ロクデナシの歌に灯るあたたかさ 素顔なき歌声が描く情景、3rdワンマンライブで辿り着いた『六花』の真髄
閉ざされた世界から、共鳴する「眼差し」の先へ
甘酸っぱい気持ちや、ほろ苦い想い、かくれんぼするような曖昧さ、涙がこぼれるような感情までもがフレーズごとに表現された「イオ」からは、ナユタン星人が手がけた楽曲群が順に披露されていく。音源には収録されていないアカペラで始まった「アルビレオ」では、想いを乗せたボールを遥か彼方へ投げ放つような、芯のあるボーカルに舌を巻いた。振り返ってみれば、2ndアルバム『六花』の1曲目に収録された壮麗な「鯨の落ちる街」こそ、本編を締めくくるにふさわしい1曲だった。六角形の光の輪を伝って走る光に、サビの息遣いまで届けるボーカルが追随し、見事に雪の結晶を描き出していたからだ。
アウトロで伸びやかなフェイクを放ったアンコール1曲目の「リインカーネーション」を経て、「おかえり」と呼びかける観客に、にんじんは柔らかい声で「ただいま」と返す。その口からこぼれる言葉の量が、この夜は体感的に少しだけ多い気がした。孤独だった者同士が出会い、繋がっていくロクデナシの世界観が、後半で縮まった観客とにんじんとの距離感に重なる。その余韻の上で歌われた新曲「言葉の続き」の〈寂しい夜が明ける前に/優しい光 だけが包む/ずっと忘れないから〉というフレーズが、胸にそっと落ちた。にんじんが自身で書いた「眩しすぎた朝」とカンザキイオリによる生命力に満ちた「眼差し」は、閉鎖的な演出から少しずつ開けていったことを物語る2曲だった。
無理に前を向かせるのではなく、生活にそっと足並みを合わせてくれる。そういう安心感こそが、ロクデナシの歌には灯っている。終演後の暗がりの帰り道にも、その光はついてきた。雪の結晶のように儚く、それでもたしかに、この先へと続いていく光だ。
■セットリスト
『ロクデナシ 3rd Oneman Live「六花」』
4月17日@東京・Kanadevia Hall
M01. カロン
M02. ユリイカ
M03. Happiness Umbrella
M04. 草々不一
M05. 脈拍
M06. Slowly ~ 煩悩
M07. リプレイ
M08. エンドロール
M09. 夏を書き留める
M10. 言の刃
M11. あやふや
M12. 花泡沫
M13. ただ声一つ
M14. 生活の
M15. 愛が灯る
M16. 雨景色
M17. イオ
M18. アルビレオ
M19. スピカ
M20. 鯨の落ちる街
-ENCORE-
M21. リインカーネーション
M22. 言葉の続き(新曲)
M23. 眩しすぎた朝
M24. 眼差し