Kroi、海を越えた至高のセッションーー「最高の経験」となった新曲制作の舞台裏、“憧れ”Incognitoへの想い

 R&B、ファンク、ソウル、HIPHOPまでを自在に横断し、5人のグルーヴで“今のミクスチャー”を更新してきたKroiが、新曲「Kinetic feat. INCOGNITO」を3月23日にデジタルリリースした。

 UKジャズ・ファンクの最前線を走り続けるIncognitoのリーダー、Jean-Paul “Bluey” Maunick(以下、ブルーイ)をプロデューサーに迎え、ロンドン東部のブルーイのスタジオ「Colibri Sound Recorders」でレコーディングを敢行。ホーンやパーカッションも現場のグルーヴに導かれるように加わり、Kroiのサウンドに新しい風合いを刻み込んだ。

 インタビューでは、そんな新曲制作の舞台裏とIncognitoへの思いを、メンバー全員にたっぷり語ってもらった。(黒田隆憲)

Incognito、ブルーイという“憧れ”に出会えた感動、共作を経てたどり着いた新境地

──まずは、Incognitoとのコラボレーションが実現した経緯をお聞かせください。

関将典(以下、関):イギリス・ブライトンで毎年5月に開催されるフェス『The Great Escape』に、Kroiが出演することになって。「せっかくイギリスに行くなら、向こうでも何か制作したいよね」という話になったんです。どうせなら現地のアーティストとコラボレーションをしたり、僕らとしても初めて“プロデュースをしてもらう”経験をしてみてもいいんじゃないか、と。現地のコーディネーターさんに相談したら、Incognitoのブルーイとコネクションがあるということで繋いでくださったんです。ありがたいことにブルーイからも快諾をいただき、実現しました。正直、信じられないような話でしたね。

──Incognitoは、皆さんにとってどんな存在なのでしょうか。

内田怜央(以下、内田):僕にとっては“原点”ですね。以前ドラムのレッスンに通っていたことがあるんですが、先生がIncognitoの曲を叩いていて、「これ、誰の曲ですか?」と聞いたのが最初の出会いでした。ファンクやソウル、ジャズみたいな音楽にちゃんと触れた最初の体験でもあって、「自分から聴こう」と思った出発点がIncognitoだったんです。

長谷部悠生(以下、長谷部):僕は高校の頃、ギターの先生にカッティングの練習曲としてIncognitoの曲を課題に出されたのがきっかけでした。ちょうどアシッドジャズを聴き始めていた時期でもあって、影響はとても大きいです。Kroiでもジャズファンク的なカッティングは重要なので、ギタリストとしての自分のルーツのひとつ、という感覚が強いですね。

益田英知(以下、益田):僕が出会ったのは大学生ぐらいの頃です。当時はOasisなどUKロックを中心に聴いていたんですけど、だんだんJamiroquaiみたいなアシッドジャズにも寄っていって、その流れでIncognitoに辿り着きました。各パートの音の立ち方の良さとか繊細さが衝撃的で、曲もたくさん聴いたし、練習もしましたね。

千葉大樹(以下、千葉):Incognitoって、ブラックミュージックが好きな人なら一度は通る道だと思うんですよ。アシッドジャズにハマって、結局IncognitoとJamiroquaiとBrand New Heaviesばかり聴く、みたいな(笑)。そこにTower of Powerも加えて、そこから鬼ディグしていく、入口的な存在でした。

関:僕は大学に入るまでは邦楽のバンドばかり作っていたんですけど、大学に入ってメタルに夢中になって、そこから洋楽も聴くようになっていきました。そのタイミングでアシッドジャズに触れました。みんなよりは遅れて聴き始めたんですけど、IncognitoとJamiroquaiをひたすらコピーしていた時期もありましたね。

内田怜央(Vo/Gt)
関将典(Ba)
益田英知(Dr)

──コラボが決まってから曲を作り始めたのですか?

内田:そうですね。さっきも話したようにIncognitoは自分の中で原点で、影響もかなり強いんです。だからそのまま消化しようとすると、「これIncognitoじゃん」っていうところまで寄ってしまいそうで、普段はなかなか真正面からやれない部分がある。でも今回は“Incognitoと一緒にできる”という前提があるので、そこはある意味、開放して作れたというのがまずひとつあります。

 もちろん、Kroiがこれまでやってきたサウンドやアプローチはちゃんと踏襲して入れていこう、という意識もあって。結果として、Kroiの楽曲としても今までになかったものになったし、Incognitoの濃さもKroiのエッセンスが入ることでまた違う形になった。そこはすごく良かったなと思います。

長谷部悠生(Gt)
千葉大樹(Key)

──「Kinetic」には“動的”や“移動”という意味があります。タイトルの由来は?

内田:デモを作っていて、最初に思い浮かんだのが「キネティックサンド」なんですよ。子どもが遊ぶ、形が残らない砂みたいなやつ。あの触感というか、形が固定されずに動き続ける感じがこの曲のイメージに近かった。というのも、コード進行がすごく“ぐにゃぐにゃ”動いているし、自分たちがこれまで影響を受けてきたいろんな要素が混ざった“ぐにゃぐにゃ感”もある。さらに、国を跨いだコラボレーションが、今はZoomみたいなものも含めて当たり前になってきていて、もっと“世界がぐにゃぐにゃに繋がっていく”感じがあるじゃないですか。音楽でも、いろんな場所がどんどん繋がっていく。その感覚を上手く表したタイトルになったと思いますね。

──歌詞には、どんな思いを込めましたか?

内田:自分たちが音楽に真面目に向き合って、「作りたいものを作っていこう」って切磋琢磨していたら、想像もしていなかった夢が叶うんだ、ということです。Incognitoとコラボできるなんて、正直すごすぎて、若い頃ですら具体的に思い描けていなかった。でも、夢って持っていいんだと思えたし、叶う可能性もある。そういう意味で、憧れに“出会えた”感動は、どうしても歌詞に入れたかったんです。

Kroi - Kinetic feat. INCOGNITO [Official Video]

──デモを完成させ、ロンドンに行く前にもブルーイとやり取りはありました?

内田:「ここをもう少しこうしよう」とか、ブルーイから「こういうアイデアはどう?」みたいな提案をもらったりして、何往復かやり取りしました。尺感はその時点である程度できていたと思います。音色やアレンジなど、音作りは現地で決めていきましたね。3日間くらい「Colibri Sound Recorders」(ブルーイの所有するプライベートスタジオ)に入って、初日は音作りをしながら(アレンジを)探っていった感じです。

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