歌声分析 Vol.20:BE:FIRST 全員がメインボーカルーーパフォーマンスを支える歌の進化、感情を繋ぐ表現の成熟

歌声分析

 アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。声をひとつの“楽器”として捉え、音楽表現にどのような輪郭を与えているのかを掘り下げていく本連載では、技術的な視点からさまざまなアーティストの歌声を紐解いていく。

 第20回目は、ダンス&ボーカルグループ・BE:FIRSTを取り上げたい。

ライブを重ねるごとに磨かれてきた歌声

 2026年11月にデビュー5周年を迎えるBE:FIRST。その勢いはとどまることを知らない。最近も、世界的アーティストであるジャネット・ジャクソンとの共演を果たしたことが話題になったばかりだ。この夏には『SUMMER SONIC 2026』への出演、9月には初のグローバルEP『WATCH ME』のリリースも決定しており、国内外を問わず、その存在感はさらに大きなものとなっている。

 彼らの魅力として真っ先に挙げられるのは、パフォーマンスだろう。ラップ、歌、ダンスを高いレベルで融合させたステージは、日本のダンス&ボーカルグループの中でも屈指の完成度を誇る。

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 一方で、筆者が近年のBE:FIRSTを見ていて強く感じるのは、そのライブの完成度を支えているのは“歌声”だということだ。デビュー以降、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』をはじめとする大型ロックフェスへも積極的に出演し、多様な観客の前でライブを重ねるなかで、彼らはボーカリストとしても確かな進化を遂げてきた。激しいパフォーマンスの中でも揺るがない歌声、そしてメンバー一人ひとりの個性を活かしながらひとつの作品としてまとめ上げるマイクリレーは、ライブを重ねるごとに磨かれてきた。

 だからこそ、BE:FIRSTを“ダンス&ボーカルグループ”ではなく、“ボーカルグループ”という視点から捉え直してみたい。今回は「THE FIRST TAKE」で披露された歌唱も交えながら、その表現がどのように成熟してきたのかをたどっていきたい。

 その現在地を最も鮮やかに映し出しているのが、「Missing」である。特徴的なのは、それぞれ異なる歌い方、異なる声質を持ちながら、楽曲の中で描かれる主人公の人物像は変わらないこと。そこに彼らのボーカリストとしての進化を感じる。デビュー当時のBE:FIRSTは、ボーカルが変わると、歌自体のキャラクターが変わること自体がひとつの個性でもあった。それぞれの持ち味が輝き、「次は誰が歌うのか」という期待感も、このグループならではの聴きどころだったと思う。しかし「Missing」では、主人公が抱える迷いや切なさを、6人が代わる代わるセンターボーカルを担いながら歌い渡していく。感情を引き継ぎながら、人物を立体的に描いていくボーカルリレーなのである。だから耳に残るのは、「誰が歌っているか」ではなく「主人公が今、何を感じているのか」だ。

BE:FIRST / Missing -Music Video- (Move ver.)

「I Want You Back」「Bye-Good-Bye」……「TFT」に滲むメンバーの実力

 では、この表現力はどのように育まれてきたのだろうか。

 その答えを知る手がかりとなるのが、「THE FIRST TAKE」で披露したThe Jackson 5「I Want You Back」のリメイクカバーである。本曲は、半世紀以上にわたって歌い継がれてきたR&B/モータウンを代表するスタンダードナンバー。グループのイメージや演出ではなく、純粋な歌唱力とボーカルワークが問われる1曲である。

 歌い出しからオリジナルのアレンジを加え、SOTAのエッジの効いたラップからスタート。子音にポイントを置いた、お手本のようなアプローチを見せる。中低音域をしっかり印象付け、これからの歌唱の土台を作っているところも注目だ。ラップを受け継いだMANATOは、子音を柔らかく、母音を長めにとり、SOTAのラップとのコントラストをつけつつ、流れるようなフロウを見せる。ラップからシングにアプローチが変わるが、その境目を感じさせないのも特筆に値する。

BE:FIRST - I Want You Back / THE FIRST TAKE

 サビの最初を担うのはJUNON。モータウンのリズムを活かして、力まず、一音も伸ばしすぎず、クリアな高音域でサビの高揚感を押し広げている。広がったサビを受けるのがLEOだ。密度の高い声で少しソウルフルなアプローチを繰り出し、グルーヴを押し上げていく。SHUNTOは語尾のブレスを巧みに操り、余韻を長めに残してサビのハーモニーの基盤を作っている。RYUHEIはストレートな歌唱だが、子音のアタックを強くし、次に登場するラップやハーモニーを含む複数人でのアンサンブルに違和感なく繋いでいく。

 「I Want You Back」は、BE:FIRSTのメンバーそれぞれが、中低音域から高音域までカバーできるレンジの広さを持ち、メンバー全員がメインボーカルを務められる実力があることを証明したパフォーマンスである。しかし、この完成度は一朝一夕で身についたものではない。

BE:FIRST / I Want You Back - Live from BE:FIRST Stadium Live 2026 We are the “BE:ST” -

 その原点とも言えるのが、「Bye-Good-Bye」(2022年)である。オリジナルはトレンドライクでバウンシーな本曲を、「THE FIRST TAKE」では、ジャズ調にアレンジして披露している。歌い出しを担当するLEOが、滑らかに歌い出す。LEOのラップは、ラップライクともまた異なる、メロディのような起伏を明確にできるところが特徴だ。MANATOは、〈ずっとこのままじゃいられない〉からのブロックで、密度が高く安定した高音域、そして羽のように舞い上がるファルセットと、歌声を自在にコントロール。その確かな実力を感じさせる。

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