『ブレイクマイケース』2周年記念対談 統括今井P×前田甘露が明かす21人の人生を懸けた作詞、サウンド制作秘話
21人分の歌詞を描くために作詞家・前田甘露が意識したこととは?
——制作のやりとりで印象的だったことはありますか?
前田:シナリオライターの藍田さんとのやり取りですね。今回の楽曲は初めての試みが多いこともあって、歌詞の初稿を見ていただく時には本当に緊張しました。ですが、その時にとてもあたたかいお言葉をいただけたことで、自分の視点に自信が持てました。
——それぞれのキャラクターによって歌の入り方や音符に対しての音の乗せ方が違っていて、21人の個性が歌い方にも出ていますよね。
前田:具体的にいうと、節見静さんのパートでは緊迫感を意識しました。本来なら一つの音に乗りきらないようなところも強引に歌詞を詰め込むことで、強行部における司令塔らしさを表現ができたかなと思っています。ほかにも環野揺くんは、彼の独特のキャラクター性を音楽に乗せられたかなと思っています。特に〈猫みたい〉という歌詞を絶対に入れたくて、こだわりました。
今井:〈猫みたい〉、揺らしいつぶやきですよね。
前田:歌詞でふわっとした感じを出す表現は難しいのですが、それでも環野くんのキャラが引き寄せてくださったところがあります。
今井:ありがとうございます! 作ったご本人による「ここがこうなっています」という解説、一生聞いていたいです。
——各部署のパート、それぞれのキャラクターの歌う部分、さらに共通パートとカラーがはっきりしていますが、言葉を選ぶ際に特に意識されたことはありますか?
前田:どういう心情を表現するかは藍田さんから細かくご指示をいただいていたので、そこに沿っていったところはありますが、各部署のユニゾンパートではスタッフ同士の関係性や温度感を意識することで、それぞれのカラーや季節を示すことが出来たように感じました。それがあった上で、サビに〈とき〉という単語を入れています。その〈とき〉をサビに入れることですべてのセクションが一つに結ばれていく仕掛けになればいいなと思いました。
——しかも同じ「とき」ながら、本部は〈困難〉と歌い、ほかパートでは〈時間〉、〈季節〉を「とき」と読む。同じく「場」を意味する歌詞も〈部署〉、そして〈Aporia〉を「場」と読むという共通サビのギミックが見事でした。
前田:そこは意識して書きました。「とき」と言ってもいろんな意味がありますし、『ブレマイ』の中でもさまざまに意味があったので、それぞれの場面でそれぞれの「とき」を感じてもらいたいと思いました。一人ひとりの色は違うけれど、『ブレマイ』のパズル要素と同じく彼らもまた“パズルのピース”みたいなイメージが僕の中にあって。全員の色が違うからこそ、隣にいなくとも一つの絵になれる。そういうものを歌詞で繋いで、聴き終えた後に全員がバラバラの個性だけど一つの歌をうたえる、というところに着地できました。
今井:「とき」というのは確かに、今回の曲で重要なワードだなと思います。これまでの『ブレマイ』のストーリーやパーソナルソングもそうですが、“時間軸”がしっかりと感じられることが『ブレマイ』の特徴だと思っているんです。「今の気持ち」や「その場で感じていること」を単に歌うのではなくて、「過去があるから今はこう」「今はこうだけど思い描く未来」といったふうに、常に時間軸の重みが乗っていることが『ブレマイ』らしさだと。今回も『Prequel』のエピソードとそれぞれの『季節』にフォーカスを当てて作詞していただきましたが、「とき」こそが『ブレマイ』のコアだと「BREAK MY PHASE」を作っていて感じました。
——その時間軸を入れた歌詞ですが、21人分の歌詞を書く際に最も苦労したのはどんなことですか?
前田:苦労とは少し違いますが、どの人物の歌詞もすごくたくさん考えました。例を挙げるなら、「交渉部」のユニゾンパートですね。表現したかったことは「礎としての高み」で、活躍する人間が出す結果は礎があってこそ導かれるというテーマだったのですが、謎めいた雰囲気の彼らの歌詞は、ほかの部署に比べて文字数が少ないんです。限られた文字数の中で、『Prequel』のサブタイトルである〈礎を仰ぐ瞳〉、季節としての「晩秋」、その季節を表す〈枯れ落ちる思想(葉)〉というフレーズ、それらを踏まえて交渉部としての関係性をまとめる意味合いにしたかったので、すべてを違和感なく織り上げていくことが難しかったと記憶しています。でも、これこそ作詞家としてのやり甲斐を感じる場面でした。
今井:すごく完成度と純度の高い歌詞ですよね。
前田:まず季節として「晩秋」をイメージしたことがなかったので、これを表すワードとは、と考えました。だって「秋」は「秋」で「特務部」がいますから。
今井:「交渉部」パートは、複雑なものをいかに端的に語るか……という工夫が必要でしたよね。藍田さんと前田さんのやりとりを見ていても、かなり細かいところまでチューニングされていて、大変そうだったのを覚えています。
前田:藍田さんからも、少ない文字数での表現を「交渉部の彼らがまとう謎めいた雰囲気や奥行きが感じられました」と言っていただけて、ほっとしました。あとは個人パートの宇京真央くん。宇京くんの「断りたいことは断る」という姿勢を表現したかったのですが、これは交際部全体のルールでもあるので、普通に書いてしまうとそれに近しいものになってしまうからこそ、“宇京くんらしさ”を出すことにこだわりました。「断りたいことは断る」や「やりたくないことはやらない」。傍から聞いていると同じような言葉ですが、それでもその人にしかないもの、その人だけが大事にしているものはどのパートにもあるので、それを意識したことで最終的には「嫌なら断ってる。でもそれを踏まえた上で選んだんだ」という宇京くんらしさにたどり着きました。
今井:確かに「やりたくないことはやらない」は「交際部」全体の指針であり、特に綾戸(恋)らしいなとも思いますが、確かに〈嫌なら断ってる〉は宇京が唯一言い換えられるフレーズなのかなとも思いますね。僕は〈その前提で選んだ現状だし/我慢じゃない〉という表現も好きです。ロジカルに選んだから悔いはないという彼のスタンスを言葉の一つひとつから感じます。
前田:あとは皇坂さん。陛下ですね。陛下は楽曲の歌い出しを担当されていますから、ここで耳に入ってくる言葉はとても大切だと思ったんです。陛下の気持ちを最優先にしつつ、「今からこの曲を聴く」という皆さんの期待値が上がるようなものにしたいと思いました。
今井:素晴らしい。
——新開戦は英語で歌っていますが、そこにはなにか意図があったのでしょうか?
前田:英語のキャラでいうと、翻訳家をしている隠岐谷誓さんに英語で歌ってもらおうかとも思ったのですが、翻訳をしているからこそ逆に日本語の方がいいかなと思ったんです。それなら、隠岐谷さんの翻訳の仕事のアシスタントをしている新開さんが歌うのがいいなと思いましたし、ラップを乗せやすかったので、白羽の矢を立てました。もう一人、ちょっと英語が入っているのが麻波麗くんですが、純粋なラップというよりも苦悩をそのまま口にしているようなところもあって、僕も自分で歌いながら逆にどんな風になるかがわからないなと感じていたのですが……完成版を聴いてちゃんと彼らしい表現になっていて感動しました。
——たとえば、先ほどの真央の〈嫌なら断ってる〉という歌い出しは端的に彼の性格が出ていますし、城瀬由鶴の〈みんなをそっと支えていたい〉も彼のスタンスそのものだなと感じます。一人ひとりの歌詞がパワーワードになっていますが、そうした言葉を探っていくためにどんなことをされましたか?
前田:地道ですが、『Prequel』は100回くらい読み返し、セリフの書き出しもしました。キャラクターの心情がより感じられましたし、『Prequel』以外のストーリーも読んで、限界まで21人分のキャラクターの情報を自分に落とし込みました。でも僕も一人のユーザーとしてゲームを楽しんでいる側面もあるので、苦ではなかったです。むしろそうせずに、後になって「あれも入れたらよかった」「もっとこうしたらよかった」と思ってしまったら、それはこの楽曲に対して誠実ではないと思いました。
今井:情報を集められるだけ集めて、そこから書いていただけたことが率直に嬉しいです。そして『ブレマイ』も楽しみながら準備をしていただけたこと。ダブルで嬉しいです。
——それぞれのキャラクターの裏話、21人分すべて伺いたいところですが、それはまたの機会に「大解剖スペシャルトーク」などさせていただきたいです。さて、この全体曲をどんな風に楽しんでいただきたいですか?
前田:もちろん“Aporia全員で提供するスペシャルメニュー”として思いっきり味わっていただきたいですし、作詞家としては歌詞にも注目していただいて、ゲームと並行して楽しんでいただける仕組みになっていると思います。そんな一曲の最後に〈変わることなく 代行(かわ)り続けていく〉という歌詞がありますが、1日の最初に聴いていただいてもいいですし、人間関係で迷った時の地図としてであったり、純粋にAporiaに立ち寄りたくなった時の扉になったり……。その時々の心情に合わせて、その人が求めるものに代行していく、代わり続けていく曲として聴いていただけたら嬉しいです。
今井:Aporiaという組織の“塊感”を、歌詞やMV、サウンドメイキングから感じ取っていただければと。『ブレマイ』で複数のスタッフが歌唱する曲は初めてですが、パーソナルソングを経ての集結には、かなり熱いものを感じると思います。Aporiaという場が21人を繋げていて、1つの組織として駆動している、塊で動いている感じを楽しんでいただきたいですね。
このインタビューをご覧になっている方は『ブレマイ』のファンの方が多いかと思いますが、もし皆さまが『ブレマイ』を誰かにおすすめすることがあれば、まずこの曲を紹介していただけたらと思います。Youtubeで公開中のMVは、皆さんにもっと『ブレマイ』を好きになってもらえるような映像でありつつ、10分という時間に『ブレマイ』のあらゆる魅力を凝縮させたものにもなっています。「BREAK MY PHASE」を通して、作品の魅力がもっと多くの方に伝われば、この上なく嬉しいです。
「BREAK MY PHASE」作曲家・竹内聖 メールコメント
2周年おめでとうございます。
今回の楽曲では、普段はそれぞれの現場で活動しているスタッフたちが、『Aporia』という一つの場所に集い、共鳴する瞬間をイメージして制作しました。
彼らが持つ個々の多面的な魅力と、それらが重なり合うことで生まれる『音のレイヤー』を、ぜひ体感していただければと思います。
■リリース情報
『BREAK MY PHASE』
先行販売:2026年8月15日(土)『ブレイクマイケース 4th Conference』物販会場
一般販売:2026年8月26日(水)
予約期間:2026年5月9日(土) 19:00〜
※coly more! 各店舗ではご予約を承っておりません。
『ブレイクマイケース』初のAporiaの21人が歌うオールスタッフソングのCD発売が決定。本CDには、全員歌唱による『BREAK MY PHASE』に加え、各部署ごとのドラマパートを収録。さらに、ジャケットイラストを使用した57mm丸型缶バッジのほか、イベント応募用シリアルナンバーやアプリ内特典引換券も同梱された豪華仕様。
詳細はこちら:https://breakmycase.com/news/post-101
■ゲーム情報
スマートフォン向けゲームアプリ
『ブレイクマイケース』
App Store:https://apps.apple.com/jp/app/id6472174407
Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.colyinc.breakMyCase
■関連リンク
公式サイト:https://breakmycase.com/
公式X:https://x.com/breakmycase
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@breakmycase_official