前田裕二著/幻冬舎)
3位『やってはいけない7つの『悪い』習慣』(デビッド・M・R・コヴィー/日本実業出版社)
4位『直感と論理をつなぐ思考法』(佐宗邦威著/ダイヤモンド社)
5位『OODA LOOP(ウーダループ)』
6位『紙1枚!独学法』(浅田すぐる著/SBクリエイティブ)
7位『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』(桑野麻衣著/クロスメディア・パブリッシング)
8位『人生は攻略できる』(橘玲著/ポプラ社)
9位『残業学』(中原淳著/光文社)
10位『頭が冴える! 毎日が充実する! スゴい早起き』(塚本亮著/すばる舎)

 だった。

 これに加えて、東洋経済オンラインに掲載されている『Amazon週間ビジネス・経済書ランキング』(https://toyokeizai.net/category/weeklyranking)で週間1位となり、上記2つのランキングに入っていない2019年刊の本(下半期まで含む)を挙げると以下になる。

『THE TEAM 5つの法則』(麻野耕司著/幻冬舎)
『経済で読み解く日本史 文庫版5巻セット』(上念司著/飛鳥新社)
『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』(ジェイク・ナップ著/ダイヤモンド社)
『心。』(稲盛和夫著/サンマーク出版)
『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』(ほぼ日刊イトイ新聞著/株式会社ほぼ日)
『GACKTの勝ち方』(GACKT著/サンクチュアリ出版)
『サードドア: 精神的資産のふやし方』(アレックス・バナヤン著/東洋経済新報社)
『学びなおす力 新時代を勝ち抜く「理論とアート」』(石川康晴著/PHP研究所)
『ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力』(塩田元規著/幻冬舎)
『ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45』(鈴木祐著/SBクリエイティブ)
『時間革命 1秒もムダに生きるな』(堀江貴文著/朝日新聞出版)
『2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望』(落合陽一著/SBクリエイティブ)
『1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』(エリック・シュミット著/ダイヤモンド社)

 ではどんな傾向があっただろうか?

日本で売れるビジネス書の内容的な特徴から見る2019年の傾向

 日本で売れるビジネス書はだいたいパターン(大枠)は決まっている。人間のニーズは多様だが、それでも多くの人に共通するニーズをくくっていくと、そんなに種類はない。そういう数パターンの大枠に収まるもので、かつ時代に合ったものが、ヒット作になっていく。

 そういった内容的な特徴から2019年の傾向をざっくり見てみよう

1.成功術、脳・頭がよくなる、能率アップ。稼げる等のノウハウ系

 ビジネス書だから当然こういうものが多い。さらに細かく分けると以下になる。

『頭が冴える! 毎日が充実する! スゴい早起き』
『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』
『時間革命 1秒もムダに生きるな』
『ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45』

 このあたりは働き方改革の機運を反映した時間術・時短術、集中術。

『メモの魔力』
『学びなおす力 新時代を勝ち抜く「理論とアート」』
『紙1枚!独学法』

 このへんは先々の見通しの不透明さから来る学び直しブーム、勉強法的なもの。

『右脳思考』
『直感と論理をつなぐ思考法』
『ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力』

 このへんはよく言われる「これからの時代は感性や心、アートが大事」的な流れを汲んだもの。

『GACKTの勝ち方』
『1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』
『サードドア: 精神的資産のふやし方』
『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』
『人生は攻略できる』

 これらは著名人の成功譚、成功術、成功哲学系。エンタメ、ゲーム、IT系の成功者の本が目立つ。

『THE TEAM 5つの法則』
『OODA LOOP(ウーダループ)』

 これは定番のチーム、組織づくりもの最新版。

『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』

 これはコミュニケーション術、話し方もの。

 2.精神世界、死生観、スピリチュアル系


『心。』

 稲盛さんの本は比較的具体的なノウハウとスピってる部分が混在していますがこれはだいぶスピ寄り。

3.品格・説教・マウンティング系

『国家と教養』

 目線が高いところからの語りをありがたく拝聴したい人向けの本。

4.これからこうなる系

『2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望』
『イースタニゼーション』

 近未来に向けてのでかい話。

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