Kroi「売れた先に行けるところがある」 『JUNGLE』ファイナル、飽くなき探究心と野望が示した新たなフェーズ

Kroi『JUNGLE』ツアーファイナルレポ

 クンビアのニュアンスを帯びたアフロビーツのセッションに始まり、本編の終わりも、アンコールの締めくくりも祝祭的なセッションーーツアータイトルの『JUNGLE』が意味するところが腑に落ちると同時に、それがただジャンルを指しているわけではないことも理解できた。音楽に対して破天荒さと誠実さを同時に注ぎ込むKroiというバンドが、さらにギアを上げて次のフェーズに突入したことを実感する、すごいライブだった。

 8月からスタートした『Kroi Live Tour 2026 “JUNGLE”』。全国6都市10公演を巡り、ワンマンと対バンを織り交ぜた今回のツアーでは、レキシ、iri、KIRINJI、東京スカパラダイスオーケストラを迎えた対バン公演も開催。そのフィードバックも携えながら進んできたツアーが、9月23日のZepp Haneda (TOKYO)でファイナルを迎えた。

既存曲を生まれ変わらせる飽くなきグルーヴの探究

 オープニングSEもなく、さらっと登場しただけで大歓声と拍手が起こる中、前出のアフロビーツのセッションでスタート。内田怜央(Vo)はボンゴやカウベル、長谷部悠生(Gt)もパーカッションを叩く祝祭的なスタートから、近いビート感の「Amber」、さらに「papaya」までをつなぐ。ブチ上げるというより、長い1曲のようなグルーヴを初っ端から作り出すバンドの胆力に唸らされる。

 アルバムツアーではないからこそ、さまざまな時期の曲が“今のKroiのグルーヴ”で1本筋を通せるのだ。「Fire Brain」でリズムチェンジすると、それまでゆらゆら揺れていたフロアが一気に爆発。鋭いラップからソウルフルなシャウトまで駆け上がる内田のボーカル、ファンクもロックも、時にインダストリアルなテクスチャーまで飲み込んだ演奏で、ライブ冒頭にも関わらず本編ラストかと見まごうほどの熱量だ。

『Kroi Live Tour 2026 “JUNGLE”』
内田怜央(Vo/Gt)

 後のMCで内田が「HPゼロになるまでやり尽くす」と言っていたが、まさにその言葉通り。オーガニックな「おなじだと」を挟んで、INCOGNITOのブルーイがプロデュースした「Kinetic」へ。アシッドジャズテイストが、長谷部と内田のツインギターによって洗練だけに収まらない抜き差しの面白さも届ける。

『Kroi Live Tour 2026 “JUNGLE”』
長谷部悠生(Gt)

 最初のセクションでアフロビーツという世界のトレンドをKroi流に料理してみせた後は、馴染みの「HORN」をエコーが効きまくったライブアレンジで届け、益田英知(Dr)のデッドなキック&スネアが最高に心地よい「a force」、全員の演奏の精度が上がることでミッドテンポの味わい深さが増した「Clay」へ。サルサビートにリアレンジされた「侵攻」では、スチールパンの音色のようなエフェクトが効いた内田のギターサウンドに惹きつけられる。だが、いわゆる“ワールドミュージック”的な体感ではなく、怪しさやサイケデリックなムードの中へサルサが換骨奪胎しているのが、なんともユニーク。真っ赤なライティングも、その異様な空気を増幅させていた。

『Kroi Live Tour 2026 “JUNGLE”』
益田英知(Dr)

 「メタな話だけど、ライブって(オーディエンスを含め)このメンツ含め、何ひとつ同じ日はないから、『あの時のライブ良かったな』って思ってもらえるように、今日はHPゼロになるまでやりたいです」と内田。素直に楽しさを追求する姿勢と鬼気迫るムードが同居しているのはいつも通りだが、この日は若干、後者のパーセンテージが高い。

 「Correction」では内田がハンドマイクで歌い、ダンサブルなタームに突入。千葉大樹(Key)のフュージョンライクでスペーシーなシンセも映え、その気配にミクスチャー的な圧も加わったライブアレンジの「Psychokinesis」が、巨大なアンサンブルの壁として迫ってくる。攻撃的なまでのグリーンのライトがフロアに向けて照射され、抽象度の高いリリックのイメージと音の壁に圧倒された。

『Kroi Live Tour 2026 “JUNGLE”』
千葉大樹(Key)

 何度も訪れるカタルシスの中でも、初期ナンバーが現在のライブアレンジで凄まじい進化を見せた「Finch」「Polyester」、そして「Pixie」のアコースティックアレンジへと続く流れには、もともとの楽曲の強さと、ライブ演奏で“今一番心地よいツボ”を探ることに飽くなき探究心を燃やすKroiらしさが存分に発揮されていた。

 個人的には「Polyester」から、サンプリングHIPHOPの名盤、DJ SHADOWの『Endtroducing…..』を想起。あちらはサンプリングだが、それを生音で再構築するようなセンスの冴えを感じたし、オリジナルからエフェクト要素を抜きつつ、フレージングとアンサンブルでスリルを醸し出す「Pixie」は、何度も小声で「何これ?」「わぁ」と漏らしていた気がする。去年のアコースティックツアーで再構築した成果でもあるのだろう。だが、バンドの自己満足じゃなく、フロアも前のめりでグルーヴに乗る景色は、まるでひとつの生き物のようだったのだ。そんな深みから、「risk」では内田がフロアに向かって両手を広げ、力強いファルセットのロングトーンを決め、感情の高低差にひたすらぶん回されていく。

『Kroi Live Tour 2026 “JUNGLE”』
関将典(Ba)

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