櫻坂46、なぜ再び人気に火がついたのか? ドーム公演の盛況、『紅白』返り咲き……鍵を握るパフォーマンス
櫻坂46の人気が再燃している。
そのことを象徴するのが今年6月に開催された東京ドーム公演『櫻坂46 4th ARENA TOUR 2024 新・櫻前線 -Go on back?- IN 東京ドーム』であり、2022年11月の『2nd TOUR “As you know?” TOUR FINAL at 東京ドーム』では黒幕で覆われた空席が目立ち、メンバーにとっても、Buddies(ファンの呼称)にとっても悔しさが残るライブであったが、今回はステージバックのスタンド席を含め完全ソールドアウト。この東京ドーム公演を機に人気はさらに加熱している印象で、11月にZOZOマリンスタジアムで行われる『4th YEAR ANNIVERSARY LIVE』を筆頭にして櫻坂46のライブチケットが取れなくなっていると話題だ。
2022年の『NHK紅白歌合戦』落選に代表されるように、今野義雄氏(乃木坂46合同会社/Seed & Flower合同会社代表)も雑誌『SWITCH』2024年7月号(スイッチ・パブリッシング)のインタビューで、2022年は「チームとして非常に迷っていた時期」「メンバー内にもどこか停滞感が漂っていた」と認めている。そこから“やり直す”という意味を持つ6thシングル表題曲「Start over!」で、2023年に見事『紅白』出場へと返り咲き。さらに現地では喝采を浴びるほどの海外人気やロックフェスへの継続的な出演が、今回の東京ドームで見事結実したと言えるだろう。
かくいう筆者も一度停滞時期に離れてしまっていたが(テレビ東京系『そこ曲がったら、櫻坂?』は観ているくらいのライト層)、東京ドーム公演を配信で観て心を掴まれ、すっかりメンバーの出演番組を毎週チェックする新参Buddiesになっている。それではなぜ櫻坂46の人気は再燃しているのか。当事者のひとりとして筆者の主観と客観的な視点を織り交ぜながら、人気再燃の理由に迫っていきたい。
今の櫻坂46の最大の魅力はパフォーマンス性にあり、それが最大限に発揮されるのがライブのステージだ。東京ドーム公演は、山﨑天のソロダンスからの「何歳の頃に戻りたいのか?」に始まり、活動を休止していた小池美波を含む現メンバー全員による「摩擦係数」、MVの世界観をステージに落とし込んだ森田ひかるセンターの「Dead end」、無音を演出に取り入れた思わず息を呑む三期生曲「静寂の暴力」、新センター 山下瞳月が先導する本編ラストの「自業自得」まで――すべては自分たちのクリエイティブとパフォーマンスを信じ、最後まで諦めることのなかったチーム全体の勝利であると筆者は感じた。『SWITCH』でライブ制作チームが「少しずつではありますが、かわいらしい彼女たちを見に来るという目的だけではなく、彼女たちの『ライブ』を見に来てくれる方々が増えていっているのを感じています」と答えていることも、櫻坂46の真髄がライブそのものにあることを物語っている。
挫折の先で模索した、櫻坂46としての表現の仕方。日本のアイドルカルチャーはカウンターカルチャーの歴史でもあるが、櫻坂46もまた前身の欅坂46に対するアンチテーゼとなっている。曲の世界観として現代のリアリティが描かれているのは共通しているが、若者が抱える苦しみへのアンサーが異なり、欅坂46では「苦しさからどんどん自分の内面に入っていき、社会から離れて自己に答えを見つけようとする」が、櫻坂46では「苦しさはあるけれど人と関わり合いを持って一歩前に進んでみようとする」ことを振付家のTAKAHIROは『SWITCH』で語っている。
欅坂46のイメージから脱却できぬなか、櫻坂46として打ち出した「Start over!」は〈もう一度だけ やり直そうなんて思うなら/今しかない 後にはない/逃げてる今の自分 目を覚ませ!〉というメッセージソングでありながら、櫻坂46の指針となるようなグループを象徴する楽曲へと昇華されていった。筆者自身も振り返ると、琴線に触れたのが『紅白』での「Start over!」であり、Buddiesを入れてのパフォーマンスという演出は、櫻坂46のライブを見せるという狙いもあったように思える。「何歳の頃に戻りたいのか?」のラストも〈過去に 戻れやしないと知っている/夢を見るなら 先の未来がいい〉とあり、過去=欅坂46ではなく未来を信じた先に、満杯の東京ドームの景色があったと、今ならそう言えるだろう。
櫻坂46は『何歳の頃に戻りたいのか?』から二期生、三期生が本格的にフォーメーションの主力へ。二期生からは森田、田村保乃、山﨑、守屋麗奈、藤吉夏鈴、そして三期生の山下へとセンターのバトンが受け継がれながら、それぞれが異なる光を放つことで櫻坂46が形成されている。世代交代の成功とともに、二期生からは成熟すら感じさせるほどだ。