橘ケンチ、LDH JAPAN「SIO」として目指す社会貢献活動の新たな指針 エンタメで地域と“長期的につながる”大切さとは

橘ケンチ、SIOとして語る社会貢献の新指針

「ひとつの指針になっている」 岡田武史の挑戦し続ける姿勢

――各自治体との取り組みのほか、今は『EXILE CUP』も担当しているとのことですが、ケンチさんには『EXILE CUP』決勝大会の座談会にも、毎回参加していただいていて。ケンチさん自身は『EXILE CUP』に関わるようになって、もうどれぐらいになるのですか?

橘:『EXILE CUP』の正式な担当になってからは、今年で3回目です。『EXILE CUP』は、もともとLDHの情熱のある数人のメンバーが毎シーズン、社内で有志メンバーを募って、夏の風物詩みたいな感じでやっていて。

――始まった当初は、サッカーやフットサルが好きな社員やアーティストが、手弁当でやっているような小さい規模の大会でしたよね?

橘:そうなんです。そのときから僕も何回か参加させてもらったりはしたんですけど、コロナ禍を挟んで、組織としてもう少ししっかりした形でやっていこうということになって、ソーシャルイノベーション事業部が担当することになったんです。なので、そこからはできるだけ僕も各地の予選大会から参加するようにしていて……でも本当に、手前みそながら、『EXILE CUP』はすごく良い大会になりましたよね。よくぞここまで続けてきてくれたなって過去のスタッフたちには思いますし、それをよりブラッシュアップしていった形で、今後も引き続きやっていきたいなって思っています。

橘ケンチ

――『EXILE CUP』に関しては、大会アドバイザーを務めている岡田武史さんの存在も大きいというか、社会貢献と地域共生という意味でも、かなり刺激をもらっているんじゃないですか?

橘:岡田さんは、本当にすごいですよね。2014年に、当時まだ四国リーグだったFC今治のオーナーになって、今はJ2じゃないですか。で、2023年には、あんなに立派なスタジアムを建てて、しかもそれを『EXILE CUP』の決勝大会の会場として使わせてくれているっていう。そういう岡田さんの挑戦し続ける姿勢というのは、僕の中でもひとつの指針になっているかもしれないです。「岡田さん、今、どんなことを考えているんだろう?」って。

――さらに2024年からは、FC今治高校の学園長も務められていて。

橘:あの高校、すごいんですよ。僕も一回、HIROさんと一緒に来校させてもらったことがあるんですけど、生徒たちがすごくユニークで。普通の高校生とはちょっと違うというか、同じ教科書で勉強している感じではなく、自分たちで考えながら動いていく、それで何かを作っていくことが、当たり前になっているような感覚があって。「こんな高校に自分も行きたかったな」って、僕自身が思えるような高校だったんです。そういう画期的なことを、岡田さんは今治という場所から発信し続けていて。僕自身、自分が目指す地域共生みたいなものをいろいろと模索している中で、岡田さんの一連の活動というのは、ひとつのロールモデルとしてすごく注目させていただいています。

――岡田さんのやっていることって、どれも1年や2年では結果の出ないことばかりじゃないですか。そこが本当にすごいなっていう。

橘:そうですよね。ただ、僕も歳を重ねるにつれて、短期的なものにどんどん興味がなくなっていっているようなところがあって。不思議なもので、歳を取れば取るほど、長期的な目線で物事を見たくなってくるっていう(笑)。これまでいろいろなことをやってきて、本質的な価値を作るのは、やっぱりすぐにはできないことなんだっていうのがだんだんわかってきたのかもしれないです。すぐに結果を出そうとして失敗した人の末路みたいなものも、最近よく見るじゃないですか。

――パッと話題になって、すぐに消えてしまう人や物事が、最近特に多いような気がします。

橘:すごく移り変わりが速いですよね。だからこそ、じっくり腰を落ち着けてやらなければならないとは思っていて。もちろんそこには、ある程度の忍耐や粘りみたいなものが必要とされるんですけど、長期的な目線でいろいろなことをやりつつ、なおかつそれが、相互に良い効果や関係性をもたらしていくような……。

――それって、まさにLDH全体としての方針でもありますよね。

橘:そうですね(笑)。あともうひとつ、ソーシャルイノベーション事業部の役割として、LDHに所属しているメンバーも、みんな歳を重ねていくじゃないですか。20代、30代はいいけど、40代になったらキャリアチェンジとか働き方についても、やっぱり考えていかなければならないわけで。そのときに僕らの世代が、違った働き方をしていたら、「あ、こういうことができるんだな」って若い世代の道しるべになるじゃないですか。というか、そういうものになれたらいいなっていう思いも個人的にはあったりします。特にダンサーはいつか必ず終点が来ますから。

――ある意味、アスリートと同じというか、アスリートのセカンドキャリアじゃないですけど。

橘:だから今、自分たちが活躍できている頃から違った分野にも目を向けておくほうがいいよとは、若い世代と話すタイミングがあったら僕は必ず言うようにしていて。みんなそれぞれ出身地があるじゃないですか。郷土愛が強いメンバーもいたりして。そういう子たちは、地元との関係性をきっちり作っていったほうがいいよっていうアドバイスはしています。ソーシャル事業をやっている意味は、実はそこにもひとつあって。僕はたまたま福井市とご縁があったので、今いろいろな活動ができていますけど、若いうちから地元でもちゃんと活動して、自治体とも絡み、地域の企業さんとも関係性を作っておくとやっぱり強いじゃないですか。もちろん、そういうことに興味があるメンバーと、そうじゃないメンバーがいるんですけど、興味があるメンバーは僕らが全力で応援するっていう。そういう感じでやっています。

――ただ、ケンチさん自身は、福井市の出身というわけではなく……。

橘:まったくないですよね。今も、福井出身だと思われている節はあるんですけど(笑)、僕自身は横須賀市の出身で。TETSUYAと一緒に「横須賀盛り上げ大使」というのを、やらせてもらっていたりはするんですけど……。

――岡田さんも、今治出身というわけではなく……出身ではない人が、地域の人と一緒になって新しい「まちづくり」をするみたいなことが、最近ひとつのトレンドみたいになっていますよね?

橘:そうですね。最近、いろんな経営者の方々が、都会ではなく地方――それは必ずしも、自分の出身地ではなかったりするんですけど、ある地域の「まちづくり」に積極的に関わっていくようなことが結構多いですよね。というか、「まちづくり」ってやっぱりすごく面白いんですよ。地元の人はもちろん、そこに新しい人たちが入ってきて、一緒に少しずつ新しい「まち」を作っていって。それがだんだんできあがっていくのって、すごくやりがいのあることというか、ずっとやり続けられることじゃないですか。僕もいずれ、そういうことをやってみたいなってちょっと思っているところがあって。だから、そういった形で新しい「まちづくり」をしている地域があったらすぐ見に行きます。「ああ、こんな感じでやってるんだ」って。たとえば、富山県の東岩瀬という地域はそこで酒造をやっている桝田隆一郎さんという方が中心となって、交流のある料理人とか陶芸家、ガラス職人とかを呼び寄せて……今、めちゃくちゃ楽しい地域になっているんですよね。

――それこそ、JINSの創業者である田中仁さんが中心となってやられている群馬県の前橋市など、今、そういった形で新しい「まちづくり」をしようという試みが、全国各地ですごく増えていますよね。

橘:岡山県の岡山市も、ストライプインターナショナルの創業者である石川康晴さんが、いろいろと新しいまちづくりをしていて。あと、ちょうど最近『田村淳のTaMaRiBa』(テレビ東京系)という僕がレギュラー出演しているテレビ番組のロケで、鹿児島県の徳之島に行ったんですけど、徳之島も今、新しいことをいろいろとやろうとしていて。ぐるなびさんの社員の方が、実際に島に移り住んだりしながら、いろいろ準備しているところなんですよね。

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「自分がどうなっていくのか、すごく楽しみ」

――先ほど、いずれは「まちづくり」みたいな話が出ましたけど、ソーシャルイノベーション事業部としては今後、どのような活動をしていきたいと思っているのでしょう?

橘:やっぱり、全国各地の自治体さんとの動きは、引き続き推進していきたいなって思っています。ただ、自治体さんとLDHだけだとやれることが限られるので、これからはそれプラス地元の企業さんも絡めながら、その地域で、たとえば新しく会社を作る――「まちづくり」の会社を作るとか、地域に根差した事業活動を継続してやっていけるような仕組みというのを作っていけたらいいなって思っています。

橘ケンチ

――なるほど。では最後、ケンチさんのことをずっと追っているファンの方々にひと言お願いします。

橘:そうですね……なかなか理解してもらえないところもあるんですけど、「橘ケンチ、大人になってます」って感じでしょうか(笑)。

――(笑)。ただ、ケンチさんの場合、社会貢献とか地域ありきではなく、もともと日本酒に興味を持ったところから始まっているところが、ちょっと面白いなって思っていて。

橘:最初は、ただ日本酒が好きで、日本酒の酒蔵をめぐるために、日本全国、いろいろなところを回らせてもらったことから始まっていて。その中で、日本各地の魅力に僕自身が気づいていったところがあるんですよね。日本全国にある酒造って、もともとその地域の名士の方だったり、土地を持っている方が、ずっとやられてきたところが多くて。そこに行って話を聞くだけで、いろいろと勉強になるところがあって。それこそ土地の歴史から、地域の産業に至るまで。

――そもそもケンチさんは、そういった知的好奇心が旺盛というか、知ることに関して貪欲なんでしょうね。

橘:それはあるかもしれないです。好奇心だけは、年々上がっているというか、毎回毎回出会った人たちから、いろいろなことを教わっている感じなんですよね。だから、僕のファンの方々も、最初は「ケンチは、日本酒が好きなんだな」「だから、酒蔵めぐりをしてるんだな」という感じだったと思うんですけど、いつの間にかこういう形で、いろんなことにガッツリ関わるようになっていて(笑)。

 もちろん、踊れる限り、僕は踊るつもりではいるので、ファンの方々には引き続きそれを楽しんでいただきたいなって思っているんですけど、EXILEも今年25周年を迎えて――やっぱり、これだけ長いあいだやらせてもらっていると、ファンの方々も、ただステージ上でパフォーマンスしている姿を見ているだけではなく、メンバーそれぞれが何を考えて、どんな人生を歩んでいくのかみたいなことも楽しみにしていてくれるんじゃないかなって思っていて。むしろ、そうであってほしいなって、僕は思っているようなところがあるんですよね。

――EXILEのメンバーたちが、それぞれ今後どうなっていくのか、どんなふうに仕上がっていくのかっていうのは、ファンとしても楽しみなところなんじゃないですか?

橘:さっきの若手に対しての話と同じで、まさに僕らの世代が「どういうふうに仕上がっていくか」ですよね。ファンの方々には、それを引き続きお楽しみくださいというか、僕自身、自分がどうなっていくのか、すごく楽しみなところがあって。とりあえず今のところ、いい感じで仕上がってきているんじゃないかなって思っています(笑)。

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