Chevonは新時代を切り拓く 満員のLIQUIDROOMで証明した“ライブバンド”としての実力

 2021年に北海道札幌市で結成された新星バンド、Chevonの名前が今どんどん広がっている。2月にリリースされたアルバム『Chevon』、7月の新曲「冥冥」が話題を集めるとともに、数々の春フェスに初出演し、1stワンマンツアー『冥冥』はLIQUIDROOMを含む全6カ所が完全ソールドアウトを記録した。もはや「早耳リスナーが注目」レベルではなく、「Chevonの音楽」に人々が熱狂しているのだ。

 超満員のLIQUIDROOMでChevonが繰り広げたのは、そんな人々の期待を軽々と上回り、“ライブバンド”であることを示す圧倒的なステージだった。

 まだ結成3年目どころか、コロナ禍中にバンドが始まったため、声出しありのライブを初めて経験したのは2023年3月だという。それから、たった1年4カ月。なぜChevonのライブはこんなにも“強い”のか。LIQUIDROOMのレポートを通して紐解いていきたい。

 地元・北海道を出発し、LIQUIDROOMは折り返し地点となる3公演目。開演30分前にはフロアをオーディエンスが埋め尽くし、スタッフが懸命に「前に詰めてください」と声をかけている。準備万端というムードの中、儀式めいたトライバルなSEがライブの開幕を告げた。

 大歓声に迎えられてオオノタツヤ(Ba)、Ktjm(Gt)、最後に谷絹茉優(Vo)が登場し、骨太なビートに乗せて「Banquet」を投下。お立ち台に立つ谷絹がリリックを勢いよく叩きつけ、ハイトーンを響かせると、会場の温度が一気に上昇していく。

 「歌えんのか、LIQUIDROOM!」という谷絹の煽りに応えてオーディエンスも参加し、一体感が高まる。間髪入れずヒップホップ色の強い「No.4」でフロアを跳ねさせると、ツアータイトルになっている最新曲「冥冥」を早くも披露。イントロから爆発的な盛り上がりを見せる中、谷絹は幅広い音域を行き交う複雑なメロディを歌いこなし、空間を完全に掌握していた。和風ダークなアレンジでChevonの世界に引き入れつつ、自らを奮い立たせる歌詞がオーディエンス一人ひとりの心に火を点ける。ボカロ曲のようなギミック満載の楽曲を表現するメンバーのスキルも凄まじいが、Chevonの音楽はしっかりとメッセージに共感し、感情を共鳴させて味わうもの。「オーオー」という力強いシンガロングと突き上げられた数多の拳がそれを証明していた。

 続く「革命的ステップの夜」まで、オープニングからトップスピードで駆け抜けたChevon。ただならぬ熱気が充満するフロアを見渡しながら、谷絹が「ここまでは、落語でいうところの枕だから」と余裕の表情で、落語家よろしく緑色の羽織を脱いでみせる。「めちゃめちゃ人いるね!」と素直に驚くKtjmも含め、ステージ上はリラックスしたムードで、バンド最大規模のワンマンに対する緊張感を感じさせないところが頼もしい。

 夏の空気にぴったりな「ボクらの夏休み戦争」「アオタカゼ」からは、アグレッシブなだけではないグルーヴが広がっていった。谷絹ののびやかな歌がノスタルジックに響き、随所で歌と絡み合うKtjmの繊細なギター、リズムを牽引するオオノのベースの多彩さを堪能する。谷絹をして「喉の調子が悪い時は歌えなかった」という技巧的な「ハルキゲニア」や、甘えるように感情を込めて歌う「愛の轍」など、バラードナンバーも珠玉。

 驚かされたのは、ほぼすべての曲で、イントロが流れるたびにオーディエンスが歓声を上げて喜んでいたことだ。幅広いChevonの楽曲に対し、それぞれ“推し曲”が違うのかもしれない。生で聴けるこの日を待ちわびながら、楽曲をすみずみまで聴き込んできたからこそのリアクションだ。

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