BE:FIRST「空」は聴くたびに進化する 音源・パフォーマンス・MV……深まっていく物語と世界観

 9月17日、BE:FIRSTが8thシングル『空』をリリースした。表題曲「空」は『第92回NHK全国学校音楽コンクール』中学校の部の課題曲として書き下ろされ、7月7日に先行配信リリースされて以降、話題を集めてきた楽曲だ。作詞作曲を担当したSKY-HIは「とにかく『大丈夫』を伝えたくて、この曲を作りました」(※1)と語っており、その言葉どおり澄んだメロディと柔らかいハーモニーに乗った歌詞がリスナーの心にスッと届いていく。

 音源を聴いて感じるのは、難解ではないシンプルな構成ゆえに楽曲の魅力が純度高く伝わってくるということ。中学生という多感な年頃に向けて書かれた楽曲らしく、そっと寄り添い、背中を押すようなメッセージが感じられるのではないだろうか。もちろん、中学生だけじゃなく大人世代に対しても「そのままでいい」と肯定しているようで、勇気づけられた人も多いはずだ。

BE:FIRST / 空 -from TBS系「CDTVライブ!ライブ!」-

 同曲の魅力をさらに引き立てたのは、現在期間限定でBE:FIRST公式YouTubeにて公開されている『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)でのパフォーマンス動画だ。8月18日の放送で披露された同パフォーマンスは、楽曲が持つメッセージを体現するような仕上がりになっている。メンバーが横一列に並び、それぞれが丁寧に歌詞を伝えるような歌い方は、合唱曲らしい温かさを持ちつつ、BE:FIRSTらしいソウルフルさも感じられる。特にシンガロング部分ではゴスペルを思わせる力強さがあり、思わず一緒に歌いたくなってくる。

BE:FIRST / 空 -Music Video-

 そして、9月15日には待望のMVが公開。監督を務めたのは、映画『愛がなんだ』や『窓辺にて』、『ちひろさん』(Netflix)などで知られる今泉力哉だ。MVにおいても派手なCGやダンスシーンは採用されておらず、今泉監督らしいストーリー仕立てで進んでいく。物語はSHUNTOと喧嘩したJUNON、それを心配するLEOの描写から始まる。JUNONは帰り道にメンバーが扮する街の人々の小さな優しさに触れ、SHUNTOに謝りにいく。そして、そんなJUNONから小さな優しさをもらうRYUHEI……というように、思いやりが連鎖していく様子が描かれており、観る者の心を温めるような作りになっている。そして、観終えた後には「自分も誰かに優しくしたくなる」というような余韻を残す。

 正直、筆者が楽曲を一聴した時は「合唱向けに作った楽曲」という印象が強かった。しかし、“SKY-HI×BE:FIRST”の楽曲はそれだけに留まらない。楽曲を聴くことで励まされ、パフォーマンスからは動き出したくなるエネルギーを受け取り、MVからは心に変化がもたらされる。3段階で感情が動かされる、深く、素晴らしい作品である。「空」というタイトル通り、この曲は広がり続けている。もしかすると、パフォーマンスを生で観た時、そしてそれらをさらに噛み砕いてみた時に、まだまだ魅力が広がっていくかもしれない。進化し続けていくであろう「空」を今後も大切に聴いていきたい。

※1:https://www.nhk.or.jp/ncon/music_program/kadaikyoku_j2025.html

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