chelmico「LIGHT UP」は横浜の夜を彩る“ヤバい”ダンスチューンに 初の海外公演、主催イベントへの意気込みも

 ワンマンツアー『ati natu tour(zansyo)』を終えたばかりのchelmicoが、早くも新曲「LIGHT UP」をリリースした。この曲は、神奈川県・横浜の40以上のスポットで繰り広げられるイルミネーションイベント『夜の横浜イルミネーション2024-25』とのコラボ企画により書き下ろされたもの。『Beatport Next Artist 2024』にも選出された、気鋭のトラックメイカーStones Taroによる幻想的かつエッジの効いたハウスビートの上で、2人のラップが入り乱れる生粋のダンスチューンに仕上がっている。11月22日には初の海外公演となる台湾ライブ、12月には梅田サイファーを迎えた主催イベント『カンパイランド』も控えているchelmicoの2人に、新曲の制作エピソードはもちろん、多忙だった2024年を振り返ってもらった。(黒田隆憲)【記事内ライブ写真はすべて『ati natu tour(zansyo)』東京公演より】

一見キラキラして楽しい曲だけど、ちょっとヤバいことをやっている

「LIGHT UP」ジャケット

──今回のイルミネーションイベント『夜の横浜イルミネーション2024-25』はタイトル通り会場が横浜ですが、Rachelさんは横浜に住んでいたことがあるんですよね?

Rachel:そうなんです。でも最近全然帰ってなくて、今回のイベントで久しぶりに地元に戻るきっかけができました。地元の友達からは、「横浜でイルミネーションの曲を担当するなんてすごいことだよね」と連絡ももらったし、ちょっとした凱旋気分ですね(笑)。

──Mamikoさんも、横浜とは縁が深いとか。

Mamiko:はい。亡くなった祖母が横浜に住んでいて、子どもの頃は家族で逗子へ行った帰りに寄ったりしていました。母方の親戚は今も横浜に住んでいるし、私も定期的に歯医者さんに通っています。友達と遊ぶ時も横浜に行くことは多くて、みなとみらいや赤レンガ倉庫の辺りにもよく行くので馴染み深い場所ですね。

──では今回のコラボソング「LIGHT UP」は、どのように作っていきましたか?

Mamiko:イベント側からは、「イルミネーション」や「横浜」というワードを入れてほしいと言われたくらいで特に細かい指定はなかったんです。私たちとしては、しっとりした感じより明るく盛り上がる雰囲気がいいかなと。いつも私たちのトラックを担当してくれているRyo Takahashiくんが、以前から「Stones Taroと一緒にやってみなよ」と言ってくれていたのもあり、今回アゲアゲな感じにするにはぴったりだなと思ってお願いしました。

chelmico

──実際に上がってきたトラックについて、お二人はどう感じましたか?

Mamiko:めちゃめちゃかっこいいなと。今までにないタイプのトラックで、最初はどうやってラップを乗せようか考えたのですが、実際にやってみたらものすごくしっくりきて。「相性いいかも?」って思いましたね。構成も面白いし、ちょっと変わっているんですけど、そこがまたアガれる要素になっていて。Stones Taroさんならではの味がたくさん入っています。

Rachel:しかも、仕上がりもめちゃくちゃ早かったんですよ。お願いしてから2~3日後にはデモが送られてきて、このスピード感で仕事ができるのは心強かったですね。トラックのキラキラした上モノと、ゴリゴリのベースがイルミネーションの光とリンクしている感じとか、街中で流れたらヤバいことになるだろうなってワクワクしました。Stones Taroさんの、ちょっとした悪戯心みたいなものを感じたというか。一見キラキラして楽しい曲なんだけど、ちょっとヤバいことをやっているのはchelmicoも好きなスタイルなんです(笑)。なので「早くリリック書きたい!」ってなりました。

──実際、どんなことをイメージしながらリリックを書いたのですか?

Rachel:今回は「光る」というテーマがシンプルにあったので、それをそのまま表現したくて。あえて他のモチーフは入れず「光」だけにフォーカスして、〈Light up〉や〈illuminate〉といったワードを散りばめていきました。難しいメッセージを込めるより、みんなが両手を挙げて楽しめるような曲にしたかったんです。なので自分も書きながら体を動かしていました(笑)。

Mamiko:私は今回、「ギャルっぽくしたいな」という気持ちが湧いてきて(笑)。こーんなに長い爪したギャルの、「横浜、行きたーい!」みたいなテンションで書いてみました。〈キラキラ〉〈ピカピカ〉で韻を踏みつつ、「横浜にいる私がいちばん輝いてる!」とみんなが思うことで、横浜という街全体が盛り上がっていくような曲になればいいなと。

──アートワークもすごくカラフルで印象的ですよね。

Rachel:もともとchelmicoのジャケットはカラフルなんですけど、その中でも今回は特に眩しいですね。蛍光色でビカビカって感じ。デザイナーは今回も大倉龍司くんが担当してくれているのですが、「眩しすぎる感じにしたいんだけど」と言われ、「どういうこと?」と思いつつ「とりあえずやってみて」と(笑)。そしたら今までで一番カラフルなデザインが上がってきました。よくDJやプロデューサーがノンクレジットで出すダンスミュージックのアナログみたいな、そんな雰囲気が漂っているのも素敵です。

初の海外公演、主催イベント『カンパイランド』に向けて

──11月22日には台湾でのライブも控えていますが、今はどんな心境ですか?

Mamiko:初の海外公演がやっと決まって本当に嬉しいです。台湾に住んでいる方たちからは、以前からSNSにリプライやメッセージをいただくことが多くて。「(向こうにファンが)いるんだろうな」と思っていたし、実際にこの目で確かめられることが感激です。ワンマンと、あとフェスにも出演するので定番の曲をたくさんやって、多くの人たちに広まればいいなと思っています。

Rachel:台湾の音楽シーンはとても豊かでジャンルも多様。先日、『金音創作奨』(中華圏のグラミー賞と呼ばれるアワード)をナビゲートする番組に出演したのですが、そこでもさまざまなジャンルのアーティストがノミネートされていました。そんな豊かなシーンでchelmicoの音楽が受け入れられるなら最高ですし、受け入れてもらえる自信もあるので、それが楽しみです。

Mamiko:ただ……MCがどうなるかはちょっと心配なんですよ(笑)。

Rachel:そうだね(笑)。chelmicoのライブってMCが多いので、つたない台湾語や英語を交えながら話すことになりそう。身振り手振りがいつも以上に大きくなって、バイブスがさらに強まる感じになるんじゃないかな。段取りはある程度考えるけど、実際にステージに立ってみてお客さんの反応を見て、そこから自然に出てくるものがあると思うので、自分たちがどんな感じになるのか、それも含めて楽しみですね。

──お二人とも台湾は初めてなんですね?

Mamiko:そう、行ったことないんですよ。映像チームのタッツくん(仲原達彦)がよく台湾に行っていて、今回も同じ時期に来てくれるので、いろいろ教えてもらいながら買い物などしたいです。古着屋さんとかも行ってみたいですね。

Rachel:私はクラブや夜市などナイトライフも楽しみたい。あと、ちょっと遠出もしてみたくて、台湾の映画に出てくるような、のどかな風景とかも見てみたいです。

──さらに、12月には主催イベント『カンパイランド』もあります。こちらはどんなイベントですか?

Mamiko:私たちが仲良くなりたい人を呼んで、一緒にカンパイするイベントです。2回目のゲストのCody・Lee(李)さんとは一度ライブに呼んでいただいたご縁があり、TBSの番組でもエンディングとオープニングをそれぞれ担当した仲でしたので(笑)、「ぜひ!」とお願いして出てもらいました。

 初回に出ていただいたyonigeさんも友達ですが、ライブでご一緒する機会があまりないのでぜひ呼びたいなと。そして今回のゲストである梅田サイファーさんは、4月の単独ライブにゲストで呼んでもらったんです。打ち上げで「また絶対やろうよ!」と盛り上がったので、これは熱が冷めないうちに『カンパイランド』に呼ばなきゃ……と(笑)。すでに仲良くなっている人でも、新しく繋がった人でも、呼びたいと思ったらお声がけするのが『カンパイランド』です。

Rachel:「人と人の縁」というかね。そして『カンパイランド』を私たちの“城”みたいに広めていきたいなと思っています。そのために、定期的に開催していきたいですね。みんなが集まれる場所を作れたら嬉しいです。

Rachel
Mamiko

──梅田サイファーさんの魅力はどんなところにあると思いますか?

Mamiko:とにかく明るいし、みんな気さくで話しやすいんですよね。シャイなメンバーもいるんだけど、「みんな本当にラップが好きなんだな」って感じが伝わってきます。それにRIP SLYMEが好きなメンバーも多いんですよ。

Rachel:みんなそれぞれ個性があって、全員かっこいいんですよね。大人数で、それぞれがしっかりしたキャラ立ちしているのも素敵。彼らを見ていると、絵本の『こんなこいるかな』を思い出すんです(笑)。みんなが自由にやっているけど、一つの共同体として成立している感じというか。chelmicoはコンパクトなユニットなので、そこに混じることで、もっと開放的に、各自の個性が出せるステージになったらいいなって思っています。

Mamiko:このあいだ梅田サイファーさんとやったときは、ガチなヒップホップで攻めたかったんですけど、今回はうちらが主催なので、前回の雰囲気から少し変えて、キラキラした感じでいこうかなと(笑)。

Rachel:「LIGHT UP」もリリースしたばかりだし、chelmicoの中でも特にダンサブルな曲で攻めていくのもアリかなと思っています。とにかく、前回とは全く違うステージになるんじゃないかな。

──先日の『ati natu tour(zansyo)』も拝見しましたが、ライブ活動を続けてきて、お客さんとの関係もどんどん良くなってきている感じがしますね。みんなで一緒に盛り上げている雰囲気がすごく伝わってきます。

Mamiko:そうですね。今はより「みんなで楽しくやろう」という意識が強くなっています。誰も取り残さないように、手を差し伸べるようなライブ作りを目指すようになりましたね。

Rachel:コロナ禍を経たことで、お客さんの声がより出るようになったのも大きいと思います。以前から声を上げてくれる方もいましたが、今はフルで歌ってくれる人も増えて、お客さんの参加の仕方がどんどん熱くなっている。私たちもお客さんを煽りながらライブをしているし、やればやるほど一緒に盛り上がってくれる人が増えてきているので、私たちも負けないよう体力が続く限りやりたいです。

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