サカナクション、SUPER BEAVER、Creepy Nuts……2024年夏フェス、ライター4名のベストアクトは? 気になるニューカマーも

SUPER BEAVER/『SUMMER SONIC 2024』

 近年、SUPER BEAVERは、日本のロックバンドを主軸とした各フェスにおいてトリを任されることが増えているが、『SUMMER SONIC』は、そうしたフェスと比べて、より多様な観客が集うフェスであり、現地で彼らのことを初めて観る観客が多そうな雰囲気を感じ取った。そうした雰囲気を察知したのか、渋谷龍太(Vo)は、「少なくとも敵ではないです」と断りを入れつつ、圧巻の地力で一気にホーム戦へと持ち込んでみせた。筆者はこれまで、ワンマンやフェスなどで4人のステージを何度も観てきたが、大胆に、そして不敵に会場の空気を覆していく姿を観たのは久しぶりで、彼らの生粋のライブバンドとしての熱烈な気概に触れて非常に痺れた。ハイライトを担ったのは、今の彼らを象徴する2曲。渋谷が、今年から「MARINE STAGE」に新設された花道をフル活用しながら、アリーナの観客と至近距離で〈気持ちの往来〉を繰り広げた「切望」。そして、一人ひとりに向けて〈小さな革命〉の〈当事者であれ〉と訴えかけた「小さな革命」。きっと、初めてSUPER BEAVERを観た人にとっても忘れがたい時間になったのではないかと思う。(松本侃士)

SUPER BEAVER「小さな革命」【SUPER BEAVER「都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~駱駝革命21~」 2024.3.24 atさいたまスーパーアリーナ】

Number_i/『SUMMER SONIC 2024』

 年明けにリリースされた「GOAT」の衝撃を、今でも鮮明に覚えている。また、短い時間の出演ではあったが、4月にアメリカで行われた『Coachella Valley Music and Arts Festival 2024』における眩い存在感も忘れられない。筆者がそうであるように、今年に入ってからの3人のアクションから目が離せなかった人はきっと多かったはずで、それゆえか、『SUMMER SONIC』初出演でありながら彼らのステージは熱烈なウェルカムムードの中で幕を開けた。もはや理屈では説明できない燦々たるポップスターとしてのオーラ。そして、3人それぞれのリアルなフィーリングがダイレクトに滲むラップや歌、ダンス。本当に圧巻だった。全編がハイライトで、エンターテインメント精神の塊のようなステージだったが、特に印象深かったのが、終盤の「GOAT」で「MARINE STAGE」の花道を3人が鮮やかに駆け抜けるシーン。まるで、『SUMMER SONIC』の歴史に、新しい〈時代を背負う〉覚悟を深々と刻むような渾身のパフォーマンスだった。初出演の場に立ち会えてとても嬉しかったし、これからも次々とフェスに挑み続けてほしい。(松本侃士)

Number_i - INZM (Hyper Band Live M/V)

サカナクション/『SONIC MANIA 2024』

 ライブ活動の休止から復活したサカナクションによる挨拶と感謝が込められたようなセットリストで、必然的にサカナクション史を振り返ることにもなり、あらためて今の邦楽シーンにどれほどの影響を与えているかを思い知る内容だった。ロックとダンスミュージックとフォークを融合し、オーディエンスを飛び跳ねさせるしステップを踏ませるし、心の奥底に染み渡る言葉だけでなく合唱させるキャッチーなフレーズまでいくつも飛び交う――サカナクションの領域に到達できるバンドは簡単に出てくるはずもない。「◯◯がフェスのMCでみんな同じノリをしなくていい、自由に踊ろうって言った」みたいなポストがSNSでバズることはもはや夏の風物詩だが、サカナクションは15年以上も前から、日本人へ多様な踊り方を広め続けてきたバンドである。「完全復活」という言葉が、山口一郎をはじめメンバー全員を正しく励ますものであることを願っている。(矢島由佳子)

サカナクション / 夜の東側 -Rearrange 2020- from LIVE Blu-ray「懐かしい月は新しい月 "蜃気楼"」 【期間限定公開】

Billyrrom/『FUJI ROCK FESTIVAL '24』

 コロナ禍真っ只中の2020年に結成し、メンバーの大半が楽器未経験者であったにもかかわらず「3年後に『フジロック』に出る」という夢を大胆に掲げ、それを見事に現実にしてみせたのが昨年だったが、なんと2年連続『フジロック』に登場。今年3月にリリースした『DUNE』からBillyrromは“チャプター2”を掲げており、シーンの先頭に立つ準備が整った、ということをたしかに感じさせてくれたのが今年の『フジロック』のライブであり、今月リリースされる1stアルバム『WiND』だ。大きな愛も、世の中へのアンチテーゼも、スタイリッシュに表現できるのがBillyrromで、6人による壮大に広がるダイナミックな演奏に、個人的な心から溢れ出たパーソナルな言葉が乗った、そのコントラストにも心を奪われる。しかも一度6人に会うと、どうしたって好きになってしまう人懐っこさや、仲間の輪に入れてほしくなるようなバイブスを醸し出していることも彼らの魅力で、ここから一気に人気もオファーも増える予感がする。(矢島由佳子)

Billyrrom - Live at LIQUIDROOM Behind the scenes

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