「今めっちゃバンドやってる」 Chilli Beans.、アルバム『HONESTY』までの道のりで手に入れた偽りなき自由
Chilli Beans.が約3年ぶりのフルアルバムをリリースした。『HONESTY』=「正直さ」と題された今作が伝えるのは、音や言葉を通してこれまで以上に素直に、自由に、自分たち自身を表現している姿だ。振り返れば今作に至る道のりの中で、彼女たちはさまざまなアーティストやスタッフと出会い、新たな挑戦を込めてライブやリリースを重ねてきた。そのすべての経験が、このアルバムには活きている。誰かに決められた「チリビらしさ」ではなく、今自分たちが感じていることをそのまま楽曲として鳴らせば、それがリアルタイムのチリビになる――そんな「気づき」があるから、このアルバムの3人はさまざまな感情を溢れかえらせながら、とても楽しそうだ。アルバムのこと、そしてそのアルバムを携えて周るツアーのこと。Moni(Vo)、Maika(Ba/Vo)、Lily(Gt/Vo)が感じている手応えをぜひ受け取ってほしい。(小川智宏)
ここ1年のチリビは「開国した感じがある」
――ここ1年くらい、リリースもいっぱいあったし、タイアップもいっぱいやってきたけど、そのなかでバンドとしての変化みたいなものは感じますか?
Moni:えっと……自由になった。より自分の好きなものを貫いて、それをパーンと出してる感じ。ライブのノリとかもより自由になって、楽しいし、勢いついた感じがする。しない?
Maika:する。
――昨年はビルボードライブもありましたけど、あれはどうだった?
Maika:ああ、あれはすごい挑戦だったんじゃない?
Lily:同期なしで全曲やるっていうのが初めてだったから、超楽しかった。
Moni:もう1回やりたい。
Lily:すごく自由だなって感じました。同期がないことで、自分のプレイとかも含めて自由に演奏できて楽しかった。ハモリとかも、みんなの声がすごくダイレクトに聞こえたりとかして。「音楽ってやっぱりこういうのだよな」って思ったりもしました。
Maika:本当に超ライブだった。
Moni:ステージと客席も近かったしね。
――WurtS、PEOPLE 1との共催3マンイベント『UPDATE』も去年、今年と2年やってきていますけど、ああいうのも新鮮だなと思って見てました。
Maika:2組とも活動を始めた時期も似ているし、コロナ禍で一生懸命曲を作ってコロナが明けて活動が本格化したところも一緒だし、活動してきた界隈が近かったのか、会う機会もあって。『UPDATE』は発起人がWurtSくんなんですけど、WurtSくんはMoniともフィーチャリングの楽曲をやっているし、ピポワンともフィーチャリングの楽曲をやってるしっていうところもあって、自然と声をかけてくれたんですよね。
Lily:仲間って感じがする。
Maika:肩組んでる感じがするよね。今年コラボして楽曲(「Feel like slowing down feat. WurtS, Deu, Ito, Takeuchi」)」を出したんですけど、チリビがいろいろディレクションしながらレコーディングしたのもめちゃくちゃ楽しくて。バンドごとの色がすごく濃くて、「バンドってさまざまや」と思いながら。それもおもしろかったです。
――『good days tour』でもNEE、礼賛、muqueというかなり個性的なバンドと対バンしたりもしたし、そういうバンド対バンドみたいな向き合い方をする場面も増えている感じがしますね。
Moni:毎公演すごくグッときちゃって。本当にgood daysで、みんな本当にかっこいいなって思いました。アーティストが自分たちの音も仲間も信じてそこに立ってるっていうことがすごくかっこよかった。それをすごく感じたツアーでした。尊敬できる人たちとコミュニケーションが取れて、感化されました。音楽って、人の心を救ったり、勇気づけたり、ちゃんとそういう力があるんだなって改めて感じた、すごくいいツアーと出会いでした。
――その発見もそうだけど、生音だけでライブをやるとか、3組で企画をやるとか、対バンツアーをやるとか、すごくバンドっぽい動きをしてるなと思って。
Maika:「あのチリビが」? 確かにすぎる! 鎖国してたもんね(笑)。
Moni:そう、それがあった。
Maika:開国した感じ、あるよね。
Moni:確かに。この2年ぐらいで。前は孤立してたもんね。
Maika:EP『the outside wind』のときも話してたけど、なんかちょっと風が吹いたな、みたいな感じはあった。
Lily:外に向けて開いたみたいな。
Maika:ずっと自分たちの内側を知るための時間だったとしたら、やっと「こんにちは」ってしてる感覚はあります……遅っ!(笑)。
Moni:引きこもってたから。
「(曲が)自分だけのものじゃなくなった」
――去年リリースした『the outside wind』という作品は本当にそういう感じだったというか、開放的だし、すごく風通しがいい感じがあったけど、今回の『HONESTY』はまたそれとはちょっと違うところにいっているじゃないですか。その辺の流れはどういうものだったんですか?
Maika:チリビとして新たな環境になったんですよ。
Moni:インディーズになったりとか、関わってくれるスタッフの人が変わったり、レコーディングの仕方とかも変わったんだよね。
Maika:でも『the outside wind』を経ての今っていう感じはめっちゃあって。「バンドしてる」っておっしゃってくれましたけど、本当にそこでできてきたグルーヴだったり、チリビとしての音の鳴らし方みたいなものを今回はそのまま入れられた感覚があるんです。新しい刺激もあったし、今回「よーいどん」で楽器隊を録ったりしたんですよ。今まではデモに忠実に、ドラム、ベース、ギターを重ねていくやり方だったんですけど、今回から新しいディレクターさんに入ってもらったりしながら、どういうふうに録るのがおもしろいだろうっていう話をしながらやっていって。みんなで本当に細かいところまで話したりしながら作って、今までと違う録り音へのこだわり方ができました。それこそビルボードの経験も響いてると思う。
Lily:本当にそう思う。
Maika:グルーヴがちょっとよれてても、バンドとしての空気が最高だからそれでよかったり。そういう変化がめっちゃいっぱいありましたね。
――このアルバム、すごくバンド感、生感があるし、それによって曲のテーマや歌詞の生き物感、人間性みたいなのがより伝わるようなものになりましたよね。よりエモーショナルな音になった気がする。Lilyさんはそうやって新しい作り方をしてみてどうでした?
Lily:ほんとにライブしてるみたいな感覚で、そのときの自分の気持ちとかが全部プレイに出ているし、うまくできなかったところを気にするんじゃなくて、もっと全体で「これかっこいい」みたいなことを判断できて、それが心地よかった。
Maika:わかるわかる。再現性っていう話でいうと、今まではレコーディングのときに「デモを超えられない」みたいな話をよくしていたんです。デモの姿を追い求めているから「いや、結局デモの方がよかったよね」みたいな話になることが結構あって。でも今回はそこを優に超えていったというか。
Moni:その自由さがすごくいい。「今」みたいな。
Maika:なんならその場でちょっとずつアレンジを変えていったりもしたし、デモは生ドラムじゃないから、生ドラムで叩いてもらったときに出てきたアイデアをその場で入れてみたり。
Lily:曲の尺も「ここはなくていい」とかね。
Maika:そうそう、削ろうとか半分にしようとか、ここはちょっとビルドアップしようとか、その場でやっていって。すごく楽しかった。
Lily:だからスリリングでした。「どうなるかな、今日のレコーディング」みたいな感じだった。
Maika:毎回半ばわからず行ってた。
Lily:ちょっと不安な気持ちもあったし。
Maika:でもよーいどんでやったら「いえーい、OK!」っていう。
――じゃあ、デモで曲を作っていたときと、実際にできあがったアルバムの印象は結構変わっている?
Lily:だいぶ。なんか、広くなった。音の広がりとかスケール感みたいなものがすごく広がった感じになったと思います。
Moni:広い、でかい。
Lily:自分だけのものじゃなくなった感じがある。バンドの曲としてデモからちゃんと成長している感じがした。
Moni:そう、みんなの力って感じがする。
Moniが嬉しかった「かわいさはいらない」の言葉
――そういうマインドの変化に伴って、歌詞で歌うことも変わってきた感じがするんです。「breath」とか、Moniさんがこんなに自分自身を曝け出した曲ってなかった気がして。あのあたりから何か変化が起きていたのかなと思ったんですよ。
Moni:「breath」はドラマのタイアップ(NHK土曜ドラマ『ムショラン三ツ星』主題歌)で作った曲なんですけど、そのときにドラマチームの方たちから「キュートさとかかわいさは一切いらない。シビアさと、生きる力強さがほしい」と言われたんです。それがすごく嬉しかったし、台本を読んでもすごく感動して、とにかくドラマと一緒に、話をどう音で伝えられるのかを考えて作った曲なんです。そしたらすんなりできて。「こうかな?」とかじゃなくて「これ!」みたいな感じなのがわかった。もう「自分が書くのはこれだ」みたいな。試行錯誤っていうよりは、パッとインスピレーションを受けて作りました。
――それはドラマのテーマと自分にリンクする部分があるなって感じだったってこと?
Moni:うん。台本を見て自分が思ったこと、自分も重ねたりした言葉が自然に出てきた感じでした。自分の気持ちをただ言ったとかじゃないから、新鮮に感じてもらえたのかな。
――「かわいさはいらない」って言われて嬉しかったっていうのは、どういうこと? もともとそういう表現がやりたかったっていうことなんですか?
Moni:うん。そういう暗い……ただ暗いわけじゃなくて、人生のシビアな部分、みんなが言わなかったりする部分を初めて書いてって頼まれたというか、できるって思ってくれたのがすごく嬉しかったし、そういうこともいつも感じているから。
――その手応えがこの『HONESTY』につながっている気がしますよね。今までだったら言わないでおこうと思っていたこともちゃんと歌詞にできているというか。
Moni:今回、歌詞はみんな書いてるんですけど、みんなも自分たちが今ポンって言いたいことを言ってる感じの歌詞が多いし。でも「アコースティックじゃ世界は救えない」とかはすごく前にできた曲で、それをそのままやってるし……。
Maika:「今のマインドだからこの曲を入れよう」って選んだ曲たちも意外とあるような気がする。「princess」とかも、今だからやれるって思ったかもしれないし。
――「princess」も結構前からある曲なんですか?
Maika:超初期。
Lily:「This Way」とかのときに作ってた曲だから。
Maika:「This Way」のリフを作ったときに一緒に作っていた曲で、だからよく聴いたら似てるんですけど。6年前とかの曲ですかね。でも当時だったら形にならなかったと思う。形にできるだけの地力もなかったし。この曲の面白みは今だから出せた感じがする。そういうマインドで選んだ曲たちが多いから、結果的にバンドとして今までとは違う部分も外に出していっているように聞こえるのかもしれないです。
――今までアルバムを作るときはわりとテーマとかコンセプトがはっきりしていたじゃないですか。今回はそれとは違う?
Maika:「ライブで盛り上がる曲がいっぱい入ってるといいね」とか「よりバンドっぽい曲をいっぱい入れたいよね」ぐらい。その他にテーマがあったわけではないね。
Moni:そうそう。
Maika:大枠だけ決めて。初めてインディーで出すって言うのもあったから、余計に自分たちの思いに忠実に、みたいなところはあったかも。
――なるほどね。バンドやってるね、やっぱり。
Maika:うん、今めっちゃバンドやってる。もともとずっとバンドやってるけど(笑)。
Moni:確かに、今まではパーソナリティというか、パーソナルな繊細な部分を守りすぎてた。だけどそこから、ライブで楽しい、かっこいい、それでいいじゃん! ってなったよね。繊細な気持ちを解放した感じがする。
Maika:勢いづいたってのはそういうことなんじゃない?
Moni:そうかもね。
Maika:楽しいじゃん、かっけえ、OK、最高! みたいな。