2025.07.12 18:30

乃紫やtuki.に続くTikTokで話題の17歳シンガーソングライター　あみゅり、若年層を中心に共感を呼ぶ新たな才能

　一方、6月30日に配信された2ndシングル「りなちゃん」にも言及せずにはいられない。現代社会に蔓延る「ルッキズム」にフォーカスし、「私が世界で1番醜く、世界で1番可愛い女の子」とうたってビジュアルに対する美学や価値観を歌った本楽曲では、全てを持ち合わせている女の子「りなちゃん」を羨ましがる自分を憎む複雑な心境を表現した。さらに、あみゅりは「顔にコンプレックスはありまくりだけど、それでも生きていかなきゃいけない」「容姿にコンプレックスがあることで心まで醜く、不健康になっていってしまっては良くない」と主張。〈いちばん私を否定してるのは/AくんでもBさんでもりなちゃんでもなく/私なんだよな〉と核心を突き、変わりたいなら変わる努力をしないといけないと伝える歌詞は、初めて聴く人の心にも大きく響くのではないだろうか。

あみゅり-りなちゃん(Official Video)

　音楽面に注目してみると、基盤となるベースやドラムは生っぽさが心地よいロックテイストで、その上に電子的な効果音やシャッター音など、遊び心満載のサウンドをオン。とりわけこだわったのが中盤に差し掛かる間奏部分で、『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーが出てきそうな荘厳な雰囲気をイメージしたという。曲のスパイスとなる、空気を変えるような音のパートなのだが、こうした音の作り方もあみゅりが包含する影のような雰囲気によく合っている。ちなみに、マスタリングはレディー・ガガを手がけたクリス・ゲーリンジャーにオファーしており、こちらもビッグネームに携わるスペシャリストとの夢の作品だ。

あみゅり「Poker Face」

　そして、7月12日リリースの新曲「Poker Face」も必聴だ。アニメ『名探偵コナン』（日テレ系）のオープニングテーマに起用されている本楽曲は、再生ボタンを押した瞬間から打ちつけるビートと宇宙空間を揺らめくような不穏な電子音が耳に飛び込み、〈シリアス、キュリアス、ミステリアス〉とテンポ良く聴こえてくる。最初に聴いた時、どこか掴みどころのない、楽曲の解釈の仕方を聴く人に委ねられているような印象を感じたのだが、あみゅりも本作について「自分が何を言いたいのか最後までわからなかったし、複雑な気持ちを整理せずに、感情のままに一気に描いてしまったというか。とてもごちゃごちゃしてる」と語る。その背景には「あんまり人間味がない」というあみゅり自身が持って生まれた均一的な感情があるそうだ。だが、「綺麗にまとめたくなかったので、この雑さが17歳の私らしくていい」と言うように、どこか脆さや儚さも含んだ今のあみゅりの音楽が謎に満ちた『名探偵コナン』の世界観にもしっくりくるのではないだろうか。

　そもそも、あみゅりが音楽を始めたきっかけ・原動力は、自分の中に常にある「今に見てろよ」というような悔しい想いだという。「歌を始めてからというもの、今となっては彼女の強みである低音の効いた歌声で求められる自分になればなるほど、心ないアンチが増え、なりたい自分とかけ離れていった」と明かす心情には、アーティスト以前に一人の人間としての叫びが滲んでいる気がする。軸にはそうした負の感情を持ちながら、似た感情を覚える誰しもが共感できる音楽性は、きっとこれからの時代に一層強く求められていくものだろう。TikTokからブレイクした「全方向美少女」の乃紫や、「晩餐歌」でブレイクしたtuki.など、近年数多くの女性シンガーソングライターが台頭する中で、あみゅりがそこに続く存在になる日もそう遠くないはずだ。