歌声分析 Vol.22:Penthouse 2つの声が魅せる高い可変性、浪岡真太郎と大島真帆が支える洗練されたポップス
歌声分析
アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。声をひとつの“楽器”として捉え、音楽表現にどのような輪郭を与えているのかを掘り下げていく本連載では、技術的な視点からさまざまなアーティストの歌声を紐解いていく。
第22回目は、6人組ツインリードボーカルバンド・Penthouseを取り上げたい。
洗練されたサウンドと重なるツインボーカルの可変性
今年3月、自身初となる日本武道館単独公演『Penthouse ONE MAN LIVE in 日本武道館 “By The Fireplace”』をソールドアウトさせたPenthouse。7月には約1年9カ月ぶりとなる3rdアルバム『Neon Garden』をリリースし、10月からはバンド初のライブハウスツアー『Penthouse ONE MAN LIVE HOUSE TOUR 2026 “Blinking Gate”』を開催予定だ。さらに12月には東名阪ホールツアー『Penthouse ONE MAN LIVE TOUR 2026 “Neon Garden”』が控え、12月17日には東京ガーデンシアターのステージに立つ。
ファンク、ジャズ、アシッドジャズ、ソウル、R&Bなどをルーツに持つ洗練されたサウンドと、ポップスとしての親しみやすさを兼ね備えたPenthouseのシンボルのひとつが、浪岡真太郎(Vo/Gt)と大島真帆(Vo)による男女ツインボーカルだ。両者とも、豊かな声量、広いレンジ、安定したピッチを携え、“パワフル”と称されることも多い。
浪岡の声には、厚みと柔らかなざらつきがある。対して大島は、濁りのない抜けのいい歌声を持ち味とする。ときには一歩も引かずに歌声をぶつけ合い、ときにはツインボーカルであることを忘れるほどニュアンスを近づける。2人の歌声の距離を楽曲によって自在に変えられる――この可変性こそが、Penthouseの大きな武器になっているのだ。
本稿では代表曲や最新楽曲をピックアップしながら、浪岡、大島、それぞれの歌声の魅力について考察していきたい。
まずは、「一二三」(2026年)を取り上げたい。この曲で繰り広げられるのは、浪岡と大島によるボーカリストとしての実力のぶつかり合いだ。浪岡が力強くフレーズを繰り出せば、大島も一歩も引かずに返す。こうしたスリリングなボーカルの応酬は、Penthouseの楽曲でたびたび聴くことができる。また2人は、声をぶつけ合うことはあっても、そのグルーヴのあり方がぶつかることはない。むしろ浪岡が押せば大島が押し返す、逆も然りだ。その掛け合いによって熱量が増し、楽曲そのものを力強く加速させていく。
彼らの認知度を広めた「…恋に落ちたら」(2021年)では、2人とも子音のアタックを柔らかくし、母音や語尾も丁寧に処理しながら、包容力ある歌唱で包み込んでいく。浪岡から大島へ、大島から浪岡へと主旋律が渡っても、歌い手が交代した違和感がほとんど生まれない。〈何気なく観るNetflixも〉(浪岡)、〈味気なく映り始めた日々に〉(大島)というパートでは、同じメロディを大島がファルセットで歌っており、声の違いがはっきりわかるが、歌のテンションは変わらない。
同じブロックの〈大人のフリが板につくほどに〉では美しいハーモニーを聴かせるが、言葉の入りのタイミング、母音を抜くタイミング、声圧のピークのタイミングが一致している点に驚く。また、バンドアンサンブルを邪魔することなく、響きの奥行きとして2人のハーモニーを置いているところも、彼ららしい。
ここからは、浪岡と大島、それぞれの歌唱に焦点を当ててみたい。