Mrs. GREEN APPLE 大森元貴が生み出す“アニソン”の独自性 ももクロ、Adoらへの提供楽曲から紐解く

 アニメや漫画、ゲームなどをメインにした日本のカルチャーが “COOL JAPAN”と呼ばれ、世界中から人気を博すようになって久しい。アニメや漫画に絞ると、『鬼滅の刃』や『【推しの子】』、『SPY×FAMILY』などの世界的ヒットや、アニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』のアジア圏での大ヒットも記憶に新しく、毎シーズン幾多のアニメが放送され、いくつもの主題歌がヒットしているのも特筆すべき事実だ。

 今年になってからも、ヨルシカ「晴る」(『葬送のフリーレン』第2クールOP)、MY FIRST STORY × HYDE「夢幻」(『鬼滅の刃』柱稽古編OP)、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」(『マッシュル-MASHLE-』神覚者候補選抜試験編OP)、なとり「絶対零度」(『WIND BREAKER』OP)、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」(『忘却バッテリー』OP)など、錚々たる面子がアニメの主題歌を手掛けヒットを記録している。さらに7月クールだけでも、GEMN「ファタール」(『【推しの子】』第2期OP)、優里「カーテンコール」(『僕のヒーローアカデミア』第7期 第2クールOP)など、アニメ主題歌がチャートに名を連ねた。今回、その中でピックアップしたいのが『転生したらスライムだった件』第3期のOP主題歌第二弾、ももいろクローバーZの「レナセールセレナーデ」である。本曲の詞曲を手掛けたのは、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴(Vo/Gt)だ。

『転生したらスライムだった件』第3期OP第二弾「レナセールセレナーデ」

 本稿では、Mrs. GREEN APPLEの全曲の詞曲を担当し、他アーティストへ提供した楽曲でも実力を発揮する稀代のコンポーザーでもある大森が作り出す曲の中から、アニメ主題歌にフォーカスしていきたい。

 まずは「レナセールセレナーデ」について触れたい。『転生したらスライムだった件』(以下、『転スラ』)は、スライムとして異世界に転生したサラリーマンが主人公。様々な種族が生きる世界でスキルを獲得しながら信頼できる仲間を得て、最終的には「種族を問わず楽しく幸せに生きる国作り」を目指すために一国・テンペストの王となり、知恵と度胸で仲間を増やしていくストーリーだ。「レナセールセレナーデ」は、ブライトなアップチューン。メロディにも随所に大森らしさが溢れている。イントロの冒頭と、アウトロにケルト音楽を彷彿とさせるフレーズもあり、作中の中世ヨーロッパ風の世界観とリンクしているところもニクイ。このケルティックなフレーバーは、Mrs. GREEN APPLE楽曲のひとつの特徴で、「Magic」などにも顕著に表れているほか、他の楽曲にも時折登場する大森のルーツを窺えるアプローチだ。

ももクロ【MV】レナセールセレナーデ -MUSIC VIDEO-(TVアニメ「#転生したらスライムだった件 第3期」オープニング主題歌 第二弾)

 ももいろクローバーZは、ユニゾンでの表現の使い分けが魅力のグループだと思う。時に可愛く、時に力強く、時に爽やかに、メンバーそれぞれが曲調や歌詞をしっかり解釈してユニゾンしているのがわかる。「レナセールセレナーデ」のサビでは、フレーズ最後のロングトーンで転がるように音程を変えるという大森メロディの得意技を聴くことができるが、ももいろクローバーZの4人は、その難しいメロディラインとニュアンスを寸分のずれなくユニゾンで披露している。強さがありながらも軽やかな4人のユニゾンが、お祭り感を醸し出し、今期のアニメにも登場した“テンペスト開国祭”にぴったりな祝歌にも聴こえてくる。

 次に取り上げるのは、劇場版アニメ『ONE PIECE FILM RED』(2022年)の、劇中歌「私は最強」である。主要キャラであるウタの歌唱部分をAdoが務めた同映画は、世界的な大ヒットを収めた。そして、本楽曲の詞曲を担当したのが大森だ。映画の序盤で、ウタのライブ会場に現れた海賊たち(敵)を捕えたシーンで歌われるのが「私は最強」である。サビ始まりで幕を上げる冒頭を経て、流麗なストリングスがイントロにあたる部分で軽快にリズムを刻み始め、その後一気にサウンドの情報量が増えていく。大森が得意とするメリハリが、Adoの歌声のメリハリと相乗効果をもたらし、ドラマティックでスケール感のある1曲になっている。大森自身のキーが高いというのもあるが、Mrs. GREEN APPLEの曲は、高音域で勝負する曲が多い。同曲も高音域をメインに構築されており、Ado自身の歌唱も特に高音部分のバリエーションを多く引き出している。地声でストレートかつクリアにトーンを響かせるなど、大森メロディだからこそ出てきたアプローチなのではないか……とあれこれ想像が膨らむ。

【Ado】私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)

 また、パンチラインとなる歌詞が〈私は最強〉から最後には〈アナタと最強〉に変わることで、リスナーもストーリーに引き込んでいく。「私は最強」=最高の自己肯定が、人生という冒険を続ける上で大切な要素であることを、大森はシンプルかつ大胆な言葉で見事に歌詞に落とし込んでいる。さらに、「私は最強」は、Mrs. GREEN APPLEもセルフカバーしている。大森が高音域であまりファルセットを使わず、メロディに対してストレートなアプローチをしていること、ロングトーンを出だしから全開で鳴らしていること、言葉の“子音”を強く発音したりなどして、曲の持つ力強さを表現しているところが聴きどころだ。

Mrs. GREEN APPLE – 私は最強【LIVE “ゼンジン未到とリライアンス〜復誦編〜”】

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