iVy、音楽で体現する“現代のオルタナティブ” 「表現され尽くしたものから一歩踏み出したい」

教室の隅っこにいるような人に届いたらーーiVyの本質と願い

ーーpupuさんは、今のiVyのクリエイティブに繋がっているような、自分自身の影響源となる作品や作家はいますか?

pupu:私はデフォルメされた表現がすごく好きで、それでいうと村田蓮爾さんのイラストが好きですね。女の子を機械的に武装させたりするような表現が好きで、それが自分の中のベースにある気がします。ただ、そのまま影響を受けているというよりは、ポーズとか構図とか、ちょっと奇妙な感じとか、少しセクシーなニュアンスとか、そういう要素をiVyに落とし込んでる。iVyちゃんも、キャラクターとしては可愛いんですけど、その中にあるちょっとした違和感みたいなものを出したいなと思っています。

ーー作られていたZINEも、可愛いだけじゃなくて少し不気味さがありましたよね。

fuki:歌詞も同じで。明るいサウンドの曲にも皮肉や不気味な言葉を結構入れてる。

ーーfukiさんの作詞のインスピレーション源は?

fuki:私は漫画を読みながら書くことが多くて、セリフを引用したり、自分の言いたいことをパズルみたいに組み立てています。だからすごく遠回しな表現になる。音楽は感覚的に作っていくんですけど、言葉の選び方は大事にしていますね。言葉と音って、すごく近い存在だと思うんですよ。自分がこれまで見てきたものが全部iVyの種になっていて、特に漫画の影響は大きい。少女漫画をよく読むんですけど、田村由美さんの『7SEEDS』が大好き。言葉にできない優しさとか苦しさとか、切なさとか全部が混ざり合っていて、私もこういう感情を曲にできたらいいなって思います。あと、親の影響で読んだ川口まどかさんの「死と彼女とぼく」。幽霊が見える主人公が死者と向き合っていく話なんですけど、私の書く歌詞にも死生観みたいなものが根本にあると思うし、リアルだけどリアルじゃないみたいな質感が好きで。そういう感覚も音楽で表現したいと思っています。

ーーpupuさんから見て、fukiさんの言葉の魅力についてはどう感じていますか?

pupu:いろんな音楽家がいる中で、歌詞が好き。純粋に「すごいな」って思う。「クラスルーム」の歌詞「空っぽな視線で鏡を見てみたけれど、泣いてるのか笑ってるのかわからなかった」とか、ああいう一瞬の感情をすごく丁寧に描いていて、しかも白黒じゃなくてグレーのまま残している感じがすごく好きです。歌詞を読んでいると、漫画を読んでるみたいな感覚になる。

ーーfukiさんの中で、思い入れのある曲はありますか?

fuki:「ホワイト・リバー・ジャンクション」ができた時は、すごく良かった。「まだこういう曲作れるんだ」って思えたんですよ。自分の中にまだ伝えたいことがあるって気づけて、すごく嬉しかったです。できて、すぐpupuに送ったよね。

pupu:バイト中に送られてきた。休憩中に聴いて、「やば、最高。バイト辞める」って。それで本当に辞めました。

ホワイト・リバー・ジャンクション

ーー曲を作る上で、どういう人に届けたいとか考えることはありますか?

fuki:自分と似てる人。

pupu:前に二人で話したんですけど、教室の隅っこにいるような人に届いたら、それでいいよねって。

fuki:そう。でも教室ってたくさんあるじゃないですか。だから全国各地の教室の隅っこにいる人、過去にそこにいたことのある人にも届いたらいいなって。

ーーそれはご自身の経験からくるものですか?

fuki:はい。私がそういう時期に一緒にいてくれたのが音楽や漫画だったんです。私たちの音楽が、誰かにとってそういう存在になってくれたら嬉しいなって思う。本質としては過去の自分を救いたいという気持ちがあるから、そういう歌を届けたいなって。

ーーそれは生きづらさというよりも、よりパーソナルなものですか?

fuki:そうですね。私は人と普通に喋ることはできるんですけど、本当に思っていることは上手く言葉にできないところがあって。言えなかったこととか、その日に見た夢のこととかを日記に書く習慣があって、それを歌にすることもあります。言葉にできない感情は心の中にまだまだたくさんあって、それをずっと探している感覚があります。

ーー昨年WWW Shibuyaで行われたワンマンライブを観て、会場の装飾や展示などにすごくiVyらしさを感じました。キャパシティも大きくなっていく中で、今後iVyらしさをどうやってコントロールしていくか、ということについて考えることはありますか?

fuki:むしろ、もっとやりたいことができるんじゃないかっていう楽しみがあります。WWWのワンマンはやり切った感覚もあるし、みんなのおかげであそこまでできたけど、規模が大きくなることで、もっとできることも増えていくと思う。場所が大きくなっても、そこでできることを探すのを諦めたくない。全力でやり切ると思います。

pupu:やり切れるよね。

fuki:うん、やり切れる。

ーーキャラクターのiVyちゃんは、今後もずっと続けていく?

fuki:私たちのベビーなので。

pupu:iVyちゃんが自分で歩けるようになるまで育てます。

ーー……IP的な意味ではなく物理的に?(笑)

pupu:そうです、物理的に。

ーーiVyの活動を見ていると、今の時代におけるDIYについて考えてしまいます。たとえば90年代のDIYというのは、メジャーに対するカウンターというのがあったわけですよね。今はもっと純粋な自己表現としてのDIYに変わってきている気がしていて、iVyはその最もピュアなところを走っているように思うんですよね。

fuki:うん、やりたいことや表現したいことが尽きないんですよね。音楽もそうだし、ライブもそうだし、本当に尽きない。

ーーそれってどうしてなんでしょう?

fuki:根本に、悔しいっていう気持ちがずっとあるからだと思います。まだ伝わってない、まだ伝えたい、という感覚があって。音楽って受け手に委ねられる自由さがあるから、自分たちも自由でいられるけど、それとは別に「まだこんなもんじゃない」っていう気持ちがずっとある。WWWのワンマンでも、終わったら泣くのかなって思ってたんですけど、全然泣けなくて。まだまだだな、って思って泣けなかった。

ーーあれだけ作り込んでも、まだ伝えきれてない。

fuki:まだ伝えたいことがあるっていう感覚です。

pupu:ありすぎるよね。毎回ライブのあとに反省して、また次に進むっていうのを繰り返してる。めっちゃ反省してる。

ーーその「もっと伝えたい」という感覚って、子供の頃からあったんですか?

pupu:アウトプットすること自体は、ずっと好きでしたね。小さい頃から、ガラクタを集めて太鼓を作ったりとか、絵を描いたりとか。そういうアウトプット欲はずっとある。

fuki:私は何か作っても隠してしまうタイプだった。学生の頃も、本当に好きなものを恥ずかしくて言えなかったし、歌も好きだけど「気持ち悪いと思われるんじゃないか」とか思ってしまってた。だからiVyのおかげで、やっと自分を出せるようになったというか、すごく救われた感覚があります。

pupu:私は作るだけ作って自分の中で完結させてしまっていた。iVyでアートワークとかも含めて表現できるようになって、すごく開けた感じがある。

fuki:ガラクタが一気に外に出ていく感じだよね、言えなかった頃の自分も含めて、記憶から救いたい。

ーーそれが、創作の源泉になっていると。

fuki:pupuってほんとにすごいんですよ。手作りのぬいぐるみがいっぱい家にあってすごく可愛いんだけど、どこかに載せたりしないし販売したりもしない。pupuは自分の作るものを愛していて、私もそれを愛してるから、うまくいってるんだと思う。お互い作ったものを「可愛いでしょ」って見せて、「可愛いね」って返して、それがずっと続いてる感じだよね。

pupu:うん、そう思う。

ーーお二人、本当に出会えてよかったですね。

fuki:本当によかった。超えてる。

pupu:超えてるね。

ーーiVyの世界がどんどん外に広がっている中で、リスナーからもらった反応で印象的なものはありますか?

fuki:男女関係なく、年齢も関係なく、みんなが楽しんでくれてるんですよ。たとえば、自主企画で展示をやるじゃないですか。pupuがたくさん作品を作ってくれて、友達の作品も展示して。正直、みんな素通りしちゃうかなっていう時も、皆全くそんなことないんですよね。ずっとお客さんを見ていたら、年齢も性別も関係なく、「可愛い!」って言って写真を撮ってくれる。それが本当に嬉しくて。

ーー二人の関係性が空間に広がって、皆幸せなムードに包まれてるんだと思います。

fuki:皆あまり喋らないけど、ちゃんと見てくれてる。仕掛けを作れば作るほど、それに気づいてくれる。そういうのを見ると、音楽以上に感動する。これからも、二人の表現を追求していきたいと思います。

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