YXによるAOA「Miniskirt」カバー音源がバイラルチャートイン アンニュイな歌声でK-POPの名曲に再び脚光

Viral Chart Focus

 Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの3月5日付のTOP10は以下の通り(※1)。

1位:Odin Media「頑張って 元ネタ」
2位:=LOVE「劇薬中毒」
3位:かぐや(CV:夏吉ゆうこ), 月見ヤチヨ(CV:早見沙織), TAKU INOUE「ray (超かぐや姫! Version)」
4位:BellyJay「MONTAGEM HIKARI」
5位:kz, かぐや(CV:夏吉ゆうこ)「Reply」
6位:暴飲暴食P「うそつきマカロン (feat. 重音テト)」
7位:YX「Miniskirt」
8位:M!LK「爆裂愛してる」
9位:SANTOS BRAVOS「KAWASAKI (&TEAM Remix)」
10位:クレイジーウォウウォ!!「トンツカタンタン」

Miniskirt - AOA (Full Cover)

 今週は6位にランクインしたYXの「Miniskirt」をピックアップする。YouTubeやTikTok発のカバー音源がバイラルチャートインしてきたのは、同チャートにとってあまり見ないアクションだ。YXは中国出身のクリエイターで、TikTokを中心に歌唱動画を投稿している。AOAのほかにもBTS、SHINee、KATSEYE、ENHYPEN、NCT、Wonder GirlsなどのK-POPアイドルの楽曲や、サブリナ・カーペンターやジャスティン・ビーバーなどグローバルポップのカバーを発信。中国語、韓国語、英語の楽曲を横断する選曲が特徴だ。TikTokではこれまで34本(3月9日現在)の歌唱動画を公開しているが、そのうち3本が再生数1500万回超え、さらに3本が500万回超え、加えて15本が100万回再生を突破している。今回のバイラルチャートインは「Miniskirt」を2月6日に各音楽配信サブスクリプションサービスでリリースたことがきっかけだが、リリース前からその歌声で、確実にファンを獲得していたのだ。

AOA - 짧은 치마 (Miniskirt) M/V

 「Miniskirt」は、2014年に発表されたK-POPガールズグループAOAの楽曲。グループのブレイクを決定づけた代表曲として知られる。タイトスカートの裾に付いたジッパーを上げる仕草を取り入れたダンスが印象的で、当時のK-POPガールズグループのセクシーコンセプトを象徴するパフォーマンスとして強いインパクトを残した。YXのカバーでは、歌声の質感を前面に出したアレンジになっていることが拡散を後押ししたと考える。

 先述したTikTok再生数は、カバー曲のセレクトセンス以上に、YXの歌声の魅力がもたらした結果だろう。声質はハスキーでややチルなトーンを持ち、中低音域に重心が置かれている。息を多めに含んだ柔らかい発声でメロディをなぞるスタイルが特徴で、いわゆるアンニュイ系のボーカルに近い。TikTokなどで話題となる投稿の多くは、“日常の空気感”を切り取る表現が中心になる。そのため、YXの歌声は場所も時間も選ばず、動画全体の雰囲気を壊さない。映像を主役とするTikTokの音楽として機能しているのだ。

 今回のバイラルチャートの背景には、“K-POPノスタルジー”と“TikTokカバー文化”の交差がある。2010年代のK-POPは現在のグローバル市場を形作った時期でもあり、多くのヒット曲がアーカイブとして蓄積されている。TikTokではこうした楽曲が再発見され、カバーやリミックスを通じて再び流通するケースが増えている。AOAの「Miniskirt」も、その流れの中で再浮上した楽曲のひとつだろう。

 興味深いのは、ここで起きている事象が単なる懐古だけではない点だ。YXのチルな歌声は、2010年代K-POPの華やかなプロダクションとは対照的なムードを生み出し、そのギャップ自体が新鮮さとして機能している。K-POPという巨大なポップアーカイブと、TikTokのカバー文化が結びつくことで、楽曲は世代や国境を超えて再流通する。「Miniskirt」のバイラルは、そのプロセスを象徴する出来事として、現在のシーンの変化を示しているのかもしれない。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2026-03-05

K-POPとラテンアメリカの要素を取り入れたSANTOS BRAVOSがバイラルヒット &TEAMとの相性から生まれる化学反応

Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spot…

ミン・ヒジン新会社設立、イ・スマン復帰などで揺れるK-POPシーン “どこが”ではなく“誰が”作るかが注目される時代に?

2026年、プロデューサー/アートディレクターとして独自の世界観を築いてきたミン・ヒジンが新会社「ooak records」を始…

関連記事