Suspended 4th、過渡期をパッケージした変化の作品 新たなサスフォーの完成に向けた現在地を語る
今までとは楽しみ方が違う
一一はい。続いては一番驚いた曲。「Mantaray」。なんでアコースティック、しかもトラディショナルフォークをやろうと?
Sawada:でも元を辿ると、僕とWashiyamaが最初に始めた時、まだ二人しかいない、どういう音楽をやるかも決まってない状態で、アコギ持って作った曲があるんですよ。YouTubeに今も上がってる、一番最初にアップロードされた曲。それはアコギ二重奏なんですよね。だから突然現れた感じでもないんだよね。
Washiyama:まぁ一応フラグ回収っていう(笑)。あとは、ハードロックバンドがアコギで、いわゆる変則チューニングで、ちょっとバラードっぽい曲やったりするじゃないですか。
一一アルバム後半にチョロっと入るタイプの曲ですね。
Washiyama:そうそう。けっこう情景が見える曲、スッと世界観に入っていける曲を今後やっていきたいなと思っていて。その先駆けとして書いてみた。
一一演奏とアレンジは、これまでの延長でできるものでした?
Sawada:や、全然違う引き出しが必要でしたね。でもレコーディング自体はけっこう楽しい雰囲気で。プライベートスタジオで録ったんですけど、さっき言ったKentaro Yoshimuraくんにドラムを叩いてもらって。ドラムとベースを一緒にまず録って、その音を聴きながらみんなで踊ったりしながら、ワイワイ楽しい空気のレコーディングでしたね。
Fukuda:そう。けっこうデニスが入ってからのサスフォーって、和気藹々とした雰囲気がなかったんですよね。仲が悪いって意味じゃないけど、友達同士で飲んで「イェーイ」みたいなムードはなくて。でもこのレコーディングは、なんか友達と合宿してる感じだった。
一一その空気、伝わります。コーラスとか本当に楽しそうで。
Washiyama:良かったです。ステージとかライブでもそういう空気感になったら嬉しいなと思うし。今までメジャーコードの、長調の曲がなかったんで。
一一……はははは。
Sawada:あんまりないね。
Washiyama:あんまりっていうか、ない(笑)。今までの世界観、特に『Travel The Galaxy』の時はコロナもあって、鬱屈した世界観から抜け出したい、みたいなテーマが多かったんですよね。でも、そういう曲ばっかりだと自分が辛くなる。
一一そういうものですか?
Washiyama:それは辛くなりますよ。だって毎日ハッピーなのに、演奏の時は鬱屈としてなきゃいけない。
一一あぁ、呪縛が生まれてしまう。
Washiyama:たぶんみんなあると思いますよ。特に歌を歌う人は。自分で書いて言葉にしてると、それが全部自分に返ってくる瞬間があって。そういう辛さから癒されるためにも、こういうハッピーな曲も今後は作っていこうと。もちろんある種の記憶として、当時の歌をまた歌いたいと思う時期もあると思うけど。今はもっと楽しくいこうぜって感じです。
一一あとは、こういう柔らかい曲だから出てくる言葉もありますよね。
Washiyama:ほんとそうですね。やたら愛を語れる。
Fukuda:素晴らしいですよ。今まで「もういい」とか、ずっとブチギレてる感じだったのに。〈愛がこぼれそうだ〉とか、こいつの口から出てくるんだから。
Sawada:素敵ですねぇ。
Washiyama:ほんとは素敵な人間なんで(笑)。
Sawada:ライブで俺らがアコギに持ち替えた瞬間、みんなが嬉しくなるような感じだったらいいよね。おっ、今日は「Mantaray」来るぞ! みたいな。
Washiyama:今日はブチギレてない、ハッピーな方向だぞ、みたいな。
Sawada:そういう感じに育ってくれたらいい曲ですね。
一一可能性が広がります。続いて、これも意外でしたね。「Future Knows」。歌ものと呼ぶべきなのか、メロディ主体で進んでいく曲。
Washiyama:そうやって聴いてもらえたなら嬉しいですけど、実は、めちゃくちゃエフェクターとか音響機材を使いまくるっていうテーマで。ただ、そのままやってしまうとシューゲイザー寄りになってしまうから。それで、あえてメロは歌ものっぽくシンプルに、ビートもシンプルに。ベースもスラップも実はないし。
Fukuda:いや、実は、って言うまでもない曲だけど(笑)。コーラスっていうエフェクターをかけて、かなりふわっとした雰囲気になってますね。ギターも全体にリバーブかけて。いわゆる空間系って言われるエフェクターはあんまり使ってこなかったんですけど、この曲に関しては世界観とマッチするように。ほんとエフェクターがメインですよね。
Sawada:今改めて振り返ってみると、この曲に限らず今回の新曲って、自分たち個人の表現というよりは、Washiyamaが書いてきた楽曲に対して、これを成立させるためにどういうアプローチをするのか。それをみんなやってた気がしますね。『Travel The Galaxy』の時は、いかに自分の必殺技を曲に出していくか、だったんですけど、それとはまたベクトルが違う表現。
一一まず俺の武器ありき、じゃなくて、まず曲の世界観ありき。
Sawada:そうそう。その曲の中で自分がどうあるか。
Fukuda:バンドになったのかもしれない。ようやく
一一今言いますか?
Sawada:このアルバムに良さを感じてくれる人がいるとしたら、その人は、バンドっていう存在そのものが好きなんだと思うんですよ。で、前のサスフォーが好きだと思う人は、それぞれプレイヤーとかキャラクターみたいなものが好きなんだと思うし。そこの主張は今回奥ゆかしくなってるから、もしかしたら物足りなく感じるかもしれませんけど。
一一賛否両論あるかもしれないと知りながらそう語れるんだから、スタイルが変わりつつある今を肯定しているわけですよね。
Sawada:そうですね。今だからできることでもあるし、それを楽しんでやってる。今までとは楽しみ方が違うというか。
Fukuda:あぁ、前は、戦ってた、に近いかもしれない。
Washiyama:対バンとか共演するアーティストとか、最近はあんまり意識しなくなってるかもしれない。張り合ってない。「Future Knows」」の歌詞にある〈War is over〉っていうのも、そういうところで出てきた歌詞ですね。音の良し悪し、演奏の上手い下手、そういう戦いはもう終わろう、と思って。
一一スリルとスピードとテクニックで勝負する、そういうサスフォーのスタイルはいったん置いておいて。
Washiyama:うん。そういう曲を書きたい気持ちが最近はないかもしれない。いっぱい出してるし、納得のいくものができてるから。そうじゃない別の世界観、俺らに表現できる新しいサスフォーが見たいなって思うんですね。
Sawada:我々的には過渡期というか。変化してる途中をパッケージングした感じ。で、今もなお変わってるんで。だからライブに来てほしいなって思いますね。たぶん今が一番、追いかけるなら面白い時期だと思います。
一一過渡期という言葉はよくわかります。次とかその次あたりで「あぁ、転機はここだったのか」って思うんだろうな、と。
Fukuda:うん。実は次もあるんですよ。もっかいミニアルバムが春ぐらいに出るんですけど。今回の『STORMED』は本来フルアルバムを出すつもりで作ってた曲たちで、それが二分割されてる。だから次に出る作品までが過渡期のSuspended 4thなんですよ。で、その次から、たぶん完成していくと思うんで。
Washiyama:いや、俺もうちょいあると思う、完成まで。
Fukuda:まぁまぁまぁ、今は過渡期です。もうしばらく過渡期。
Sawada:いつまでも過渡期過渡期って言いながら続けてるかもしれないね(笑)。
■リリース情報
2ndミニアルバム
『STORMED』
発売:2024年11月20日(水)
¥2,750(税込)
配信・ストリーミングはこちら
<DISC1>
1.HARD GRAVITY
2.CULT SPEAKERS
3.STORMED
4.Mantaray
5.Future Knows
6.SLIDE DOWN
<DISC2>
『STORMED(Instrumental)』
1.HARD GRAVITY(Instrumental)
2.CULT SPEAKERS(Instrumental)
3.STORMED(Instrumental)
4.Mantaray(Instrumental)
5.Future Knows(Instrumental)
6.SLIDE DOWN(Instrumental)
■ライブ情報
『Suspended 4th pre.「Crossroad Jam」』
11月24日(日)Spotify O-WEST
w/ TENDOUJI
11月28日(木)ell.FITS ALL
w/ BUXUS
12月17日(火)ell.FITS ALL
w/ ODD Foot Works
■関連リンク
Suspended 4th 2nd Mini Album「STORMED」特設サイト
Suspended 4th オフィシャルサイト
Suspended 4th PIZZA OF DEATH オフィシャルサイト