日向坂46、“ROCKESTRA”という音楽的挑戦が導いた名演 『7回目のひな誕祭』で見せた進化と次なるフェーズの兆し
2019年3月27日に1stシングル『キュン』をリリースしてから、気づけば7年が経過した日向坂46は、毎年この時期になると周年ライブ『ひな誕祭』を開催している。新型コロナウイルスが蔓延し始めたタイミングと重なったデビュー1周年の2020年3月こそ生配信にとどまったが、2周年の2021年は無観客&700人限定での有観客で2公演を実施。2022年に実現した初の東京ドーム公演『3回目のひな誕祭』より、現在の『ひな誕祭』という名称が用いられるようになり、コロナ明けの翌2023年の『4回目のひな誕祭』からは会場を横浜スタジアムに移し、以降は毎年4月に同会場にて趣向を凝らした周年ライブを実施してきた。
昨年の『6回目のひな誕祭』は一期生の佐々木久美や佐々木美玲、高瀬愛奈にとって最後の日向坂46全体ライブということもあり、2日間で持ち曲すべてを披露するという初の試みで臨んだが、今回の『7回目のひな誕祭 ~Welcome to HINATAZAKA ROCKESTRA~』は『ひな誕祭』史上初となるサブタイトルを用意。これだけでも例年とは違った趣向でライブが展開されるのではと、多くのおひさま(日向坂46ファン)が期待したことだろう。そして、その期待を大きく上回る形で、日向坂46はグループとしての新たな見せ方、在り方を提示してくれた。本稿では4月4日、5日の2日間にわたり行われた『7回目のひな誕祭 ~Welcome to HINATAZAKA ROCKESTRA~』のうち、2日目の5日公演について記していく。
“ROCKESTRA(ロッケストラ)”と聞いて、往年のロックファンならまず最初に思い浮かべるのが1970年代終盤にポール・マッカートニーが発案した同名プロジェクトだろう。もちろん、今回は日向坂46がポールの同企画をリメイクしたわけではなく、“ロックとオーケストラを融合させる”という精神性に共鳴しながら、日向坂46らしい形で表現するエンタテイメントが今回の“ROCKESTRA”に繋がる……ライブを観終えた今なら、そう解釈することができる。
ライブは女性プレイヤーで構成されたバンド=The Rainbowsを従えた小坂菜緒が、オーケストラの如くタクトを振る姿に合わせて演奏するところから始まる。日向坂46が生バンドを携えてライブを行うことはこれが初めてだが、ライブのサブタイトルと重ねて「なるほど!」と納得したファンも多かったことだろう。そんなことを考えていると、ステージには二期生から五期生までの全メンバーが勢揃いし、「世界にはThank you!が溢れている」からライブを本格的にスタートさせる。躍動感の強い生演奏を背に、いつもより生き生きとした歌とダンスで観る者を魅了するメンバーの姿は、前日の雨が嘘のように思えるほどの青空にも似たものがあり、これ以上はないというほどの爽快感を漂わせていた。
ちなみにこの日のMCでも触れられていたように、今回のライブ1曲目には“晴れバージョン(「世界にはThank you!が溢れている」)”と“雨バージョン(「雨が降ったって」)”が用意され、雨天だった前日の4日公演では「雨が降ったって」が披露されている。こうしたフレキシブルなセットリストも、これまで積み重ねてきた経験があってこそ。両日観覧したおひさまにとっては、忘れられないオープニングになったことだろう。
話を5日公演に戻そう。晴れやかなオープニングナンバーに続き、「One choice」や「愛はこっちのものだ 2025」といったライブ映えする楽曲が立て続けに披露されると、バンドアレンジも手伝って普段以上に熱のこもったパフォーマンスが繰り出される。思えば昨年の『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』ではメンバーの楽器演奏をフィーチャーする場面が多々用意されていたが、あれは今回の『ひな誕祭』への伏線だったのか……と考えるのは早急すぎるだろうか。しかし、それくらいこの日目にしたパフォーマンスや演出は、昨年のツアーから地続きのように感じられ、日向坂46として8年目に突入した今だからこその音楽的冒険なのだと筆者は好意的に受け取った。
MCを挟んだあとは、大会場でのライブらしく赤いロンドンバスに乗ったメンバーが「君しか勝たん」を歌唱。その後、「アザトカワイイ」や「ってか」「クリフハンガー」へと繋ぐのだが……ここからしばらくは生演奏ではなく、通常のバックトラックを用いた形でライブは進行する。せっかく冒頭3曲で新たなライブの在り方を示したばかりだったのに……と少々物足りなさを感じそうになったが、五期生による「好きになるクレッシェンド」から始まる期別曲ブロックで各期の異なるカラーの魅力を強くアピールされることで、グループとして日々進化していることにも気付かされ、“見せ方の多様性”なのだと受け取ることができた。
一人ひとりの個性が確立され始めた五期生、もはやグループを引っ張る存在として重要なポジションを担う四期生、4人の結束力の強さで“盛り上げ隊長”役を進んで買って出る三期生。そんな後輩たちを温かな眼差して見守る二期生の2人……小坂と金村美玖はその余裕と日向坂46の先頭に立つ者としての矜持をにじませながら、アコースティック編成のバンド演奏で「どっちが先に言う?」をしっとりと歌ってみせる。また、「恋と慣性の法則」では四期生の宮地すみれと渡辺莉奈がダンスに特化したユニットで魅力を発揮し、「君と生きる」では『16th Single ひなた坂46 LIVE』で経験を積んだひなた坂46の面々が表現力豊かな歌とパフォーマンスを提示する場面もあった。先ほど“見せ方の多様性”と述べたが、そういう選択肢を取れるのもメンバーが伸び伸びと成長し続け、期ごとに異なる魅力を備えているからこそ成せるのだ。彼女たちの振り幅の広い表現を目にして、その思いはより強まることとなる。