King Gnu、米津玄師、キタニタツヤ、こっちのけんと……“ひらがな”タイトルだから伝えられるニュアンス
キタニタツヤが今年5月にリリースした「ずうっといっしょ!」は、不穏なイントロのトーンそのままに〈あなた〉に向けて倒錯した恋愛感情をぶつける危ういテンションのアップチューンだ。
“ひらがな”は一般的に子どもが最初に覚える文字であり、ある意味では幼い印象を与える言語表記とも言えるだろう。キタニはそのイメージを転用し、純真さゆえにエスカレートしてしまう感情を「ずうっといっしょ!」という題に刻み込んだ。あえてあどけなさのある表記を選び、人間の根源的な部分に訴えかけるような恐ろしさをも際立たせている。
こっちのけんとが今年5月にリリースした「はいよろこんで」は、今年を代表するひらがなタイトルを冠した楽曲と言える。弾けるようなビートに軽妙な歌が乗るポップソングで、一聴するとポジティブな印象を与える。
しかし、これが自身の双極性障害(躁うつ病)について歌った曲(※1)と知ればその印象は変わるだろう。さまざまな物事を「はい喜んで」と引き受けるのは気分の上がった躁状態の自分であり、そんな姿を冷静な自分が見つめているという構図がこの無感情な「はいよろこんで」という表記に込められているのだろう。まさに〈ギリギリ〉な気分を淡々と言い表したタイトルと言える。
ひらがなは、そのシンプルさとは裏腹に多層的かつ複雑な意味合いを含んだ表記として楽曲タイトルに用いられてきたことがよくわかる。こうした機微を自然に感じ取れることは、日本語を用いる人間だけが持てる喜びと言えるだろう。
※1:https://news.ntv.co.jp/category/culture/308b13c5040c4cd0b8e721e4d814d0c3
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