スキマスイッチ、3つの視点から紐解く20年間愛される理由 J-POPの王道と新鮮さを両立する手腕

美しい? 狂気的? 深読みしたくなる歌詞

常田真太郎

 そんなメロディに乗せられた歌詞について。かねてよりスキマスイッチは、歌詞を書く際に、その時々の等身大の自分達を大切にしていることを様々な場で語っている。いまを生きている中で見えているもの/感じていることを、飾らない言葉で(といっても常套句的なものでまとめるわけでは決してなく)、綴る。それは同じ時代を生きている私達の背中を押してくれる心強い味方として、疲れた心を癒してくれる処方箋として、いつも隣にいてくれるものになっている。

 また、スキマスイッチは作曲のみでなく、作詞も2人で行なっている。どちらかひとりが曲の叩き台を作ることもあるのだが、もうひとりがその歌詞のテーマを決めたり、メロディのアイデアを出したりしていることもあって、どの曲のクレジットもユニット名義か、もしくは2人の名前が並んでいるかのどちらかだ。歌詞に出てくる登場人物について、年齢や職業など、かなり細かいところまで話し合って決めるそうなのだが、それぞれが持ち寄る歌詞については、大橋は現実的でネガティブな世界観、常田はロマンティックでポジティブな世界観の比率が多いとのこと。

 彼らの歌詞は、情景やシチュエーションがありありと目に浮かび、そこに込められている感情やメッセージもしっかりと伝わってくるのだが、真逆な2人が意見を交わしながら、同じ方向を向いて制作をしていくからか、様々な角度から切り取ることができたり、深く掘り進められるものも多い。それもあって、スキマスイッチの歌詞について“もしかしたら怖い内容なのでは……?”という考察が交わされることもある。事実、彼らは作詞をする際に裏テーマを設けることもあり、表面上は美しくまとめてはいるけれども、その裏に秘めていたのは欲望渦巻く狂気的な感情だった、ということも稀にある。どう受け取るのかは聴いた本人次第。しかし、その“もしかしたら”という気付きや驚きは、さらに抜け出せないところまで深くハマっていく要因でもあるだろう。

 ちなみに、スキマスイッチは、オフィシャルYouTubeチャンネル内で「スキマスイッチのこのヘンまでやってみよう」という番組を更新しているのだが、そのなかに「音楽のお悩み相談 スキマクリニック」という企画がある。内容としては、視聴者の音楽的な悩みを、彼/彼女達が作ったオリジナル曲を2人が実際に聴き、“スキマスイッチ的見解でアドバイス”するというもの。毎回真摯に、真剣に答えているのだが、翻ってそこで出てくるアドバイスは、スキマスイッチが楽曲制作をするにあたって大切にしているポイントとも言えるだろう。他にも同番組では、これまで発表してきたアルバムの全収録曲を振り返るなど、彼らがどう音楽に向き合ってきたか/向き合っているかが分かるものにもなっている。YouTubeらしいフランクな企画と合わせて(むしろそちらのほうが全体的に多め)、ぜひご視聴を。

感動と笑いを両立するアットホームなライブ

大橋卓弥

 そして、紡ぎ出された珠玉のポップソングを、オーディエンスに直接届けるライブも、欠かすことのできない大切な場所である。それは、毎ツアーごとにライブアルバム/映像を制作しているところからも明らかだ。近作は、昨年12月に行なった日本武道館公演を収録した『SUKIMASWITCH 20th Anniversary "POPMAN’S WORLD 2023 Premium"』。常田の柔らかなピアノが武道館に響き渡った「ボクノート」や、クールな幕開けから徐々に熱を帯びていった「ゴールデンタイムラバー」など、人気曲/代表曲が詰め込まれたアニバーサリーライブにふさわしい内容だったが、その中でも特に凄まじい熱を放っていたのは、「SL9」。アウトロで宇宙空間を彷彿とさせる大迫力のインプロビゼーションが繰り広げられる中、大橋が圧巻のスキャットを繰り出すと、瑞々しさたっぷりのアンサンブルに導かれるように、常田が「全力少年」のイントロのフレーズを奏でて繋げるという展開は、鳥肌立ちっぱなし。彼らの臨場感のあるライブパフォーマンスと、アットホームで笑い声の絶えないMC(CDのみにMC集が収録されるのも恒例)は、一度体感したら、もう一度会場に必ず足を運びたくなる圧倒的な高揚感と満足感がある。

 また、一風変わったライブも行なっているスキマスイッチ。いわゆるリリースツアーではなく、これまで発表した楽曲の中からヒット曲だけでなくレア曲も織り交ぜつつ、それらにライブアレンジを加えた『POPMAN'S CARNIVAL』や、ライブのために書き下ろされた漫画とコラボレーションした『SoundTrack』、他にも15周年を記念して開催された横浜アリーナ2デイズ公演『~Reversible~』は、そのタイトルの通り、初日と2日目でセットリストを逆順にして披露するなど、趣向を凝らしたプログラムを組むこともある。それは楽曲同様、ライブでもファンやリスナーに新鮮な驚きを与えたいという表れでもあり、彼ら自身が常に新たな刺激を求め続けているからでもあるだろう。“常に新鮮な驚きのある王道路線”という、言葉にすると矛盾している状態にはなってしまうのだが、そのバランスこそが、スキマスイッチが20年間愛され続けている理由でもあると思う。

 スキマスイッチは、7月10日に約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『A museMentally』をリリースし、7月13日、14日には、彼らの地元・愛知県で初の主催フェス『スキマフェス』を開催(13日出演:小田和正、コブクロ、JUJU、SUPER BEAVER、マキシマム ザ ホルモン、ゆず/14日出演:いきものがかり、奥田民生、スピッツ、sumika、東京スカパラダイスオーケストラ、緑黄色社会)。今夏も様々な場所でスキマスイッチの音楽を耳にする機会があるだろう。そこで2人が届ける音楽に、そしてステージに期待を寄せながら、7月9日放送の「The Day.~アーティストたちの特別なあの日~【スキマスイッチ】」を楽しみたい。

■番組情報
『The Day.~アーティストたちの特別なあの日~【スキマスイッチ】』
7月9日(火)22時〜

<番組説明>
「The Day」は、結成の日、デビュー日、ファーストコンサートの日、初めてドームに立った日、復活の日、解散の日、別れの日…。アーティストたちにとって特別なあの日をピックアップ。そんな特別な日当日に、日テレプラスと豪華アーティストが長時間の枠で贈る特別番組シリーズです。

第9弾となるアーティストはスキマスイッチ。メジャーデビュー21周年を迎える7月9日に3時間にわたり放送。番組独占インタビュー映像と真骨頂であるパフォーマンス映像(ライブ映像)とともにデビューから20年の軌跡をたどります。

公式サイト
https://www.nitteleplus.com/program/theday_sukimaswitch/ 

関連記事