でんぱ組.inc、第3期BiS、神宿……10年以上続いたグループの解散/活動休止 2024年アイドルシーン振り返り
2024年4月、アイドルシーンに激震が走った。そう、でんぱ組.incが2025年にエンディングを迎えることを発表したのだ。でんぱ組.incといえば、2010年代のアイドルシーンをオタク文化をもって牽引し、多くのアイドルたちに影響を与えてきた。近年は多様なあり方を提示し続けてきたグループでもあり、多くのアイドル、アイドルファンがそのニュースに衝撃を受けた。ひとつの時代が終わる、そう感じたファンも多かっただろう。
そんな衝撃的なニュースが舞い込んだ2024年春。この1年を振り返ると、でんぱ組.incをはじめ、第3期BiS、神宿、真っ白なキャンバス、Devil ANTHEMといったグループが解散、活動休止を発表した。彼女たちが結成された2010年代を比べると、近年のアイドルシーンはより一層の多様化が進み、特にここ数年はSNSを活用した活動が鍵を握っている。解散に至る経緯や理由についてはそれぞれ異なっているが、これらグループの相次ぐ解散や活動休止は、時代の変化を如実に表していると言えるだろう。
解散を決断するアイドルがいる一方で、今年はFRUITS ZIPPERらが所属するアソビシステムのプロジェクト・KAWAII LAB.からSWEET STEADYとCUTIE STREETの2組がデビュー、「IDOL3.0 PROJECT」から誕生した秋元康総合プロデュースのWHITE SCORPIONの姉妹グループ・Rain Treeの結成が発表、それに加えて、同じく秋元が手がける乃木坂46の公式ライバル・僕が見たかった青空をはじめ、今年メジャーデビューを果たした高嶺のなでしこの好調ぶりも目立った。近年は従来のパフォーマンスや見た目といった要素のほかにも、特にSNSを上手く活用できるかが求められており、今年ブレイクしたグループは、その時代の波に乗れているのが好調の要因と言える。
2007年にオープンした秋葉原ディアステージからスタートしたでんぱ組.incは、いくつかのメンバー変遷、グループの方向性の模索を経て、2014年に日本武道館公演、2015年には国立代々木競技場 第一体育館など、アイドルとして誰しもが憧れるステージを経験。日本において当時はまだまだマイナーな存在だったオタク文化をカジュアルなものとして発信し、ゲーム、アニメ、アイドル、コスプレなど、様々な文化を内包した独自のアイドル像を作り上げてきた。でんぱ組.incのエンディングは、日本のアイドル文化の一時代の終焉を意味していると言っても過言ではない。
2024年10月8日の“でんぱの日”に豊洲PITで行われた公演を皮切りにスタートした全国ツアーを経て、2025年1月4日、5日に『でんぱ組.inc THE ENDING「宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!」』を開催する。今回でんぱ組.incは、解散ではなく“エンディング”と表現している。その理由について、メンバーの相沢梨紗は「今ここまでたどり着いて、今いるメンバーでこれまでのでんぱ組.incの歴史にエンディングを作って、これからは私たちも含めて一緒に応援してきてくれたファンの方と『でんぱ組.incってこうだったよね』みたいなのを楽しんでいきたい」「アニメの最終回みたいな雰囲気にしたいなと思ってエンディングを迎えます」と語っていた(※1)。そこには最後のゴールはハッピーエンディングで終えたいという彼女たちの美学のようなものが表れている。
第3期BiSは、2025年1月12日に東京・日比谷公園大音楽堂にて解散ライブ『Finale of third BiS』を開催する。2010年に第1期BiSが結成されると、一度2014年に解散を発表。しかし、2016年から2019年まで第2期BiSとして、それ以降は第3期BiSとして活動していた。2024年4月からは原点回帰となる“自給自足体制”でプレイヤー兼マネージャーとして活動していたが、「これ以上の活動継続は難しい」(※2)ことから解散が発表された。第3期BiSになってからはコロナ禍が重なったこともあり、今後のあり方も含めて模索しながらの活動となったが、今年4月に決断した自給自足体制も状況を打破したいというメンバーと運営側の思惑が見て取れた。
14年もの歴史のあるBiSは、メンバーの入れ替わりを多く経験し、運営方法を模索したものの、その名を受け継いでいくという、最適な持続の方法を見つけるのが難しかったということなのだろう。だが、同時に“BiS”の名を10年以上にもわたって存続させ、アイドルシーンに影響を及ぼしてきたのは彼女たちの強さであり、最大の功績だ。それだけに、今回の解散は悔やまれる。しかし、また第4期という形での復活も可能性としてはなくはないだろう。