『TIF』特別協賛 にしたんクリニック 西村誠司社長が語る、アイドルビジネスと推し活の本質「ベースはやっぱりお客さま」

 2010年より開催されている世界最大のアイドルフェスティバル『TOKYO IDOL FESTIVAL』(以下、『TIF』)。2022年から本イベントにメインスポンサーとして参画し、アイドルカルチャーを支え続けているのが「にしたんクリニック」だ。一見、アイドルのファン層とは関連性が薄そうな組み合わせだが、この取り組みの起点には、「にしたんクリニック」をはじめ、「イモトのWiFi」など複数の事業を手掛ける、エクスコムグローバル株式会社 代表取締役社長 西村誠司のアイドルカルチャーに対する強い想いがあった。

 リアルサウンドでは、そんな西村に『TIF』の協賛へと至るアイドルカルチャーとの関わりについてインタビュー。その出会いから受けた衝撃、ビジネスとして捉えるアイドル運営、マーケティング視点で見た“推し活”など、西村ならではの観点から語ってもらった。(編集部)

フレンチ・キスから始まった“アイドルカルチャー”との出会い

――にしたんクリニックが『supported by にしたんクリニック』と銘打って『TIF』を支援しはじめたのが2022年のことでした。

西村誠司(以下、西村):今年で5年目になります。にしたんクリニックの名前がデカデカと出ていることもあって、5年も続けていると、なかには「『TIF』は西村がやっている」と思っている人もいるみたいで(笑)。

――それくらい、コロナ禍以降の『TIF』にとって大きな存在であると、アイドルファンは認識しているのだと思いますよ。そもそも西村さんがアイドルカルチャーに関わるようになったのは、どういう経緯だったんですか?

西村:過去にAKB48の派生ユニットでフレンチ・キス(柏木由紀/倉持明日香/高城亜樹)というグループがいたじゃないですか。僕は(「イモトのWiFi」のCMに出演する)イモトアヤコさんとの兼ね合いで、ワタナベエンターテインメントと関わりが深かったんです。その流れで、同じ事務所所属のフレンチ・キスも応援することになって、『フレンチ・キスのキス旅』(テレビ東京系/ファミリー劇場)という旅番組をスポンサーすることになった。そのあと、フレンチ・キスは解散することになったんですが、2015年11月にさいたまスーパーアリーナで開催された解散ライブが、僕が初めて足を運んだアイドルグループのライブでした。

フレンチ・キス / 「French Kiss Live ~LAST KISS~」DVD告知用動画

 そこで、アイドルファンの皆さんの姿を初めて目にして……これは僕の想像なんですが、普段は学校や会社で嫌なことがあるかもしれない皆さんが、ライブ会場のなかではすごく輝いているんですね。その瞬間、「日々つらいことがあっても、この瞬間だけは忘れられる。アイドルの存在は社会に対してこんなに役に立っているんだ」「多くの人の生活を支えているんだ」と気づいて、すごく感動したんです。それをきっかけに、ワタナベエンターテインメントが手掛ける男性アイドルも支援することになり、現在に至る。なので、きっかけはフレンチ・キスの3人なんです。

――では、ご自身が関わる以前はアイドルに対してどんなイメージを持っていましたか?

西村:言葉を選ばずに言うと、そんなに社会に役に立っているイメージが湧かなかったといいますか。それが、ライブ会場でファンの皆さんを見るにつれ、「アイドルはファンの人たちの支えになる存在なんだ」と考えが変わり、アイドルの成長が彼らのやりがい、生きがいにも繋がっていることにも気づいた。ライブを観たことは、僕のアイドルに対する深い思いが芽生える大きな経験になりました。その原体験があったから、コロナ禍になって「『TIF』の存続が難しいかもしれない」と主催のフジテレビさんから相談を受けたときに、アイドルに支えられているファンの人たちの夢や希望をなくしちゃいけないと思い、スポンサーとして協賛することで存続させようと動いたんです。過去のいろんな経験がなかったら、こういう未来はなかったと思います。

――アイドルファンはもちろんですが、アイドルの皆さんの思いを途絶えさせないという意味でも、西村さんのアクションはすごく大きな意味があると思います。

西村:今はアイドルフェスや大きなイベントもいろいろありますが、そのなかでも『TIF』ってアイドルの子たちの最大の目標となる存在じゃないですか。野球で言ったら甲子園みたいなものですよね。その甲子園がなくなってしまうと考えたら、シーンにとっても良くないなと思ったんです。

――これまでアイドルカルチャーを見てきたなかで、衝撃を受けたトピックも多々あったんじゃないでしょうか。

西村:いちばん印象的だったのは、地方への遠征ですね。北海道や九州、沖縄へ遠征する人もいれば、なかには海外まで追いかける人もいる。あの熱量には驚かされました。でも、僕がフレンチ・キスを通してアイドルカルチャーに出会った頃と比べると、今はまたちょっと違いますよね。SNSが主流になってきたからこそ、アイドルの売れ方自体が大きく変わりましたし。

「絶対に誠実に向き合わなきゃいけない」――会社経営とアイドルの共通点

――特にコロナ禍以降は配信ライブも主流になり、遠方に足を運ぶことなく多くの人が応援することができるようになりました。では、いろんなエンタメがあるなかでアイドル文化特有だな、独特だなと思う場面や出来事に関してはいかがですか?

西村:僭越ながら、僕も自分のファンミーティングみたいなことをやったりするんですが、来ていただいた数十人の方に対してエネルギーをもって対応しています。でも、アイドルの皆さんの場合は日々の握手会や特典会で1日に数百人、1000人以上ものファンの方々と接するわけで、本当に大変な職種だなと思います。今はそれだけ競争が激しくなったことも大きいんでしょうけれど、その結果ファンとの関わりのなかで病んでやめる人も多いじゃないですか。そういう過酷な世界に身を置いているところも、アイドルカルチャーの独特な一面なんじゃないかなと思います。

――成長過程を見せるところも、アイドル活動としてのひとつの面白みであると同時に、残酷な一面でもありますよね。

西村:物販とか特典会の列の長さがメンバーによって違うのも、弱肉強食だなと思いますもん。そういう意味では、プロデューサーや運営がいかに優れているかも大きいですよね。衣装や楽曲のチョイスにせよ演出にせよ、結局そこをすべて運営が仕切るわけで、グループによっては「メンバーがあんなに頑張っているのに、かわいそうだな」と思う瞬間もありますし。僕がAKB48を応援しているのって、メンバーはもちろんですけど、運営しているDHという会社の社長をはじめスタッフの人たちも好きだから。こういうところは、ほかのグループの運営会社にもヒントになると思いますし、アイドルに限らずどんな企業でも同じだと思いますよ。

――AKB48は20年にわたる歴史があり、そこで蓄積してきたいろんなノウハウもある。そういうグループから、西村さんが受ける刺激もあるわけですよね。

西村:そうですね。なにより、AKB48っていう名前は日本中のほぼ誰もが知っているわけじゃないですか。そこには20年の歴史だとか重みだとか、そういった事実が醸し出す威厳みたいなものもありますし、今のメンバーは先輩から引き継いだ歴史を途絶えさせてはいけない、さらに磨きをかけていかなきゃいけないという責任感も担っている。今のメンバーが頑張っている姿からたくさん刺激を受けるんです。

――ちょっと経営的な視点でもお話を伺いたいのですが、組織運営や会社経営とアイドルの共通点についてどのようにお考えですか?

西村:事業法人とアイドルも一緒だと思いますよ。要は、どういうバランスをとりながら適材適所に配置していくか。リーダー的な人もいれば、ちょっと抜けたような人もいたりだとか、パズルじゃないけど、どう組み立てていくかに関しては一緒じゃないかなと思います。

――西村さんは立場的に言えば、アイドルでいうところの運営側になるわけですが、数歩先を予測して動かないといけないわけですよね。

西村:そうですね。結局はアイドルにとってはファン、我々で言ったらお客さまじゃないですかね。お客さまとどう目線を合わせていくか、未来を創造できる何かをまず示したうえで、その夢を共有していくことは、我々が社内の従業員に対して「今が悪くても、将来きっと良くなる」と意思を共有するのと一緒。そこに向けて力を合わせてやっていくのは、会社もアイドルも、それこそ国の政治も一緒だと思いますよ。

――お客さんの声をどこまで反映していくかも、重要になってきますよね。

西村:わかります。僕ね、ベースはやっぱりお客さまだと思うんですよ。それこそ、僕のところにもアイドルファンの方々から「社長、『TIF』のここを改善してほしい」という要望がくるんですが、僕はその声を真摯に聞くようにしていて。ときどき、『TIF』の運営にそういった要望を伝えることもありますし。僕らの本業だって一緒ですよ。過剰な要求もあったりするけど、そこもやっぱりお客さま目線でしっかり向き合っていくことが大事じゃないかなと思います。

――お客さんに対して、いかに誠実に向き合うか。

西村:だって、こんなにアイドルグループがたくさんいて、同じグループ内にも複数人のメンバーがいるなかで、自分の推しになってくれるなんて、本当にスペシャルなことじゃないですか。絶対に誠実に向き合わなきゃいけないですよ。僕からアイドルの子たちにアドバイスできることがあるとすれば、絶対にそこですよね。日々こなしているだけだと、ただの作業になってしまう。一人ひとりと丁寧に向き合っていくことは、アイドルだろうが普通の事業だろうが、全部一緒じゃないですかね。

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