Penthouse、研ぎ澄ませ続けるポップスとしての探求心 『Neon Garden』で開拓した“キャッチーな新境地”

“最新のラブソング”を書くリサーチ 「気持ちをそのモードに持っていく」(大原)

――歌詞についても伺いたいです。

大原:使っているワード自体は、かなり“最近のもの”って感じですね。

――例えば〈ハンディファン〉とか。

大原:〈ちょっとGPT!〉とか。ただ、自分の下敷きには昔からのJ-POPがあるので、AメロあたりはそういうJ-POPの王道の雰囲気で書いています。Penthouseがすごく大事にしているのは、言葉のハマり方と、耳に自然に入ってくることなんです。そこに口ずさみやすさと、今の人たちに親しみのあるワードやアイテムを混ぜながら作っています。男が書いている感じは完全には消せないと思うんですけど、一応、女の子の気持ちに寄って書いているつもりですね。

――男女どちらでも受け取れるように。

大原:そうですね。男性主人公でも女性主人公でも受け取れるように、一人称も二人称も入れていません。どちらが聴いても、自分事として感じてもらえたらいいなと思っています。あと、日本語なんだけど、浪岡と真帆が歌うことで洋楽っぽいノリも出ている。そのあたりはPenthouseならではのスペシャルな部分なのかなと思います。

――恋愛について書くのは難しいですか?

大原:難しいですね(笑)。でも、音楽のテーマってやっぱり恋愛が一番メインストリームだと思っているので。自分の恋愛を思い返すこともありますし、映画やドラマを観たり、SNSで人の恋愛を検索したりもします。もちろん、そのまま使うわけじゃないんですけど、「こういうことを思ってるんだ」っていうものをたくさん見て、自分の気持ちをそのモードに持っていくイメージです。

 今回、〈キャンパスノート〉という歌詞が出てくるんですけど、今は令和じゃないですか。本当に高校生がノートを使っているのかわからなかったんですよ。もしかしたら、みんなタブレットだけで勉強しているかもしれない。僕、喫茶店でよく歌詞を書くんですけど……高校生が勉強している姿を、「今は何使ってるんだろう?」って、ちらっと見ちゃったりして(笑)。ただの怪しい人なんですけども。

大島:あははは。確かに怪しい(笑)。

大原:でも見てみると、ちゃんとキャンパスノートを使っていたんですよ。それでも念のためTikTokで「キャンパスノート」を検索してみたら、デコっている女子高生もたくさんいて。「じゃあ大丈夫だな」と思って採用しました。ただネットで見て「流行ってる」と思っても、実際にどういうふうに流行っているのかって、手触りとしてはわからないんですよ。だから少しでもその実感に近づくためには、やっぱり調べるしかないんです。

大原拓真(Ba)

――浪岡さんも、そういうリサーチはされますか?

浪岡:調べますね。ぼんやり生きていると、「今はこういう言葉は使わないよな」とか、「こういう感覚なんだな」っていうのを見逃してしまうので。曲を書くこともそうですけど、言葉も音楽もちゃんと意識して追うようにはしています。最近、音楽プロモーション関係の仕事をしている50代くらいの方と話したんですけど、その人が「『今日、好きになりました。』(ABEMA)を全部観てる」と言っていて。しかも昔は番組に出てからインフルエンサーになる人が多かったけど、最近はインフルエンサーになってから番組に出る人も増えているとか、そこまで追っていて。「すごいな、俺も観なきゃな」と思いました。

大原:僕も今回の歌詞を書く時は『今日好き』を観ましたね。さっき話した、自分の気持ちをその世界に持っていく作業の一つとして。

大島:それこそ今回のアルバムには、『隣の恋は青く見える -Chapter TOKYO-』(ABEMA)の主題歌になった「隣の恋は青」も収録されていますけど、みんなであの番組の鑑賞会をしました。

浪岡:あれ、良かったよね。

大原:意外と恋リアが好きなバンドなんです(笑)。

大島:平井(辰典/Dr)さんの家にみんなで集まって、あーでもない、こうでもないとか、「誰推し?」とか言いながら観ていました。学生時代に戻ったみたいで楽しかったですね(笑)。

大原:もともと大学の友達同士で始まったバンドなので、バンドモードじゃなくて、普通の友達に戻る時間も結構あるんですよ。リハーサルや制作中はもちろんバンドメンバーなんですけど、終われば友達。一人で観るより、みんなでああだこうだ言いながら観るほうが楽しいんですよね。

浪岡:一人で観ても、おもしろくないですから(笑)。

Penthouse - 隣の恋は青[Official Music Video](ABEMAオリジナル恋愛リアリティーショー『隣の恋は青く見える -Chapter TOKYO-』主題歌)

“名曲爆誕”を実感した「Balloon」への手応え

――次は「Balloon」について伺います。このバンドはメインボーカルが男女一人ずついますが、ここまで“デュエット”を感じさせる曲は初めてじゃないでしょうか。

大島:本当にこの曲は、フルでデモが上がってきた時に「名曲爆誕だな」と思いました。この曲を日本人で歌いこなせる人って、浪岡しかいないんじゃないかって思ったくらいで。だから、私がこの曲をどう自分の歌にしていくのかっていうのは、すごく試行錯誤しました。レコーディング前からかなり練習して、「どういうふうに歌いこなすべきなんだろう」って考えながら準備していましたね。レコーディングが始まってからは、浪岡や大原さんにもいろいろアドバイスをもらいながら歌っていって。結果的にすごく上手く噛み合ったというか、おっしゃったようなデュエット感、2人でこの曲の空気を作ることができたという実感がありました。自分としてもすごく自信の持てる1曲になりましたね。

――レコーディングでは、どんなアドバイスがあったんですか?

大島:リズムの取り方だったり、発音の細かいニュアンスだったりですね。浪岡はそういうところをすごく大事にしているので。私の声が入ってきた時に違和感が出ないように、そのあたりはかなり意識しました。

――浪岡さん自身は、この曲はどんな気持ちで歌われたんでしょう?

浪岡:わりと自由にというか、歌いたいように歌える曲だったので、自分の中にあるものをそのまま出すような感じでしたね。僕はもともと英語の曲ばかり歌ってきたタイプなので、日本語の曲より自然な気持ちで歌えたと思います。日本語って、必ず子音の次に母音が来るので、リズムを出す時の武器が少ない言語だと思っていて。でも英語は無声音も多いので、リズムを出しやすい。そういう意味でも、個人的には英語の方がかっこよく歌いやすいなという感覚があります。

――確かに、この曲はバラードなんですけど、「さあ、ここから聴きます」というモードにならないんですよね。気づいたら2人のハーモニーに引き込まれていて、ゴスペルを聴いているような感覚になる。

大原:そこは僕もすごく好きなんです。これまでもバラードはありましたけど、この曲みたいないい意味であっさりしたバラードは意外となかった。バラードって聴く側も結構体力がいるし、ライブでもセットリストのどこに置くかが限定されるじゃないですか。でも「Balloon」は、そのバランスが絶妙なんですよ。どこに置いても流れを壊さないし、聴く側に「よし、聴くぞ」と構えさせない。野外フェスでやっても成立すると思うし、どんなシチュエーションでも自然に入っていける。ライブではかなり頻繁にやりたい曲ですね。デモの段階から何となくその感じはあったんですけど、レコーディングでみんなの演奏が入って、最後に2人の歌が重なった時に、「この曲、どんどんよくなってるな」という実感がありました。

――それはバンド冥利に尽きますね。

大原:本当にそうですね。こういう瞬間は嬉しいです。

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