映画『万事快調』対談:児山隆監督×NIKO NIKO TAN TANが語り合う、ものづくりの真髄と「Stranger」誕生秘話

原作にはなかった台詞やシーンの意義、幸運な出会いが導いた最高のものづくり

ーー映画や原作では、閉鎖的な空間の中で鬱屈した気持ちを抱える3人の姿が描かれています。お二人は、10代の頃に「ここから出たい」とか、映画の主人公たちのような感情を抱えていた時期はありましたか?

Anabebe:僕はどちらかというと、ずっと街のほうで育ってきたので、強烈に「出たい」と思っていたわけではないですね。ただ、嫌なことはありました。小学校の頃に「早く卒業したいな」と思っていた感覚は、今でもよく覚えています。

OCHAN:僕は田舎出身なので、とにかく「外に出たい」「ここじゃないどこかへ行きたい」と、そればかり考えていました。家庭環境は、この映画みたいに特別に過酷だったわけではなくごく普通だったんですけど、それでもどこか閉塞感はあって。不満はないけど満足もしていないまま、淡々と生活していくことへの“怖さ”みたいなものがずっとありました。物も少ないし行ける場所も限られている中で、高校の頃にバンドに出会って音楽を始めたことは、自分にとって本当に大きな転機でした。

ーー映画の中で、ジャッキーが「時間が止まっているような、進んでいるような、どちらも感じて怖くなった」と語るシーンがあります。原作にはなかった台詞ですが、強く共感しました。

児山:ありますよね。お酒を飲んでいる時なんか、特にそう感じる瞬間があって。ふと「もうこんな年になっちゃったな」とか、「何も前に進めていないんじゃないか」という不甲斐なさが、急に押し寄せてくる。時間が「ただ流れていくもの」じゃなくて、溜まったり、積み重なっていくもののように思えてきて。「え、これ、今は進んでいるはずなんだけど……」みたいな感覚になる。あの台詞は、そういう実感を、ちゃんと彼自身の言葉としてジャッキーに言わせたかった、という思いがありました。

ーー東京へ出てくるシーンも、小説にはなかったですよね。

児山:はい。たとえば『トレインスポッティング』で、エディンバラからロンドンへ移動する場面が強く印象に残るように、田舎から都会へ出たときに生まれる疎外感ってやっぱりあると思うんです。地元にいる時には漠然としていた違和感が、場所を変えることでよりはっきり可視化されるというか。映画としても、物語のクライマックスーーある種のカタルシスを作るために、東京のシーンは必要だと感じていました。

ーー「より大きな闇に飲み込まれかける」という意味でも、重要な場面ですよね。

児山:そうですね。一歩間違えれば、彼女たちはもっと暗い場所へ行っていたかもしれない。でも今回は、ぎりぎりのところで踏みとどまれた。その分岐点として東京のパートを加えています。

 ちなみに取引のシーンは、渋谷・東急本店の跡地で撮影しました。最初は廃墟になったレンタルビデオ屋のような場所を探していたんですが、なかなか条件に合うロケーションが見つからなくて。そんな時に「今、すごくいい場所がありますよ。しかも数カ月後には使えなくなります」と言われたんです。それなら、と設定を少し調整して東京パートに組み込みました。結果的に、物語の流れを決定づけるインパクトの強い映像になったと思います。

ーーふとしたきっかけで手に入れたあるものを栽培し、一攫千金を狙う。しかもタバコを吸ったり、お酒を飲んだりと、10代の主人公たちはかなり無茶なことをしているのに不思議とスカッとするというか。露悪的ではない潔さを感じました。ある意味、パンクを聴いた時の感覚に近いのかもしれません。

児山:なるほど。確かに、いろんなものに対する好奇心というか、自分が「面白い」「感動した」と思ったものまで否定したくない気持ちはずっとありました。「わかる人にだけわかればいい」とか、「どうせわからないだろうな」といった作り方はあまりしたくなかったんです。もちろん構造的に読み解いたり、「ここはこういう意味だよね」と分析して楽しむのも全然いいし、それは僕自身も好きです。一方で、「よくわからなかったけど、なんか面白かった」という感想も、同じくらい大事だと思っていて。

OCHAN:「よくわからなかったけど面白かった」って、すごくいい経験ですよね。僕も若い頃、『マトリックス』は正直よくわからなかったけど、めちゃくちゃかっこよかったと思っていたし。今観ると「あ、こういうことか」ってわかる部分も増えているんですよね。ジブリ作品も同じだと思うんです。中学生や高校生の頃に、「よくわからんけど、なんか気持ちよかった」「面白かった」と思える映画に出会えることって、すごく大事。今回そういう可能性を持った作品に音楽で関われたことは、本当に光栄でした。監督が考えていること、作ろうとしていることの“最後のピース”として、僕らが音楽で関われた……その事実自体が、すごくありがたいです。この映画がなかったら、「Stranger」という曲は絶対に生まれていなかったと思います。

児山:お題がある面白さって、確実にありますよね。「このお題でどうですか?」って投げられて、それにフルスイングで応えてもらう感じ。あれは想像以上に気持ちいい。もちろん、お題が難しすぎたり、正直あまり魅力を感じられないものだったら成立しない。でも、「これは絶対に面白くなる」と思える“美味しそうなお題”に出会えた時は、ものづくりとして最高の状態になる。僕自身、別の仕事でもそういう瞬間を何度か経験してきましたし、『万事快調〈オール・グリーンズ〉』を映画化しませんか、という話自体が、自分にとってはまさにそういうお題でした。

 改めて、本当にすごく幸運な出会いだったと思っています。最近は、縁とか繋がりみたいなものを、以前より強く意識するようになっていて。NIKO NIKO TAN TANのお二人もそうだし、ビクターの皆さんもそうですが、関わってくださった人たちにかっこ悪いところは見せたくない。だからこそ、ちゃんと良いものを作り続けたいし、自分が本当に“良い”と思えるものや自分が好きなものを作って、また会える関係でいたい。そのためにも、頑張り続けたいと思っています。

■リリース情報
NIKO NIKO TAN TAN
「Stranger」
12月3日(水)配信リリース
配信リンク:https://nntt.lnk.to/Stranger

■映画情報
『万事快調<オール・グリーンズ>』
脚本・監督:児山隆
出演:南沙良、出口夏希
主題歌:「Stranger」 NIKO NIKO TAN TAN
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
映画公式サイト:https://www.culture-pub.jp/allgreens/

■関連リンク
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