ふみの、曖昧を確信に変えられる音楽への想い 悩み涙した日々が“今ここで生きる”決意にーー1stアルバムで描いた人生

「満腹」「ロックスター」で歌った、信じるべきものへの葛藤と反発精神
ーー次の「どっちがいい?」も実体験がベースの曲でしょうか?
ふみの:これも実体験ですね。私と同じくらい優柔不断な友達がいて(笑)、その子と原宿を歩いている時に、「ご飯に行くか、クレープを食べるか」でまず30分くらい一緒に悩み、悩んだ末にクレープに決めたんです。でも原宿ってクレープ屋さんもたくさんあるじゃないですか。「で、どっちのクレープ屋さんがいいの?」ってなるんですけど、相手も私も絶対に自分から決めたくないタイプで、そこからまた30分くらい悩む……っていうのがいい思い出で(笑)。それを楽曲のテーマにしました。
ーーそこからだったんですね(笑)。てっきり恋愛の駆け引きの曲かと思ってました。
ふみの:パートナーに置き換えても聴いてもらえると思います。たとえば、男女のパートナーだとしたら、気を遣ってなんでも彼女に合わせちゃう彼氏、みたいな歌にも聴こえますよね。「そっちが決めてよ!」って少し怒っている女の子と、決められない気弱な男の子のストーリーとしてもいいなって。
ーー言われてみれば、ふみのさんって優柔不断を歌った曲が多いですよね。
ふみの:多いです! “もし”とか“かも”みたいに、曖昧な言葉をつい使っちゃいます。「どっちがいい?」に関して言うと、相手は私が選んだものに合わせて「いいね!」と言ってくれるだろうけど、一緒に食べている時、「本当はあっちがよかったんじゃないかな……」って気になってしまうから、私が選ぶのは嫌なんです。相手が好きなものなら私は100%それに合わせられるから、選んでほしいんですよね。
ーーでも、「どっちがいい?」に出てくるお友達もきっと似た性格なわけですよね。
ふみの:はい、そうなんです。だからその子と2人きりだと本当に決まらなくて(苦笑)。

ーー(笑)。そしてアルバム後半に向けてさらに聴き応えが増していきますが、個人的には「満腹」から「ロックスター」への流れがすごく好きで。
ふみの:(頷く)
ーー頷かれてますね。
ふみの:はい、私も好きです! 「満腹」で何を信じればいいかわからなくなった時に、次の「ロックスター」で「自分を信じなきゃいけない!」と歌っている流れなので。
ーーそれ、めっちゃ感じてました!
ふみの:嬉しい! 気づいてくださって。
ーー「満腹」は出だしの〈どこまで/足を進めても/変わるのは景色で/僕だけ残ってる〉から一気に引き込まれましたが、どんなきっかけで生まれた曲ですか。
ふみの:これはデビュー後の葛藤を描いた曲ですね。デビューして周りの環境がガラッと変わって、見えている景色もやっていることも全部変わったはずなのに、なんか自分自身がまったく変われていないことに悩んでいた時期があって。今思えば、自分の軸がちゃんとあるってことだから、ポジティブな面でもあると思うんですけど。デビューは思い描いていた夢だったからこそ、「もっと大きな変化があるはずだ」と思い込んでいたので、当時はそのギャップにやられてましたね。「私は何もしていないんじゃないか」とすら思っていたので。
ーー「このままじゃ意外と何も変わらないかも。ヤバいぞ」みたいな?
ふみの:そうです。新学期になって学年が変わった時とかにも、そういうことありますよね。高校卒業のタイミングだったこともあって、周りの友達は大学生になって、少しずつ変わっていくのも見ていてわかったんですけど、「私は果たして何か変わったのかな?」「一体何をやってるんだろう?」みたいな悩みから生まれた歌でした。
ーーでも、きっと周りから見たら、ふみのさんはデビューして輝いてる存在に見えてるはずですからね。
ふみの:そうですね……ないものねだりというか、みんな同じように思っているのかもしれないですよね。私も焦りや孤独を感じて、「変われないのは頑張っていないからなんじゃないか」みたいなことも思いましたし。本当はそんなことないはずなのになって。
ーーそんな楽曲に「満腹」って、ちょっと可愛らしいギャップのあるタイトルにも思えました。
ふみの:「食事は腹八分目が一番気持ちよくて幸せで、満腹まで食べてしまうと後味悪くて後悔する」ってよく言うじゃないですか。なのに、なぜかまだ食べたくなる衝動に駆られてしまう感じが、よくわからないままなんとなく進んでしまう感覚と重なるなと思ったので、このタイトルをつけました。
ーー少しずつ〈貴方〉のほうへ近づいていく展開にしたのは、どうしてなんでしょう?
ふみの:聴き終わった後に、「もう一歩踏み出したい」ってちゃんと思える曲にしたくて。“貴方に優しくされるのが逆に辛い”っていうニュアンスの歌詞があるんですけど、その優しさを素直に信じて受け入れることができたら、この悩みがちっぽけになるんじゃないかなと思ったので、そんな気持ちを込めました。

ーーある意味「White lie」とも似ていますよね。実際、誰かからかけられる優しい言葉を受け止められない経験もデビュー後はあったんでしょうか。
ふみの:誰かの言葉で悩むというよりは、親友と喋ってる時に「ふみのって頑張ったことあるの? 頑張ったことなくない?」みたいなことを言われて、「確かに……」と思ったことがあって(笑)。でも、私とその親友はめっちゃ似てるので、その子に対しても「え、逆に頑張ったことある?」って聞いたら「うーん……ないな」みたいになって、2人で一緒にめっちゃ悩んだんです。「頑張ってはいるんだろうけど、自分に満足してないのかもね」みたいな議論をして、そこから書けた歌詞でもありました。私より私のことをわかってる理解者だなって思うので、その親友と喋ってて気づくことも多いです。
ーーからの「ロックスター」は、まさに同じ人間の中にあるもう一つの感情だなって思ったんですけど、どんな風に生まれた楽曲ですか。
ふみの:周りから求められている理想像に向かうべきなのか、あるいは自分がやりたいことをやるべきなのか。でも、やりたいことをやってるだけで聴いてくれる人はいるのだろうか……みたいなことを考えながら、反発精神で書いた曲ですね。「私がロックスターだ!」っていう堂々とした気持ちよりは、「ロックスターになりきりたい」「自分を信じて自由に生きたいよね」みたいな感じ。いろんな意見があるし、いろんなことを言われるじゃないですか、このご時世。でも誰かの一つの言葉で悩むより、「自分は自分の人生に必死になって生きていればいいんじゃない?」って歌ってる曲です。
ーーすごく大事なマインドだと思います。まだなれていないけど、言っちゃったもん勝ちだぜっていう、いい勢いもありますよね。
ふみの:そうですね。完全に周りを無視して「誰の意見も耳に入れない!」なんてことはできないし、そこが〈こんなことも続けば/評価されないと不安になるよ〉に出ちゃってるんですけど、「それでもやりきります!」っていう想いで歌ってます。デビューして、いろんな評価や意見をいただく側になったからこそ考えられたことなのかなって。
ーーちなみに、ふみのさんにとってロックスターは具体的にいるんですか。
ふみの:この曲を書いた時は特定の誰かを思い浮かべていたわけではなく、ギター抱えて頭を振っている人をぼんやり想像していただけで(笑)。でも、今聞かれて思ったのは、ジャンルは必ずしもロックではないと思うんですけど、あいみょんさんですね。「生きていたんだよな」っていう曲を聴いた時に、すごく重いテーマを歌っているし、歌詞の内容や表現の仕方も他の人とは違っていて、きっとリリースする時に勇気がいる曲だったんじゃないかなって思ったんです。それでも「こうだ!」っていう表現を曲げないじゃないですか。そこがかっこよくて。生々しくて自由な表現というのは、すごく刺激をもらえますね。


















