ハルカミライ「過去を輝かせられるのは今しかねえ」 熱狂のど真ん中で4人の軌跡と信頼が証明した『A CLASSIC CRATER』

「昔も今もどっちも宝もんだよ。過去があるから今があるし、過去を輝かせられるのは今しかねえよな」

 この日、「アストロビスタ」で橋本学(Vo)はこう語っていた。『A CLASSIC CRATER 2012〜2019』と銘打たれたライブ。タイトルの通り、2012年から2019年にリリースされた楽曲のみで構成される。この公演を2026年の今、開催する理由は「過去があるから今があるし、過去を輝かせられるのは今しかねえ」から。その言葉通り、この日の彼らは過去を輝かせるために、最強の今のハルカミライを見せていった。

 2019年12月に幕張メッセ国際展示場1ホールに、当時自身最大キャパのワンマン公演として8,888人を動員する『A CRATER』を行った。あれから約6年半。会場を幕張メッセ国際展示場 9・10ホールに変え、倍近い1万4千人、チケットはソールドアウトの『A CLASSIC CRATER 2012〜2019』を行った。

 『A CRATER』同様、360度のセンターステージでのライブ。ゲートをくぐってステージへとやってきた4人を、四方八方からの視線と歓声が包み込む。橋本の「サンキュー、A CLASSIC CRATER!」との咆哮を合図に「君にしか」でライブをスタート。ここからいつもの流れで一気に……と思いきや、さっそく須藤俊(Ba)の無茶振りが発動。「みんなおかえり。デイドリーム」とさらりとタイトルコールして「デイドリーム」を滑り込ませた。「いっぱい遊ぼうぜ!」と声を弾ませて放った「カントリーロード」でいつもの流れへと戻すと、フロアからは盛大なシンガロングが生まれる。橋本が「この胸の内っかわのところに大穴開くくらい、胸打たせて帰るよ」と宣言すると、「ファイト!!」「俺達が呼んでいる」と畳み掛けていく。すると須藤が小松謙太(Dr)に目をやり、「テンション上がりすぎてるから、お前、このあと『フルアイビール』いきそう」と制止。「フルアイは2019年以降の曲だからね」と橋本も笑う。今のハルカミライのライブが、いかに新旧を織り交ぜたセットリストになっているかを思わせるひと場面だ。

橋本学(撮影=青木カズロー)
須藤俊(撮影=青木カズロー)

小松謙太(撮影=青木カズロー)

 須藤が「このあと何の曲入るんだろう」とニヤリと笑ったあと差し込まれたのは「革命前夜」だった。CDリリース前、デモ音源時代の楽曲で(2022年リリースの『Symbol 2』初回限定盤に再録版が収録されているが)、八王子の小さなライブハウスで革命を信じ〈隠れてないで ほら 聴こえるでしょ/手を繋いでよ〉と歌っていた彼ら。この曲ができた当初、その声が届く範囲はステージから数メートルだったはずだ。それが今、幕張メッセという大きな会場で、ぐるりと彼らを囲む1万4千人とともに歌っている。彼らは間違いなく、革命を起こしてきたのだ。橋本は歌いながらふと「自分のターニングポイントがいつやってくるのかなんて、わかんねえよな」とつぶやく。そんな前夜の静けさを表現するように、リバーブの効いたギターに乗せて、橋本が息を多く含んだ美しい声を聞かせる。そこから4人の熱量が一気に爆発する。橋本の一言一句、バンドの一音一音に呼応するようにフロアは爆発したり、じっと聞き入ったりしていた。

 360度ぐるりと囲まれた中で4人が〈僕ら世界の真ん中〉と歌うと、その説得力もいつも以上。「春のテーマ」を終えると、「今日初めて円形の俺たち見るとか、そもそもハルカミライを初めて見るとか、そういう人もいると思うので、誰にとってもめちゃくちゃホカホカな刺激になるように一生懸命歌います」と改めて宣言した。その直後、須藤が「ちょっと曲数稼ぎたいから」と「Tough to be a Hugh」を差し込む。大熱狂の会場を見て、須藤は「天国のヒュー(愛犬)も喜んでるな」と想いを馳せた。

須藤俊 関大地(撮影=青木カズロー)

 橋本が気持ちよさそうにハミングを聴かせ「今日もいい空間に連れて行ってあげてえな」と告げてから紡がれた「いつかきっと出会う」や、「確かにそういうふうにバンドやってきたな」とつぶやいてから奏でられた「風に吹かれて」など、2012年から2019年の楽曲のみというコンセプトに沿って選曲はどんどんレアになっていく。橋本の優しい声が会場いっぱいに染み渡った「21世紀」、カーテンのようにライトがセンターステージを囲み、スモークが視界をやわらかく滲ませた幻想的な演出の「Mayday」。それまでのエネルギッシュで爆発的なステージングとは対照的に、ロマンチックなハルカミライの世界へと連れていかれる。

ハルカミライ(撮影=小杉歩)

 内なる想いが最も爆発したのは「いろんな意味に捉えられるように歌詞を書いてきててよかったなと思う。今日はこのバンドに」との言葉の前置きから届けられた「ラブソング」。真っ赤な照明の中で、4人はセンターステージで向かい合う。互いの顔を見て、互いの音を聴きながら同曲を重ねていく。小松のどっしりとしたドラム、それを支えるような須藤のベースとコーラス、関大地(Gt)の歌うようなギターソロ。そして橋本が「ドンっ」と大きく足を鳴らしてから4人で歌うのは〈君には全てをあげるよ/愛も憎しみも歓喜も悲哀も/だから君の全てをくれよ〉。向かい合っていて直接は見えない4人の顔が、ビジョンに映る。真剣だが笑みを湛えた4人の表情が、今のハルカミライをよく表していた。

 ここで4人は突然、ステージ上で額を突き合わせる。そして須藤が「こうやって、やるかやらないか迷ってる暇あるならやった方がいいよね」というと、慈しむように「unconditional」を歌い上げた。「初心を忘れそうになったらメンバーが叱ってくれると思う。いいバンドメンバーを持ちました」と初心に立ち返ったMCに続いて、ハルカミライ最初の曲「燦拍子」が、ミラーボールの光の中に立ち上がる。歌う前には「幼さはあるけど、それがまた良かったりするんだろうな」と目を細め、間奏では「今日もいい曲に育ちますように」と願いを込める。こうやって彼らは小さなライブハウスで、大きなホールやアリーナで、憧れの人と会えるようなフェスの会場で、自分たちの中で生まれた曲を、一つずつ大切に育ててきたのだ。

 「最近特に考えてることがあって。『強く願えば叶うよ』なんてよく言うけど。正直そんな世の中じゃねえじゃん。思い通りになんてなってこなかったよ。だけど偶然出会った素敵なものたち、人たちみたいなもんが俺の周りに溢れてて。それでいいんだな。別に望んだもん手に入らなくても。偶然素敵に出会う人いっぱいいるんだって。それがハルカミライだし、みんなもその一部だと思ってるんだよね。ここからも素敵で美しい偶然を集めていきてえなと思ってます」

 そう切り出してから紡がれた「アストロビスタ」。〈眠れない夜に私 ブルーハーツを聴くのさ〉の「ブルーハーツ」の部分を、ライブごとに対バン相手などに変えて、想いを乗せてきた橋本。この日、彼が選んだ名前は他の誰でもなかった。〈眠れない夜に俺はハルカミライを聴くのさ〉。自分自身のバンドに向けた、まっすぐな想いだった。

ハルカミライ(撮影=小杉歩)

 小松がドラムの椅子の上に、橋本、関、須藤はアンプの上に立ち上がり、まるでジャングルジムのてっぺんから星空を見上げるような、屈託のないロマンチックさを持って描かれた「世界を終わらせて」のあと、音楽やバンドへの衝動を閉じ込めた「QUATTRO YOUTH」が始まれば、関がペットボトルの水を噴射し、関から水をもらった小松も同じように水を噴射。ステージの真ん中では須藤と橋本が背中合わせで熱演。すると、ドラムを叩く小松と、その後ろの関も背中合わせに寄り添う。そして橋本は「これが俺にとっての永遠の歌」と同曲を結んだ。

ハルカミライ(撮影=小杉歩)
橋本学 須藤俊(撮影=青木カズロー)

 この日2度目の「Tough to be a Hugh」ではファンによる大合唱が贈られ、須藤が「さすがにヒューも喜んでるわ。俺もうれしいわ」と笑顔。そのまま「フュージョン」「エース」を続けた際の熱狂は言わずもがな。

 4人が向かい合うと、橋本がデモ曲の「symbol」を高らかに歌い上げ、「ヨーロービル、朝」へ。ビジョンは消え、暗い中に、4人の立つステージだけがぼうっと浮かび上がる。広い会場の中でありながら、まるで4人だけの空間のような中で、始まりの街へと想いを馳せていく。この日彼らは、大便をもらした話をして笑い合い、「俺のアンプの上にペットボトルのゴミ置いたの誰!?」と言い合っていた。飾らない、等身大のバンド少年のままだった。あの頃〈疑いながら 信じてる 信じてるよ〉と自分たちを信じてきた、その足で、彼らは今、ここに立っている。そして小松の大きなドラム音が鳴ると4人が正面を向く。静寂を切り裂くユニゾン。「PEAK'D YELLOW」だ。2019年、幕張メッセ公演の直前にリリースされた楽曲を、貫禄とともに置いて、ステージを去った。

 アンコールでは「これさえあればいい」を披露。いつもは橋本が一人でアコギで歌い上げる楽曲だが、この日はほかの3人も自身の楽器を持ったバンド編成での特別バージョンで演奏された。さらにとっておきの歌のプレゼントとして「遥」を渡し、「春はあけぼの」で再会の約束を交わす。そして「A CLASSIC CRATER、これにてお開きだ!」と閉幕を宣言するも、須藤が「アンコールありがとう」とニヤリと笑い、「ファイト!!」。演奏を終えて楽器を置いて、花道へ。さすがにこれでおしまいかと思いきや、再びステージへ戻ってくると「エース」をお見舞い。ステージにいる限り、延々と続いてしまいそうなムードを振り切るように、「これで本当に終わりね!」と橋本が笑い、4人は走ってステージを去った。

 「昔も今もどっちも宝もんだ。過去があるから今があるし、過去を輝かせられるのは今しかねえ」。この日幕張メッセに集まった1万4千人と、ステージに立った4人が、この夜、それを確かに証明してみせた。

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