SHINee「皆さんが僕の希望です」ーー日本デビュー15周年、ベルーナドームで提示した“これから始まる物語”
2026年6月。SHINeeは日本デビュー15周年の節目に、 これまでの歴史を“反転(INVERT)”させるような、新しい扉を開く姿を見せた。その空間は、懐かしさでも、祝祭だけでもない“これから始まる物語の第一章”としての未来を期待させ、希望に満ち溢れていた。
6月5日、7日の2日間、埼玉・ベルーナドームで開催された『- The Trilogy I - 2026 SHINee WORLD VIII : [THE INVERT]』は、日本オリジナル公演ではなく韓国での『SHINee WORLD』シリーズの日本公演。SHINeeにとっては約2年ぶりの日本公演で、4人が揃ったドーム公演は実に8年ぶりとなる。本稿では、7日公演の模様をお届けする。
驚きと興奮の構成ーーライブは「Spoiler」で幕開け
今回のライブは『The Trilogy I』というタイトルを冠しているように、三部作の1作目となる。この三部作は、デビュー20周年を迎える2028年に向けたもので、公演の最後に「The Trilogy II 2027」という予告と共に、イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリの叙事詩『神曲』の「煉獄篇」冒頭の有名な一節「E canterò di quel secondo regno=その第二の国(煉獄)について私は歌うだろう」という言葉が刻まれたことからも、ダンテの『神曲』がコンセプトになっているようだ。
『神曲』は、地獄篇(Inferno)~煉獄篇(Purgatorio)~天国篇(Paradiso)の三部構成で、主人公・ダンテが迷いの森から旅を始め、導き手とともに“光”へ向かうという物語。今回の『[THE INVERT]』は、旅の始まり「地獄篇」ということなのだろう。オープニング映像では、SHINeeたちが『神曲』同様、地獄の最下層・氷地獄に墜落して氷が割れたところでコンサートが始まった。
まず、オープニングを飾った「Spoiler」に驚かされた。名曲「Sherlock」のイントロから始まる「Spoiler」は、2014年の『SHINee World III』でもオープニングに用いられた曲だが、それはその前年にリリースされた連作となる3rdアルバムの全体像を匂わせる、まさに“SPOILER”として作られたコンセプチュアルな曲だから。そのため、アルバム後の『SHINee World III』以外ではライブのセットリストに入っていなかった曲なのだ。
12年ぶりに封印を解かれた「Spoiler」のように、今回の『[THE INVERT]』には「Like A Fire」、「Green Rain」といった久々にパフォーマンスされた曲や、「All Day All Night」、「Electric」、「Wish Upon a Star」などこれまで単独コンサートで歌われることのなかった曲や、韓国のみで開催された『SHINee WORLD VII [E.S.S.A.Y]』でしかパフォーマンスしていない「Don't Let Me Go」、「SAVIOR」など隠れた名曲が多く披露された。『神曲』地獄篇は、「過去の影と向き合い、そこから抜け出すための章」として描かれている。SHINeeが自分たちの歴史を掘り起こし“過去”と向き合う行為は、地獄篇でダンテが“過去の影”と対峙する構造とも重なる。
さらに、韓国のコンサートシリーズながら「Breaking News」、「Downtown Baby」、「DIAMOND SKY」といった日本オリジナル曲が日本語でセットリストに入っているのも、これまでになかったこと。まさに“THE INVERT=ひっくり返す、元に戻す”というタイトル通り、“予想をひっくり返す構成”となっていた。
驚きの「Spoiler」から生バンドの演奏が熱を高めていくと、新曲「Anti Believer」では、KEYが片眼を覆う眼帯を外して会場を沸かせたが、この「Anti Believer」の振り付けを2017年の日本ドームツアーにSHINeeキッズとしてENHYPENのNI-KIと共に帯同していたシュリが担当したという話も、感慨深い。「Electric」で30代になった大人のSHINeeを披露すると、床が透明になったムービングステージがアリーナ客席の上を通過して、センターステージ、バックステージへ移動してファンを喜ばせる。そのステージの上で「View」のダンスブレイク、「JULIETTE」でTAEMINのフェイクを見せると、「Like A Fire」ではライブでお決まりだった手をぐるぐる回す仕草をKEYがMINHOに催促。さらには「こんな風に見えるんだ~」と下からステージを映し出すカメラの映像を見ながら床に4人で張り付く無邪気な姿を見せたりと、前半は激しいSHINee、セクシーなSHINee、楽しいSHINeeとさまざまなSHINeeを満喫させてくれた。
本編の最後の核となったのは、新アルバム『Atmos』の「Still Raining」MVから始まるバラードセクション。初の東京ドーム公演を思い出させる大きなつばの帽子と白黒の衣装の4人の歌声が、優しくドームを包み込む。「Wish Upon A Star」は静かな曲だが、このライブのハイライトだ。「DIAMOND SKY」では、客席のファンがダイヤを模り片手を挙げる。「Green Rain」では過去のライブ映像が映し出され、溢れる思い出が脳裏に浮かび涙を流すファンも多かったが、そんな気持ちを新曲「Thousand Miles Away」が“過ぎた日よりも美しい世界へ”と未来へ誘い、希望と癒しを与えてくれた。
アンコールは、『Atmos』のリード曲「Atmos」からスタート。除隊後の『SHINee WORLD VI』(2023年)から、ライブのアンコールで新リード曲のお披露目を始めた。『SHINee WORLD VI』での「HARD」はHIPHOPという驚きの提示だったが、今作の「Atmos」はハウス。音ハメが細かい超絶技巧のダンス曲だ。ベテランになっても守る姿勢をまったく感じさせない、SHINeeの本気に会場も熱気に包まれた。
TAEMINの「日本では新しい曲も準備してきました!」という声に大きな歓声が上がると、韓国公演のセットリストにはなかった日本オリジナル曲「Lucky Star」と「3 2 1」が追加され、これまた日本のみの演出となる大型トロッコに乗り込んだメンバーたちが、アリーナ外周を移動しながらスタンドのファンと交流を深めた。